
この記事の所要時間: 約 2分47秒 Tweet ゲーム開発を志す人、あるいは実際にゲーム開発を行っている人が陥りやすい罠。その一つは『すごいゲーム』を作りたくなり、作らないといけない、と思い込んでしまう事です。 (典型 […]
[続きを読む]ゲーム開発を志す人、あるいは実際にゲーム開発を行っている人が陥りやすい罠。その一つは『すごいゲーム』を作りたくなり、作らないといけない、と思い込んでしまう事です。
(典型的な「すごいゲーム」の例: EA Battlefield 3 プレイ動画
自分も元プログラマで、僕がナムコに入社したかったのも、入社して最初に業務用ゲーム機の部署への配属を希望した理由の一つも、当時3Dのゲーム開発ではナムコが最先端を走っていたから、というのがあります。
ですから、僕自身も「すごいゲーム」を作りたい、という気持ちはよく分かります。
同時に会社に入ってからの周りの要求も「すごいゲーム」を作るんだ、作らないと置いていかれる、他社に負けてしまう、というプレッシャーになってきます。
同時にハードの進歩に伴い、「すごい事」が出来るようになると、「すごい事」をやらないとダメだ、という思い込みが強くなってきます。
僕自身は、PS2発売の後くらいから、「本当にすごいゲームを作るべきなのか?」という事に疑問を感じ始めました。
(このあたりの話は、米光一成さんとの対談の「その1」で話をしています。)
『見た目がすごくなくても、技術的に優れていなくても、売れて、お客さまの満足も高い、というゲームが作れるはずだ。』
その考え方は、その当時の僕のスタンスでした。「もじぴったん」というゲームをプロデュースした経験から、今も変わらず持ち続けています。
『すごいゲーム』を作らなければならない、と思い込んでいるのであれば、一度その常識を「本当にそうだろうか」と考え直してみては如何でしょうか。
この話は、以前に紹介したゲームボーイの開発者でもある故横井軍平さんの『枯れた技術の水平思考』の話とも繋がります。横井軍平さんの話は、僕らが陥りやすいけど、本当はこうあるべきでは、という商品開発に対する考え方について「はっ」とさせられる事を色々教えてくれる気がします。
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[続きを読む]ゲームデザイナーをはじめとした企画職の人なら、アイデアを広げたり、整理して企画の形にする必要性が頻繁にあると思います。
ご紹介するこの本もかなり昔に出会った本ですが、未だに所有している本です。実際の所、プロジェクトのメンバー等に貸すために1冊、自分のために1冊持っていたりします。
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特に何かしらの企画アイデアを出して形にするために、この本で紹介されているような「考えるための道具=考具」があるかないかは大きな差になります。
紹介されている手法は、「カラーバス」「マンダラート」「マインドマップ」「5W1Hフォーマット」等、様々です。
僕自身も、特にディレクター、プロデューサーになってからは、この本の手法を実際に使いました。いや、使いまくりました(笑)。
一人で紙とペン(あるいはポストイット)だけで出来る手法が沢山載っています。
それぞれの手法の実際の使い方など、分かりやすく書いてあり、なおかつ読みやすいです。
アイデアが欲しい、あるいは出したアイデアをうまく企画の形にしたい、という方にはお勧めの1冊です。
そういえば先日紹介した米光一成さんの「魔眼本」にもこの「考具」が紹介されていました。
お勧めです。
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[続きを読む]以前にぷよぷよのゲームデザイナーの米光一成さんと対談した時に、米光さんに1冊頂いた本を紹介します。
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アイデアをどんどん発想できる達人、というのは、もちろん天性のものもあるとは思いますが、アイデアを出す事をずっとクセにして繰り返してきた結果、アイデアを出す事が楽しくてしょうがないという状態になっています。
では、その人達はどのようにして、そのような達人になったのでしょうか?
