
この記事の所要時間: 約 2分30秒 Tweet 僕がナムコ在籍時、ある自分が立ち上げた技術研究プロジェクトが、そこそこ動いてデモが出来る状態になった後、所属部署の偉い人に見てもらう機会がありました。 デモを作ったものは […]
[続きを読む]僕がナムコ在籍時、ある自分が立ち上げた技術研究プロジェクトが、そこそこ動いてデモが出来る状態になった後、所属部署の偉い人に見てもらう機会がありました。
デモを作ったものは、インターネットに接続するある機械(ゲームではないがエンタテインメント的なものの試作)で、その偉い人の受けもよく、さらに上の人にも見せよう、という事になりました。
その偉い人(現バンダイナムコホールディングス社長の石川さんなんですが)も、中々気に入ったようで、当時のナムコの役員にも是非見てもらおうという事になりました。
当時の社内では、単なる技術研究が役員クラスまで見てもらえる事は殆どなく、僕は非常にうかれていました。
当然、製品化したいという気持ちはありましたし、これはいけるのではないか、そう思っていました。
役員の方々の反応も上々で、「これは社長に見せましょう」となりました。
つまり、まだ技術検証段階の試作品をナムコ創業者の中村雅哉社長(当時)に見せるという事になった訳で、僕はその時は(今までの反応から)、よい反応が得られるに違いない、と思い込んでいました。
スケジュールがなかなか合わなかったのですが、いよいよその日が来ました。
僕は一通りプレゼンをして、中村雅哉さんにも触ってもらおうとしました。
しかし…中村雅哉さんは、触るよりも前にダメな理由をいくつか挙げてこういいました。
「こんなのは、君のマスターベーションみたいなもんだよ。」
突っ込まれたのは、今までにない機械だったので、どこにどう設置して、収益のあげ方をどうするのか、というような事を言われていたような気がします。
「気がします」というのは実の所、色々ショックすぎて、前後に言われた事をあまり覚えていないからです。
後で、上司から「きっと社長も虫の居所が悪かったんじゃないか」と言われました。
しかし、あまりにも悔しすぎて、その後会社で号泣した事を覚えています。
しばらく、何も手につかない日々が続きました。
不思議に思われるかもしれませんが、僕はあの時、中村雅哉さんにあのような言い方をされた事を本当に感謝しています。
特に、技術者出身だった僕は、「開発者のマスターベーション」になってしまうモノを作りがちだったのかもしれません。言われた当時はショッキングな言葉でしたが、今になってみると、あの時中村雅哉さんが言いたかった事が分かる気がしています。
その後、何か新しい事をやろう、と思った時も「これは開発者のマスターベーション」になっていないか、という事を自分に問いかけるようになりました。
商品企画・開発をする上で、自分たちだけが面白い、と思うものを作ってしまわないようにする事は簡単にできそうで、実は難しいのです。
僕が、プロデューサーとして、お客様の立場にたって、あるいは小売店や流通、プラットフォームメーカーの立場にたって考えなければいけないと思い、実際にそのように行動が出来ているのは、「あの一喝」のおかげだと本当に思っています。
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この記事の所要時間: 約 2分31秒 Tweet ポケモンタイピングDSを例にあげて、まだ小さい子供がどうしてタイピングゲームを欲しがるのか、という考察を前回の記事でしました。 過去記事: 「おもちゃ」が満たす親の基本の […]
[続きを読む]ポケモンタイピングDSを例にあげて、まだ小さい子供がどうしてタイピングゲームを欲しがるのか、という考察を前回の記事でしました。
過去記事: 「おもちゃ」が満たす親の基本のニーズ
子供が誕生日プレゼントに欲しい、と言った時に妻も僕も速攻で「それね、もう買っちゃうからプレゼントは変更できないよ」と長男に言って、近所のお店で予約を受け付けているお店に行きました。
子供の誕生日やクリスマスのプレゼントは、子供が選んでいるようでいて、実は最終的には親が選んでいるという話をしましたが、まさに今回は親が選んだ、という感じでした。
過去記事: サンタのプレゼント、選ぶのは子供でない?
