僕はナムコ(現バンダイナムコゲームス)時代に、自分でゲーム開発のシゴトもしながら、新人から中堅、中途社員まで、社内での研修講師をしていた経験があります。
意外に思われるかもしれませんが、まったく同じ研修をして、例えばワークショップを行った際に、明らかに成果を出せるのは実は入社したばかりの新人さんです。
僕自身も、これには驚いたのですが、研修を重ねて、ワークショップの発表などを聞いているうちに、どうやらいくつか大きな要因がある事がわかりました。
ひとつは、入社したばかりの新人さんは「会社の中で一番お客様に近い」という事です。
参考記事:上司や先輩の言う事を疑え
市場分析をするための研修をやると、それは明確に分かるのですが、新人さんはやり方さえちゃんと教えれば、あくまでお客様の視点に近い形での分析ができるのです。
ところが入社年数が長くなった人にまったく同じ分析をやらせると、「業界の仕組み」とか「ゲームの中身(のしかも細かい所)」が売れた、売れないの主因ではないかと分析をしがちで、何故お客様が買わなかったのか、という所について場合によっては的外れな分析を行うケースが多くあったのです。分析には「客観性」が必要なのですが、それが抜け落ちるケースは少なくありませんでした。
もう一つは、新人さんのほうが、研修をやった時に真剣に自分で何かを吸収しようという姿勢で参加をする傾向が強いというのもあります。
逆に入社して数年たった社員は、現場の仕事があるのに、上司に無理矢理参加させられた、という感じで参加する人も少なくなく、そもそも研修への積極参加の意欲が新人より低い、という事がおきます。
元々、僕が社内で新人研修の講師をやり始めたのが、当時ナムコにコンサルティングに入っていた先生が「新人から教えなさい」と言った事がきっかけだったのですが、まったく同じ研修を入社年度別に行った事で、先生が言われていた「新人から研修を始める」という意味が理解出来た気がします。
この記事の話は、「新人の強み」が主題ですが、裏を返せば「ベテランの弱み」でもあります。
ベテランになればなるほど、「社内」や「業界」の常識に毒されて、実は見方を変える必要がある事に気がつかなかったりします。
もし、あなたがそうなりたくなかったら、あるいはそうなってしまっている自分を変えたかったら、なるべく外の人と接触を持って、話を聞いて勉強し続けるように心がけて下さい。
繰り返す事で、自分の世の中での立ち位置とか、見えてなかった世界、他人が持っている価値観、そういう大事な事が見えてくると思います。
バロメータは、「社内が色々変だ」という事に気づくがどうか、です。
ただ、「変である」事がその会社の存在価値を支えていたりするので、「変である」=「ダメだ」「悪い事」ではない事は付け加えておこうと思います。
久々の更新ですが、ぼちぼち更新しますのでよろしくお願いします。
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コメント(1): 新人が持っている本当の強み
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>ただ、「変である」事がその会社の存在価値を支えていたりするので、「変である」
>=「ダメだ」「悪い事」ではない事は付け加えておこうと思います。
これはまさしくそのとおりで、クリエイティブの源泉は社風に宿るというのが最近の仮設です。そして社風は定量化できないため研究が遅れているのが現状です。しかし任天堂やスタジオジブリなどは、その強烈な社風こそがモノづくりの原点にあるような気がします(宮本さんや宮崎さんがフリーランスで成功できるかといえば疑問な気がします)。そして社風は創り上げるのには年月がかかりますが、壊れるときはホントにすぐです。