お仕事でも、芸の世界、柔道、剣道、茶道などの「道」の世界でも、最初は「型」(いわばマニュアル通り、真似)を繰り返す事から入って、それが身についたら、自分なりの工夫をして、そして最終的には自分なりの、自分だけのやり方を身につけるものです。
この書籍に書いてあるのは、自分にしか思いつかないアイデアをどんどん出せるようになるために、最初に真似してとにかくやってみるという「型」にあたる事です。
方法が具体的に書いてあり、そのための「道具」の紹介もきっちりしてあります。
基本的に自分一人で出来る方法ですので、本を読みながら実際にやってみる事をお勧めします。
さりげに、中で紹介してある参考書籍やツールが僕のツボにはまりまくってしまいました。
これからゲームデザイナーを目指す方だけでなく、商品企画のお仕事をしたい方、アイデアが出ない、と悩んでいる方は是非。
米光さんの書籍は他に紹介したい本があるのですが、また別の機会に。
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[続きを読む]ガジェット通信+エキサイトレビューにて、『ぷよぷよ』『魔導物語』『バロック』などの名作ゲームを生み出した米光一成さんとの対談が記事になっています。
ゲームデザインに関わる方、これからゲームデザイナーになりたい方、必見です。是非。
ガジェット通信
【米光×中村ぷよぴったん対談】
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エキサイトレビュー
(参考) 米光一成さんのブログ「こどものもうそうblog」
(リンク先) ガジェット通信 エキサイトレビュー
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[続きを読む]2月5日(土)に福岡コンテンツ産業振興会議主催のデジタルコンテンツ応用セミナーで講演をさせて頂いたのですが、最後に流したYoutubeの動画、説明が足りなかった気もするので(いまさらかよ、というのは無しでw)再度ご紹介しようと思います。
(職場で見てる方、音がないと意味がわからないので、音が聞ける環境で是非)
普通のゴミ箱に楽しさを演出する「音」を追加しただけ、と思えるかもしれませんが、ゴミ箱にこういう仕掛けをする事で、皆がいつもよりゴミを拾って捨てるので、結果的に周りが綺麗になる、というのがキモな訳です。
僕はゲームデザインの「楽しさ」を生み出す技術は、もっと世の中の役に立てると思っています。これはわかりやすい例かと思い紹介しました。
このシリーズは他にもいくつか。
こっちはもっとゲームっぽい。
他にも色々ありますので、よかったら元のサイトもどうぞ。
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この記事の所要時間: 約 3分22秒 Tweet 先日、ワンピースのゲームの開発で有名なガンバリオンの山倉社長をはじめとした数人と会食をしました。 ワンピース アンリミテッドクルーズSP(発売日未定) posted wi […]
[続きを読む]先日、ワンピースのゲームの開発で有名なガンバリオンの山倉社長をはじめとした数人と会食をしました。
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ガンバリオンの企業のビジョンは「永く愛されるゲームを作る」という事。
実は僕が「もじぴったん」に取りかかる前から、自分はどんな商品を作りたいのか、という事を考えて10年以上前にたどり着いたのが「永く愛されるゲームを作る」という事でした。
当時、家庭用のゲームソフトというのは、発売から1ヶ月もしたら宣伝も何もしない、3ヶ月たったら店頭からなくなっている、というのが殆ど常識でした。僕自身は、その常識にものすごい違和感を感じていたわけです。
もじぴったん開発当時インタビューを受けたりした時に、僕が必ず永く愛される商品の例に出していたのは「人生ゲーム」でした。
「人生ゲーム」は、どんな小さい街のおもちゃ屋さんにも必ず置いてあるし、発売から何十年たっても売っているわけです。小さい頃に遊んだと思っていたのに、大人になったら今度は子供と一緒に遊べる。
おもちゃの世界では普通なのに、ゲームの世界では普通ではない。
僕はそんな「永く愛されるゲーム」が作れないのだろうか、と思っていました。
「もじぴったん」を作り始めた時、10年後にも遊ばれているというイメージがはっきり沸いたのを覚えています。
僕は少なくとも10年は愛される商品にしたい、とそう強く思いました。
ガンバリオンさんでのゲームを開発する姿勢は、驚くほど僕がとったアプローチと近いものでした。