妻は「このゲームを遊んで、小学校二年でアルファベットが分かるようになって、ローマ字がわかるようになって、さらにキーボードが打てるようになるのはいい」と思う訳です。もちろん僕もそういう期待を持ちます。
任天堂がニクいのは、このキーボードをわざわざ Bluetooth キーボードにしているという事です(Bluetoothを内蔵したDSカードを特別に作ってまで!)。あの作りがよさそうなキーボードがiPhoneやiPadでも使える、と聞いた僕は「これは子供が飽きたらキーボードは自分のモノにしてしまおう(笑)」と思う訳です。
兄弟ではありがちな事ですが、次男も「お兄ちゃんがやるなら、僕もやりたい」と思う訳です。これの何がいいかというと、買った後、お兄ちゃんがあんまり遊ばなくなっても次男が遊ぶんじゃないかという期待と、(今はちょっと早いかもしれないけど)1年後とか2年後は次男が遊んでる事が想像できるから、長く使えるだろう、という期待もできます。
パパの事情は多少偏ってるかもしれませんけど、これからスマートフォンが普及していくと考えると、あながち偏ってるニーズという訳でもないかもしれません。とにかく、「家族全員」メリットがある、子供の誕生日プレゼントなんて滅多にありません。変な話ですが、我が家にとっては「買わない理由がない」商品です。
ポケモンタイピングDSは発売からずっと品薄状態が続いているのですが、おそらく年末のクリスマス時期にも人気のプレゼントになって、かなりロングセラーになるんじゃないかと個人的には思います。
買うつもりがない人も、Amazonのレビューは読んでおくとよいと思いますよ。
余談ですが、実はちょうどお店にポケモンタイピングDSを予約しにいった時、お母さんと一緒にそのショップに来ていた小学校中学年位の女の子が、ポケモンタイピングDSを前に「これって、ローマ字の勉強にもなるし、キーボードの勉強にもなるんだよね。欲しいなー。」と、なかなかおねだり上手な事を言ってました。
(僕も小さい頃、欲しいものを色々理由つけておねだりしてました…)
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この記事の所要時間: 約 1分28秒 Tweet 「ハイテクよりハイタッチ」という言葉は、僕がナムコに入社してから何度となく聞いた言葉です。 中村雅哉氏がよく好んで使っていたように思いますし、記憶に違いがなければナムコ手 […]
[続きを読む]「ハイテクよりハイタッチ」という言葉は、僕がナムコに入社してから何度となく聞いた言葉です。
中村雅哉氏がよく好んで使っていたように思いますし、記憶に違いがなければナムコ手帳という入社したら毎年手渡される社員手帳にもこの言葉はあった気がします。
#間違ってたら誰か指摘してください(笑)
ナムコがゲーム産業の雄として高成長を続けていた時、ナムコは「ハイテク=高度な技術」の会社として語られる事も多かったのです。確かにリアルタイムの3D技術なども含めて「先端的」だったのですが、あえて、それがナムコという会社の本質でない、という事を中村雅哉氏が伝えるために「ハイテクよりハイタッチ」という言葉を使っていたのではないかと思います。
「ハイテクよりハイタッチ」の意味は、かみ砕いて言うと「高度な技術はあくまで手段であり、その技術は「人に優しく」活かされないといけない」という事なのかと理解しています。
もっと簡潔に言い換えれば言えば「人に優しくするのが技術として追求すべき本質」という事でしょうか。
僕自身ゲーム作りを通じて、「ハイテクよりハイタッチ」は常に心にとどめておくべき言葉だと実感しています。
そして、今後のコンピューターや技術のあり方を考えた時、全く古くさい言葉ではなく、むしろ、iPhoneやiPad等が受け入れられている今、現実にそのような商品こそが求められており、これからも「ハイタッチ」が求められるのではないかと信じています。
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この記事の所要時間: 約 2分22秒 Tweet 「もじぴったん」シリーズの転機となったのは、PlayStation 2のベスト版 ( 廉価版 )発売でした。 そのベスト版発売に合わせて、WEBで遊べる体験版(無料おため […]
[続きを読む]「もじぴったん」シリーズの転機となったのは、PlayStation 2のベスト版 ( 廉価版 )発売でした。
