最近あるゲーム会社の経営者がこうこぼしたそうです。
「最近はクリエイターがいなくなった。皆サラリーマンになってしまった」と。
僕も確かに同じ事を考えていました。
でも多分、それを言った経営者はそうなったのは何故なのか、については分かってはいないでしょう。分かっていればもう行動に移しているはずですから。
過去のエントリで言いましたが、ゲーム機のハードの高機能化、高度化を「常識」とし、そのハード用のゲームの開発にお金が過去の2倍も3倍もかかることを「常識」としてしまっていたのが、僕はそもそも間違っていたと思います。
当然、利益は圧迫され、経営的に余裕がなくなり開発者からは自由を奪う方向に行くでしょう。自由を奪われた開発者からはクリエイティブが自然と失われます。
遊びは遊び(ゆとり)から生まれるんです。
場合によっては、本当にクリエイティブな人ほど、その会社から離れる事になるでしょう。
ハードが進化したなら、逆に開発費は1/2, 1/3になってもいいのでは?高機能だからって全部の機能を使い切らなくてもいいのでは?こう考えるのはナムコ(バンダイナムコゲームス)でもごく少数でしたが、少なくとも僕は、
「お客様を楽しませる事が目的ならば別にすごい技術やすごいハードは必要ない。そこに必要なのはアイデアだ」
と10年前から考えていました。
最初の家庭用もじぴったんの開発費は社内でも1,2を争う低予算でした。当時の社内の別プロジェクトに「ああ、あのプロジェクトは12もじぴったんだね(もじぴったん開発費の12倍の意味)」等と笑いながら言ってました。
PS2版のもじぴったんは、PS2の処理能力の数%しか使ってませんでした。通常、ある程度の処理をするゲームは最後にチューニングして、処理スピードを上げないといけない事が多いのですが、もじぴったんには殆ど必要ありませんでした。メモリがたっぷり余るので、オンメモリ(全部最初にロードして、途中のロードなしにする)にすれば、さくさく遊べていいからそうしよう、とプログラマに言いました。技術的にはそっちが簡単だし、お客様にもメリットがあるからです。
種明かしをすればお手本がありました。
「枯れた技術の水平思考」
これは元任天堂でゲームボーイ等の開発をした故横井軍平さんの言葉です。
DSやWiiが従来の延長線上、つまり常識的な考え方ではない方向で発想されて世の中に出たのは、任天堂にその考え方が根本的にあったからだと思います。
横井軍平さんの事をもしご存じなければ関連書籍を悩めるゲーム開発者に是非読んで欲しいと思います。
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