そして、実際にお店で定番商品となり、永く売れ続ける、そして永く愛されるゲーム作りに成功されていると感じました。
社長の山倉さんは、元々はゲームショップの店長をしていたそうです。
僕は、ああ、なるほど、と思いました。
お客様に近い所にいてゲームを見ていた事。お店の本当に必要にしている商品、つまり定番商品=「永く愛されるゲーム」を開発すべきであること。そのために必要な条件がいくつもあることを知っている事。
お話していて、共感できて、少し時間を忘れて遅くまでお話しました。
楽しかったのもあるし、とても印象深い時間を過ごせました。
もし、今新しいゲームを作っているとして、「10年後も変わらず、もしくは今以上に愛される商品になっているか」という問いは、多分意識しなければしないと思います。でも、一度問い直す価値のある自分たちへの質問であると僕は思っています。
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今までいくつかのプロジェクトに関わってきて、うまく行った(単に売上げがあがったとかだけではなく)プロジェクトとそうでないプロジェクトの違いとなっている一つの要因は、プロジェクトに関わる人がそのプロジェクトの「目的」をしっかり共有しているか、という所が一つの違いになっていると感じています。
あえて、「目標」とは言っていないのは、往々にしてプロジェクト半ばで状況や環境が変わって「目標」は修正をするべき必要が出てくる事が多いからです。
商品開発プロジェクトでの目的は、実は商品を完成させる事ではありません。
(多くの商品開発プロジェクトは、ここで間違いを犯しています)
商品開発プロジェクトで目的にすべきは、商品そのものではなく、その商品開発の目的である、どんなお客様に、どんないい事をもたらすかという事です。そしてそれがしっかりと目的として共有されている必要があると考えています。
でないと、商品の開発が色んな理由、例えば技術的、人員的、その他で暗礁に乗り上げてしまった時に、皆で打開策を打ち出す事が難しくなってしまうのです。
目的が「お客様にどんないい事をもたらすか」という形で認識が出来ていれば、場合によっては商品開発の方向性を変えてもいい、やり直してもかまわない、あるいは、目的から考えれば、当初考えていたのとは違うアイデアで実現をすればよい、という発想ができるようになります。
仕事で何かつまづいた時、問題にぶちあたった時は「そもそも今やろうとしている事の目的はなんだろうか」を考えてみる癖をつけるのがよいです。単に目の前で起こっている問題を対処療法的につぶそうとすると、商品開発であれば、ちぐはぐな仕様などを生み出しがちです。
そのためには「何故今これをやる必要があるのか」「そもそもの目的は何か」「プロジェクトの目的と矛盾しないか」等を常に考えて手段と目的の関係を常に頭の中で組み立てて考えておき、問題がある手段が出てきたら、目的に立ち返って違う手段で解決できないかを考えるという思考パターンを身につけておくのがよいと思います。
プロデューサーとしては、その意味でプロジェクトの大義=プロジェクトの目的、をしっかりと皆に共有してもらう事が一つの大きな仕事となります。
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この記事の所要時間: 約 2分25秒 Tweet 立命館大学の教授のサイトウ・アキヒロさんの招待で、ゲスト講師として講演をするために京都に来ています。 サイトウさんは、「ゲームニクス」という考え方を提唱していて取扱説明書 […]
[続きを読む]立命館大学の教授のサイトウ・アキヒロさんの招待で、ゲスト講師として講演をするために京都に来ています。
サイトウさんは、「ゲームニクス」という考え方を提唱していて取扱説明書を読んだりしなくても、直感的に理解して操作でき、楽しめるというためのユーザーインタフェースの設計方法や、ゲームデザインの基本的な考え方を体系立てて教えています。
また、そのノウハウをゲーム業界だけでなく広く他業界にも広めようとしています。
先日講演の前打ち合わせという事でサイトウさんとお話をしました。
ある種複雑な事を快適に思った通りに操作でき、いつのまにか自然にルールも学習して楽しむというためのインタフェース、メニュー構成、ゲームデザインのノウハウはベテランのゲーム開発者なら共通で分かっているのですが、それが体系立てられていないので暗黙知( 知っているけど教えられない、伝えられない)という事になっているのではないかとサイトウさんも僕も感じています。
ゲーム開発者の方なら、新しい家電のインタフェースがあまりにも出来が悪くて「俺に作らせろ!」と思った事はないですか?