そのベスト版発売に合わせて、WEBで遊べる体験版(無料おためし版)の提供を開始した事が、「ことばのパズル もじぴったん」シリーズがその後定番的に売れる一つの要因になっています。
さて、このWEB体験版には「音ありバージョン」「音なしバージョン」の二つが提供されています。
「遊んだときの楽しさ」だけを考えるなら音があったほうが楽しいし、もじぴったん自体の音楽の魅力等も伝えられます。
しかし、「音なしバージョン」も必須、と考えてお客さまに選択してもらえるようにしています。
理由は「音が出ると困る環境で遊ぶ人が多くいるから」でした。
お仕事中のオフィスだけじゃなく、赤ちゃんが寝ている間にパソコンで遊んでくれるお母さんとか、音があるのは遊ぶお客さまの生活上の問題になる可能性があったからです。
「そんなの使う人が音を消してやればいいじゃん」と思うかもしれません。
しかし、お客さまはPCの音量が今どれくらいか、を気にして使っているとは限りません。
お試し版もじぴったんを始めたら、突然音がなって、仕事中に遊んでいる事がまわりに知れたり、赤ちゃんが起きてしまってはダメだろう、と考えた訳です。
バージョンを分けているのは同時に「音なしバージョン」だとロード時間が少なくてすむからという理由もあります。
当時、まだ回線はISDN,遅いADSL等も普通でしたから、そういう配慮も必要だと考えたのです(ですのでダウンロードサイズが書いてあります)。
実は、その「もじぴったん」のWEB体験版を制作した中野亘(ワラテルさん)が提供している毎日更新の「1日5秒のゲーム日めくり きょうのしかく」にも「音」はありません。
でも、中野さんも、その時の経験から「遊ぶお客さまの環境」に配慮して、あえて「音なし」で提供しているのだそうです。
ゲームを作る側の人は、自分達が作ったものが一番いい環境で遊んでもらえる事を前提にゲームを作ってしまう事があります。
例えば、素晴らしい音響設備、大画面…確かにそんな環境で遊べばゲームをよりよく楽しめるかもしれません。しかし、現実には携帯ゲーム機なら電車の中では音を消して遊んでいる人も多いし、大画面、素晴らしい音響環境で遊んでいる人はむしろ少数なのです。
そういう、現実的なお客さまの遊ぶ生活環境も考慮してゲームを作るという事は、「おもてなし(=Entertainment)」の第一歩目であるのです。
ちなみに、ご紹介した「きょうのしかく」ですが、毎日よくこんなに違うアイデアを考えつくな…と本当に思います。ああ、出てきた!おお。みたいな感じがなんとも、です。お勧め。
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この記事の所要時間: 約 1分38秒 Tweet 以前「小売店は『発売前』にコーナー展開を決める」という記事を書きました。 過去記事:小売店は『発売前に』コーナー展開を決める これは言い換えれば、「小売店は発売前に既に、 […]
[続きを読む]以前「小売店は『発売前』にコーナー展開を決める」という記事を書きました。
過去記事:小売店は『発売前に』コーナー展開を決める
これは言い換えれば、「小売店は発売前に既に、どのゲームソフトがどれだけ売れるかを判断している」という事です。
ゲームズマーヤで働かせて頂いていた時に、秋谷店長に「どのゲームソフトが売れる、と何故発売前にわかるのですか?」という質問をしてみたところ、
「買うお客さまの顔が思い浮かぶかどうか、ですね」
と即答されました。
秋谷店長のすごい所は、以前にもお話したと思うのですが、本当にお店に来るお客さまの事をよく覚えている事です。
過去記事:僕がゲームショップで働こうと思った訳
なので、あるタイトルが発売される、と聞いた時に「ああ、XXさんと△△さん、□□さんは確実に買うし、○○さんと●●君には次に来店された時にお知らせして予約をお勧めしよう」というのが「具体的に」思い浮かぶのだそうです。
逆に、売れない、と思うのは、誰が買うのか想像できない商品なんだともおっしゃっていました。
実は、その「買う人の顔が思い浮かぶ」言葉を聞いたのは初めてではありませんでした。
あるヒット商品を何本も生み出しているプロデューサーの方が、沢山ある企画のうち、どれを進めるかを決めるかを決める決め手になるのは、
「買うお客さまの顔が思い浮かぶかどうか」
だと話してくれた事があったのです。
