この記事の所要時間: 224

リアルを追求する事は本当に大切な事なのか、について前の記事で述べました。

過去記事:「リアル」な事がゲームを買わない人の理由になっている

大切なのは、リアルを追求する事がちゃんと「目的に合致しているか」という事なのです。

Only found in Blackpool now... Ridge Racer 2 arcade

ナムコの「リッジレーサー」というゲームが最初にゲームセンターに並んだ時、僕は学生でしたが、当時の印象は「なんてリアルなゲームなんだ」というものでした。テクスチャマッピングされた3Dの映像がリアルタイムで動く、という事自体が画期的でしたから、多くの人もそういう印象を受けたのではないかと思います。

しかし、ナムコに入社して理解した事は、実は「リアルさ」を追求しようと思えばできたけれども、あえて「リアルさ」を追求していなかった、という事でした。


特に車の挙動に関しては、リアルでない事にむしろこだわりがある訳です。

時速300kmでアクセル全開でコーナーを曲がれますし、気付かない人は気付かないかもしれませんが、ドリフトしている最中にそう簡単にコースアウト(外側の壁にあたる)する事がないように車の挙動に補正がかかっています。

何故、リアルにしようと思ったらできるのに、あえてそのようにするのでしょうか。

理由は簡単です。

ゲームセンターに遊びにくる人は、皆実際に車の運転が得意な人でしょうか。

いえ、逆です。免許も持ってない中学生や高校生、大学生、むしろ車を運転した事がない人がたくさんいます。

ゲームセンターでレースゲームを遊びたい、という人はむしろ、実際に車の運転をしてかっ飛ばす体験ができない人たちです。

リッジレーサー(ゲームセンターに最初に出たもの)のコンセプトは、

「仮に一度も車の運転をした事がない人が初めて100円を入れてプレイしてもドリフトでコーナーを駆け抜ける快感を味わえるレースゲーム」

というものです。

もし、リッジレーサーがものすごく現実の車の挙動に近いものだったとします。

そこで起こる事は目に見えています。初めて遊んだ人は皆まっすぐ走る事すらままならず、壁にぶつかりまくり、ゲームをプレイしている途中にも、そして終わった時にも「単に嫌な思いをした」となるだけの話です。

そこに「リアルではないが、気持ちよくドリフトの快感を味わえるための挙動」が入る事で、初めて遊んだお客様も「面白かった、もう1回プレイしよう」と感じる訳です。

本当にリアルに作れば、そこで実際に気持ちよく走る事ができる人は、現実にも気持ちよく走る事ができる人だけになってしまうのです。

「リアル」にする事は、あくまで手段です。ですから「目的に合致しなければ」むしろリアルでない必要性があるのです。

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