サイトウさんのゲームニクス関連の著書は2冊ありますが、特にあまり経験のないゲーム開発者の方々に(ゲームデザイナーだけでなく、プログラマ、ビジュアルデザイナさんにも)「ニンテンドーDSが売れる理由 — ゲームニクスでインタフェースが変わる」の一読をお勧めします。
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実際のゲームでの実例なども非常に多く、かなり体系立てて伝えられているので、ゲーム開発者を目指す人には是非読んで頂きたいと思います。ゲーム開発者だけでなく複雑化していく家電、携帯電話等開発しているような方にもお勧めします。
タイトルにあるDSが売れている理由、というのには大きくは期待しないで、インタフェース設計のための教科書的なものとして持っておくのがいいかと思います。
お勧めです。
—-
いやしかし、久しぶりの新幹線…京都も久しぶりです。仕事以外では行った事がないですが。
そんなわけでサイトウさんに京都っぽいところを少し案内して頂きました。
色々とディープ。何がディープかは言えない(笑)
このブログではプロデュースの話を中心にしていますが、ゲームデザインについても度々触れていきたいと思っています。
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この記事の所要時間: 約 2分16秒 Tweet ナムコに入社してラッキーだった事の一つは、遠山 茂樹さんと一緒に仕事が出来た事です。 遠山さんは、古くはゼビウスのデザインを担当して、ガンバレット やプロップサイクルとい […]
[続きを読む]ナムコに入社してラッキーだった事の一つは、遠山 茂樹さんと一緒に仕事が出来た事です。
遠山さんは、古くはゼビウスのデザインを担当して、ガンバレット やプロップサイクルという名作のアーケードゲームのゲームデザイナー。遠山さんを一言で言うと「マッドサイエンティスト(笑)」。僕はMr.ナムコ、と思う位、ナムコっぽい人で、とにかく、面白いアイデアを次々に生み出すすごい人なのです。
最近は「遠山式立体表示法」という従来にない「実在感」のある3Dの表示手法を開発していて、ゲームに留まらない、本物のクリエイターの一人だと僕は思っています。
PSPの「ポータブルアイランド 手のひらのリゾート」というタイトルで遠山さんと一緒に仕事を出来たことは僕にとっては非常によい経験となりました。
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遠山さんのアイデアを生み出す考え方には本当に学ぶべきところがあったのですが、中でも
「答えは必ず思いついていない中にある」
という遠山さんの中にある根本的な考え方は、クリエイティブが求められる仕事では基本とすべき考え方だと感じています。
何かしら問題にぶつかったとき、論理的に考えていっても行き止まりでそれ以上進まないときがあります。
遠山さんのように本当にクリエイティブ人は、そんな場面でも「答えは必ずある。出来ないのではなくて、解決策を思いついていないだけだ。」と考えるのです。
クリエイティブでない人は難題にぶつかると「それは無理」と先にあきらめてしまう(すぐに結論を出してしまう)のです。そして「出来ない理由」を探してしまいがちです。
しかし、クリエイティブな人は、どんな問題にも解決策がある、まだ思いついていないだけだと考え、それを思いつく方向へパワーを注ぐのです。
これは創造的で、今までにないモノを生み出す人の考え方の基本で、ゲーム開発という分野に関わらず、仕事をしていく上でとても役立つ考え方だと僕は思っています。
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[続きを読む]ゲーム開発において、説明しなくても理解できて楽しめるゲームを作るためには、一つはある程度インタフェース設計やゲームデザインの文法というものを知っている必要がありますが、それがあっても、特に新しいゲームを作った時には作った側の「常識」が邪魔をして、何も知らない人がプレイすると理解できなかったり、諦めてしまったりしてしまう設計になってしまう事があります。
それを防ぐためにはいわゆるテストプレイというのが必要です。
開発している人とは関係なく、予備知識がない人(もちろん、できれば商品を遊んでもらいたい人に近い人が望ましい)を連れてきて、少なくとも10人程度には試しに遊んでもらうのだけれど、いくつかのポイントがあります。
○ 事前にも、テストプレイ中にも絶対に説明をしない。