その方は同時に売れていく商品は「買った後に、どんなシーンで、どんなふうに遊ぶのかも想像ができる」と言っていました。
プロデューサーとして何年も働いてきて、「お客さまの顔が思い浮かぶ」という事の意味は今ははっきり分かります。
今、(ゲームソフトに限らず)企画書を作っているのであれば、「お客さまの顔がはっきりと思い浮かぶか」を一度よく考えてみるといいと思います。もし、はっきり思い浮かばなかったら何かが間違ってると考えてよいのです。
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この記事の所要時間: 約 2分25秒 Tweet あるビアホールに行った時の事です。 遅れてその飲み会に参加した僕は「食べ物も何か頼みなよ」と言われました。 沢山あるメニューの中で僕は「6種のソーセージ盛り合わせ」を頼ん […]
[続きを読む]あるビアホールに行った時の事です。
遅れてその飲み会に参加した僕は「食べ物も何か頼みなよ」と言われました。
沢山あるメニューの中で僕は「6種のソーセージ盛り合わせ」を頼んだのです。
しばらくしてソーセージが運ばれてきて、そのうちの1本の一部を食べた訳ですが….
「辛い!」
僕が最初に食べたソーセージは、いわゆる「唐辛子系」の辛さ。辛いのは嫌いではないのですが、辛いとは思わなかったので、思わず顔がゆがんでしまいました。
最初はたまたま、かと思いましたが、その後全種類を一口づつ食べた所、「全部」こしょう系か、唐辛子系のスパイスがかなり利いているソーセージでした。
なんとなく騙された感じでしたが、同時にこうも思いました。
「もしメニューに『ビールによくあうピリ辛ソーセージ6種盛り合わせ』と書いてあったら、まったく同じソーセージを出されても多分、美味しいね、と食べたし満足しただろうな」と。
食べ物の話で、ゲームと何の関係があるんだ、と思うかもしれません。
しかし、ゲームでもまったく同じ事が言えます。
このソーセージの話をゲーム商品に置き換えてみるとどうなるのでしょうか。
つまり中身がまったく同じゲームでも、買う前の期待がどうだったかによってゲームを遊んだ後の評価が変わる、という事です。
タイトルやパッケージの説明、広告等で「買う前」に期待した事と、「買った後」にゲームを遊んで、期待とは違った場合と期待通りだった場合では、それがまったく同じゲームで、まったく同じお客さまが評価しても「不満足」と「満足」の差になるのです。
ゲーム慣れしている人がちょっと難しく感じる位のゲームを「このゲームはちょっと難しいよ」と言って売れば、買った人もそれを期待して買う訳で、期待に応えられていればお客さまも満足します。
しかし、まったく同じゲームを「誰でも遊べる」と言って売ったり、あるいは「ちょっと難しい」事をタイトルやパッケージ等からは印象としても伝えずに売れば、購入した多くのお客さまは、期待と異なるので「このゲームは難しすぎる」と不満に感じることになるでしょう。
ここで大事なのは、ゲームの中身がどうこう、面白さがどうこうと議論する時は、「どんなお客さまに、なんと言ってこのゲームの魅力、面白さを買う前に(あるいは遊ぶ前に)伝えるのか」という事と「セットで」議論しなければ意味がないという事です。
ゲームデザイナー、と呼ばれる職種の人達が陥りやすいのは、この「事前にどんなお客さまにどんな期待をして購入してもらうのか」を抜きにして、ゲームの面白さや難易度などを議論してしまう事です。
商品としての評価は、仮に中身がまったく同じものでも「買う前のお客さまの期待」によって大きく変わる、という事は、ソーセージの例を挙げるまでもなく商品サービスに言える事ですから、プロを自覚するのであれば、その事は覚えておく必要があります。
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この記事の所要時間: 約 2分3秒 Tweet ゲーム商品・サービスの企画開発をしている人、これからしようとしている人に問います。 そのゲーム商品開発をする時、そのゲームが5年後、10年後にどうなっているかをイメージして […]
[続きを読む]ゲーム商品・サービスの企画開発をしている人、これからしようとしている人に問います。
そのゲーム商品開発をする時、そのゲームが5年後、10年後にどうなっているかをイメージして企画開発しているでしょうか?
