前記事で、問題を解くほうでなく作るほうに回る事でゲームデザインの能力を高める方法を紹介しました。
過去記事: ゲームデザイン能力を鍛える「教材クリエイティブ作成法」
もう一つ、クリエイティブ能力を高めるために非常に有用な訓練となる事を紹介しようと思います。
それは「料理」です。
学校で教えてくれる事の殆どは、ある意味で、「画一的な答えを画一的なやり方で導く」という事に特化されている部分があります。
テストに100点があるのは、画一的な答えがあらかじめ準備されているからです。
ところが、ゲームデザインを始め、クリエイティブな事が求められる職において、そんな画一的な答えは殆ど役に立ちません。むしろ、普通ならこう考えるから、その逆をやらないと成功できないのがクリエイティブの世界です。
「料理」は非常にクリエイティブです。今日の晩ご飯を作るのに、用意された答えなどありません。発想次第で、色々な晩ご飯が考えられるでしょう。そして、ゲームデザイナーが現実に直面する状況と解決すべき問題に非常に近いものがあります。
クリエイティブといっても、現実には完全に自由という訳ではありません。ある制約の中(時にあり得ない!という制約の中)で、その手があったか、というアウトプットを出すのが現実のクリエイティブです。
ゲームも商品である以上、多くの場合限られた制約(リソース)の問題があります。
それは「予算」だったり「限られた期間や人員で作らなければならない」という制約だったりします。
料理においても「買い物の予算」や「冷蔵庫に残っているもの、賞味期限が切れかけているものから作らなければならない」といった制約があります。
そしてゲームを遊ぶのが作った本人でなく「相手(お客様)」がいるように、料理も「相手(食べる人)」の事を考えて作る必要があります。
親が料理を作る時には、自分の都合よりも食べさせるお腹が減って機嫌が悪くなりそうな子供の事を先に考えなければなりません。自分がスパイシーなものが食べたくても子供が食べられる味付けにしないといけませんし、我慢できない子供のために手早く調理をする必要があります。
食べた時の味だけでなく、見た目などで「おいしそう」と思っておもってもらえないとダメですし、栄養の事も考えないといけません。
ゲームも「遊べば楽しい」だけじゃなく「遊ぶ前に面白そう・楽しそう」と感じさせる必要がある訳ですから、料理とゲームはこの点でも似ています。
そして、うまく効率よく作るために必要な「段取り力」も学べます。
ご飯を炊いている間に、スープを作り、スープを煮込んでいる間に炒め物、場合によっては空いている時間に鍋を洗う…順番を間違うと大幅に時間がかかって「お客様(例えば子供)」の機嫌を損ねて、本当なら素直に食べる所が、せっかく作ったものを食べてくれないという事すらおこります。
ゲームもお客様が本当に欲しいと思っているタイミングを逃すと、「もういらないよ」という事は実際に起こるのです。
(このタイミングの話はまた詳しくしたいと思います)
ゲームデザイナーは実務上はプランナーという役割を果たす事になりますから段取り力は非常に必要な力です。
もしあなたが一人暮らしだったとしても、料理をやる事でクリエイティブのセンスは確実にあがりますし、物事をうまく運ぶための段取りの力もつきます。あなたが独身の男性でも女性でも、料理がうまく出来る事は異性にとってはプラスポイントになりますし、一石三鳥かもしれません(笑)。苦手と思っても簡単な所から始めてみてはどうでしょうか。
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コメント(1): 料理によってクリエイティブ能力が高まる
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まったく同じことを別の元ナムコのプランナー(現社長)が言っていましたW