開発者がセッティングして、テストプレイをさせると、開発者は「ちゃんと遊んで欲しい」という気持ちが働くので、事前にゲームのルールや操作の説明をしてしまいがちです。
さらに言うと、テストプレイをしている人が何かでうまくいかないのを見ると、思わず次の操作を教えたり、どうすればクリアできるか、を教えてしまったりします。
しかし、これは「絶対に」やってはいけません。
あくまで肩越しに、プレイしている様子を観察するのです。詰まって諦めたら、それを事実として観察しておきます。
大事なのは、何故そうなったか、を考えると同時に、テストプレイヤーがどう行動しているか、をよく見ておく事です。
○ 行動を細かく観察する。
テストプレイヤーは、あるシーンでは、本来は反応しない所を連打したりしてしまうかもしれません。こちらが想定していない操作をするかもしれません。実は、それは開発をする上で非常に重要なヒントになります。
つまり、そういう行動をした、というのはそのシーンでテストプレイヤーは何かをしたかった訳です。
例えば、デモシーンで連打をしていたら、そこは早く飛ばしたいという現れかもしれません。
本来反応しない所を連打していたら、そこを押す事に何かを期待していた現れのはずなのです。
自然なインタフェースを実現するには、テストプレイヤーが自然にしている事、をよく見ておく必要があります。
○ 終わった後に説明をしない
終わった後、アンケート、もしくはヒアリングをします。
行動は観察できますが、テストプレイヤーが感じていた感覚は分からない事が多いですから、それを中心に聴きます。
ここでも重要なのは、例えばテストプレイヤーが勘違いをしていたりしてうまくいかなかった事を話していたとしても、その勘違いを訂正するような説明を絶対にしない事です。とにかく「聴く」事に徹します。
また、ここが分からなかった、と言われても「そこはこうなってるんですよ」みたいな説明は絶対にしないで下さい。
説明をした瞬間に本来聴けるはずの勘違いの実態がそれ以上聴けなくなってしまいます。
「もじぴったん」プロジェクトでは、開発時にこのテストプレイを非常に重視して、時間も手間もかけていました。
立命館のサイトウさんの講義では、もじぴったんDSでの事例を実機を使って説明したのですが、近いうちに動画でその講義の一部をこのブログでお見せできればいいなと思っています。
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[続きを読む]ある有名なゲームのシリーズの最新作が出た時、ある雑誌の紹介に「クリアまで100時間の超ボリューム!」みたいな事がデカデカと載っていた事がありました。その事がその最新作の売りだったのです。
それをきっかけにして、僕はそのシリーズを買う事はなくなりました。
「忙しい上に、テレビは家族のもので自分が100時間独占する事はできない。」
好きだったシリーズだったけれど、もう自分向けではない、と思いました。
これまでも何度か実例を挙げてきましたが、娯楽商品は生活の中に無理なく入る事ができなければお客様には楽しんで頂けません。
どんなに遊べば楽しい、面白いゲームでも、お客様の生活の中で遊ぶ時間を取れないと思われたら、購入して頂けないのです。仮に購入して頂けたとしても気持ちよく遊ぶ事が出来ず、次第に遊ぶ、楽しむ事から離れてしまいます。そんな状態で続編なんか出されても買おうという気にはならないでしょう。
ゲームを作っている側はボリュームを増やせば増やすほど価値が上がる、売れる、お客様は満足する、と思いがちですが実はそうではありません。
特に忙しいお客様にとっては「お金」以上に「時間」は大切で、それを十分理解して商品やサービスを提供する必要があると思っています。
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[続きを読む]我が家はケーブルテレビを契約していて、主には海外ドラマの専門チャンネル(FOXとかAXNとか)を録画して見ています。
一番見ているのは妻だけれど、僕も子供が寝静まった後に妻と一緒に見る事もそこそこあります。
ただ、僕が見るのは「1時間1話完結タイプ」のドラマだけ。
続き物のドラマ(LOSTや24等)は時間があっても見ないようにしています。
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何故かというと、忙しい僕の場合、続き物はスキップして見るとストーリーがまったく分からなくなるからです。