おそらく殆どのゲームを開発している人は、今取りかかっているゲームを完成させる事に手一杯で、YESと答えられないでしょう。
あるいは、その商品が、発売されてすぐにどれだけ売れるか、が大きな関心事で、5年後、10年後にどうなっているかをイメージして仕事はしていないと思います。
(リアルに言うと5年先、10年先に、自分がゲーム業界に残れているか、も怪しいものです)
でも、特に新しいブランドの商品開発を企画・開発するのなら、そのゲームが5年先、10年先も(形は変わっているかもしれないけれど)「遊ばれている事」は少なくともイメージしたほうがいいのではないかと思います。
以前の記事で、「永く愛されるゲームを作る」という事を僕自身が目標にしている事をお伝えしました。
関連記事:永く愛されるゲームを作る
あくまで直観でしたが、「もじぴったん」の試作が出来た後すぐから、5年先、10年先にも「もじぴったん」が遊ばれている事はイメージしましたし、イメージが出来た事を記憶しています。
「もじぴったん」は新しい遊びには違いなかったですが、5年後、10年後の人も楽しめる「普遍性」のようなものを感じられたからです。
加えて言うなら、僕自身が携帯電話を開発していたので、将来的にそういうデバイスとの相性はきっとよいはず、という予見もあったのです。
もじぴったん. – NamcoBandai Games Inc.
実際、もじぴったんの開発を始めてから10年たって、今も「ブランド」が残り、遊ばれている事を嬉しく感じます。
ここまでの認知があがるゲームになるとは正直思っていませんでしたが…
僕がここで言いたいのは、5年後、10年後に売れているゲームになる事、とは少し違います。もちろん、そうなるのが一番なのですが。
だけど、そのゲームが「新しい遊び」であると同時に「5年後、10年後にも普遍的に遊ばれている」ものであるかどうかをイメージできるか、そうでないかは、新しいゲームを企画開発しているなら一度は考えて、イメージする事をやったほうがいいのではないか、思うのです。
それが5年先、10年先にも売れているゲームになる、愛されているゲームになる最低条件なのですから。
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この記事の所要時間: 約 1分57秒 Tweet ナムコでプロデューサー制が始まった後に現場のプロデューサー(もちろん自分も含めて)は、会社での研修等でマーケティングの勉強をかなり組織をあげてやっていました。 その時の「 […]
[続きを読む]ナムコでプロデューサー制が始まった後に現場のプロデューサー(もちろん自分も含めて)は、会社での研修等でマーケティングの勉強をかなり組織をあげてやっていました。
その時の「師匠」の一人がマーケティングコンセプトハウスの梅澤伸嘉先生です。
梅澤先生は、「カビキラー」「スキンガード」「テンプル」「(風呂釜洗いの)ジャバ」「禁煙パイポ」といった十年以上トップブランドとなったロングセラー商品の開発者で、その商品企画の手法と背景となる消費者心理の理論を今も教え続けています。
先生と出会う前から、僕自身が目指したかった商品作りが「永く愛され続ける商品」であったし、「定番商品」であった事もあって、先生の理論は本当に勉強したし、実践もして実際に成果に繋げることもできました。
過去記事:定番商品の必要性 過去記事:永く愛されるゲームを作る
特に、「新規市場開拓型商品(MIP)が、長期No.1ブランドになる確率が後発商品に比べてはるかに高い」というMIP理論をはじめとして、それを実際の商品に落とし込むまでの具体的な手法は、他にないものと思います。
梅澤先生の著書は沢山あるのですが、一番最初に読む本としてはヒット商品開発―MIPパワーの秘密 がお勧めです。
日用品等に限らず、ゲーム等の娯楽商品においてもあてはまる事で、特にベテランの企画職、プロデューサー、経営者等であれば「なるほど」と思える事があるはずです。