一度見てしまうと続きが気になってもやもやしてしまいます。スキップしないで全部見ようにすると次にいつ見る事が出来るか分からないのでハードディスクレコーダーが一杯になってしまいます。で、全部見る時間がとれる気がしません。
映画は録画してあっても殆ど見ません。1時間は夜なんとか時間的にとれることがありますが、2時間の映画は頑張って時間を作るか、夜更かししないと見るのは難しいです。
結果的に「1時間1話完結タイプ」のドラマしか見ない訳です。1話完結であれば、1話でスッキリするし、途中何話か飛ばしても問題なく見る事が出来ます。
この話はドラマの話だったけれども、ゲームにも同じような事がいえます。
やる事が色々多くて忙しい人にとっては、
- 自分が無理しないでもとれる時間の範囲で
- すっきり、キリよく楽しめて
- 終わった後にもやもやしない
という事は大切なのだと思っています。
お客様の生活の中でのエンタテインメント、を考えた時には「時間」に対する配慮が非常に大切です。同時に気持ちよく切り替えて次の事ができるか、という事も大切な要素だと中村は考えています。
ちなみに中村お気に入りの1話完結型のドラマは、
コールドケース(AXNで放映中)
(昔のヒット曲などが効果的に使われているけど、それ故にDVDになってないらしい)
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あたりですかね。
一話完結が基本なんですが、To be continued … と言われたりしてムキーってなる事もありますよ…(しかも次のシーズンに続くとか…(笑))
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[続きを読む]「もじぴったん」GBA版の発売後、購入されたある方と話をして、その方がたまたまGBAともじぴったんを持っておられたので、見せて頂く事になりました。
GBA版のもじぴったんは、遊んでいる度合い(クリア度合い)によって「ゴールドもじくん」「ブロンズもじくん」みたいにゲームのキャラクターがバージョンアップして称号が表示されるという仕様になっていました(ゲームのデータを見るモードの中)。
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で、その方はかなり遊んでいて結構上のステータスになっていて、それを僕に見せたかったらしく「XXXもじくんですよ〜すごいでしょ!」のように言われました。
ところが、同じゲームデータを見るモードの中の「総プレイ時間」は「見ると悲しくなるから、見ないようにしている」と言われたのです。
最初は「時間をかけた割にはあまりクリア出来ていない」事が嫌なのかと思いました。
しかし、その方の場合はそうではなく、「自分がゲームにこんなに時間を使ったという現実を突きつけられているようで、見たくない」という事でした。
前回のエントリーで、好きだからこそ、買わない、遊ばない、という方の理由をお話しましたが、実は「総プレイ時間」を見たくない、という心理も似ている所があります。
僕らは、「もじぴったん」の最初の家庭用ソフトであるPS2版、GBA版を作った際には「他のゲームソフトも同じ総プレイ時間の表示をやっている」「自分がプレイした時間が分かれば出したお金の元を取れた気持ちになれるだろう」位の理由でその仕様を入れていました。
しかし、その後、その常識的な考えを改めて以後のもじぴったんには総プレイ時間の表示はしないようにしています。
興味深いのは、プレイの進行度のステータスは人に見せたくて、リアルな総プレイ時間は「見たくない」という心理です。
他の売れているゲームでやっているから、という理由で同じような仕様を入れる事は考え直さないといけない事に気づいた出来事でした。
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[続きを読む]世の中には、そのゲームが「大好き」なタイプが故に「買わない」という人がいます。
僕はそういう方に何度も出会いました。
もじぴったんの家庭用版が発売された後、ある、まだもじぴったんを遊んでいない女性に是非遊んでみて下さい、と言ったら、「うわっ、すごく好きなタイプのゲーム!」と言った後に「怖いから買わない」と言われました。
何が怖いのかというと、大好き故にハマりすぎて仕事や生活に支障をきたす事を恐れているのです。
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その人は「パズルゲーム」や「クロスワード」が大好きで、夢中になりすぎる事が目に見えているので、絶対にハマる、楽しめる事を確信しながら、それを理由に「絶対買わない、買っちゃダメ」と思っているようです。