梅澤先生の理論は本当に奥が深くて僕自身、未だ勉強中です。
なかなかヒット商品を生み出せない、安定的に売れるブランドを作れない、と思っている人なら業種を問わず是非ご一読をお勧めします。
(在庫がある事が少ないので、買おうかどうか迷っていれば買っておくのが吉です)
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[続きを読む]ゲーム開発を志す人、あるいは実際にゲーム開発を行っている人が陥りやすい罠。その一つは『すごいゲーム』を作りたくなり、作らないといけない、と思い込んでしまう事です。
(典型的な「すごいゲーム」の例: EA Battlefield 3 プレイ動画
自分も元プログラマで、僕がナムコに入社したかったのも、入社して最初に業務用ゲーム機の部署への配属を希望した理由の一つも、当時3Dのゲーム開発ではナムコが最先端を走っていたから、というのがあります。
ですから、僕自身も「すごいゲーム」を作りたい、という気持ちはよく分かります。
同時に会社に入ってからの周りの要求も「すごいゲーム」を作るんだ、作らないと置いていかれる、他社に負けてしまう、というプレッシャーになってきます。
同時にハードの進歩に伴い、「すごい事」が出来るようになると、「すごい事」をやらないとダメだ、という思い込みが強くなってきます。
僕自身は、PS2発売の後くらいから、「本当にすごいゲームを作るべきなのか?」という事に疑問を感じ始めました。
(このあたりの話は、米光一成さんとの対談の「その1」で話をしています。)
『見た目がすごくなくても、技術的に優れていなくても、売れて、お客さまの満足も高い、というゲームが作れるはずだ。』
その考え方は、その当時の僕のスタンスでした。「もじぴったん」というゲームをプロデュースした経験から、今も変わらず持ち続けています。
『すごいゲーム』を作らなければならない、と思い込んでいるのであれば、一度その常識を「本当にそうだろうか」と考え直してみては如何でしょうか。
この話は、以前に紹介したゲームボーイの開発者でもある故横井軍平さんの『枯れた技術の水平思考』の話とも繋がります。横井軍平さんの話は、僕らが陥りやすいけど、本当はこうあるべきでは、という商品開発に対する考え方について「はっ」とさせられる事を色々教えてくれる気がします。
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[続きを読む]ゲームデザイナーをはじめとした企画職の人なら、アイデアを広げたり、整理して企画の形にする必要性が頻繁にあると思います。
ご紹介するこの本もかなり昔に出会った本ですが、未だに所有している本です。実際の所、プロジェクトのメンバー等に貸すために1冊、自分のために1冊持っていたりします。
阪急コミュニケーションズ
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特に何かしらの企画アイデアを出して形にするために、この本で紹介されているような「考えるための道具=考具」があるかないかは大きな差になります。
紹介されている手法は、「カラーバス」「マンダラート」「マインドマップ」「5W1Hフォーマット」等、様々です。
僕自身も、特にディレクター、プロデューサーになってからは、この本の手法を実際に使いました。いや、使いまくりました(笑)。
一人で紙とペン(あるいはポストイット)だけで出来る手法が沢山載っています。
それぞれの手法の実際の使い方など、分かりやすく書いてあり、なおかつ読みやすいです。
アイデアが欲しい、あるいは出したアイデアをうまく企画の形にしたい、という方にはお勧めの1冊です。
そういえば先日紹介した米光一成さんの「魔眼本」にもこの「考具」が紹介されていました。
お勧めです。
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