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そんなのごく一部の人でしょ、と思うかもしれません。
でも、同様な理由でゲームを遊ばない、買わない、という方は少なくはない、というのが僕の印象です。
時間がたっぷりあって、遊ぶ暇なら沢山ある方なら、そんな事は言わないかもしれません。
でも、ものすごく楽しいが故に生活上の問題が生じる、というのは立派な「買わない」理由になるわけです。
楽しい事よりも、生活上に問題が生じるほうが殆どの場合重大な問題になるからです。
ゲームを作っている人は、楽しい、もっと楽しい、面白い、もっと面白いゲームを作ろうとします。
それが、より売れるゲームになる、と思っている方も多いでしょうね。
しかし、その事が逆に「買わない」一因になっていて、本質的にそれは何故なのか、についてはゲーム制作に関わる方はよく知る必要があると考えています。
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[続きを読む]ファミコンが出る前….の昔の話です。
ちょっと若い人には想像できないかもしれませんが。
正月に親戚が集まった時に、子供が一緒に遊ぶゲームの定番は「すごろく」でした。(あるいはすごろくに近い、人生ゲームのようなもの)
すごろくのゲーム性というと、シンプルに「完全な偶然性」です。
もしかすると、攻略性も何もない「すごろく」は「ゲーム」ではない、と思う人もいるかもしれませんね。
しかしながら、「完全に偶然」(さいころの出た目だけの勝負 ) である事は、正月に親戚が集まるというシーンにおいては非常に有用なのです。
正月に集まる親戚の子供の年齢・性別はバラバラです。
もし、上手い人が勝つ、頭が良い人が勝つ、というルールのゲームならば、小さい子は勝てない事になってしまいます。
で、そういう小さい子ほど負けた時に泣いて騒いだりするのです。
集まっている親は、正月くらいは子供の世話から離れて、お酒を飲んで親戚の人と楽しく話したりしたいわけです。上手いところ、子供達には一緒に遊んで欲しいと。
「すごろく」は、完全に偶然性のみが左右するゲーム性ですから、小さい子供にも勝てる可能性があるわけです。
お兄ちゃん、お姉ちゃんが補佐すれば、とても小さい子でも参加できるし、誰でも勝つ可能性があるのです。
もちろんルールはシンプルそのもの(サイコロを振った目の数だけ進み、ゴールを目指す)です。
そういう意味で、正月の親戚が集まった時の子供達が共通に遊べるゲームとして、親達にとっては、子供達に遊ばせておいて自分達はお酒をゆっくり飲むためのツールとして「すごろく」は定番商品でした。
ゲームデザイナーという職業になっている人にはゲーム好きな人が多くて、やたらとゲーム性とか、複雑なルールとかそういう所ばかりに目をやる人が多いのですが、生活上のツール、という意味でいうと実はそういったゲーム性は必要ない、あるいは邪魔になる場合もあるのです。
お客様が遊ぶシーンを想像して、そして周りにいる人も想像して、皆が喜ぶにはどうしたらよいかを考えてみてはどうでしょうか。
案外、自分達が「ゲーム」とは呼ばないモノがニーズに応えるのかもしれませんね。
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[続きを読む]ゲームソフトが発売日に売れる不思議、というお話をしましたが、一般の方には不思議には感じない方もおられると思います。
すごく期待しているゲームなんだから、早く購入して、早く遊びたい。
あるいは、皆と一緒に遊びたい。
だから発売日に並んででも購入したい。
でも、前提になっているのは、その期待しているゲームソフトが購入すれば期待通りか期待以上の満足を与えてくれるという会社やブランドに対する「信頼」なのです。
今PSPのモンスターハンターポータブル3rdが爆発的に売れています。もちろん発売日には行列ができ、今でも品薄状態が続いています。
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それは、モンスターハンターポータブルのこれまでのシリーズが、最初の製品からずっと信頼を裏切らない、期待通りか期待以上の満足を与えてくれたからではないでしょうか。
ですから、その最新作は、きっと今まで以上の満足を与えてくれるに違いない、と思って発売すぐに購入したい、と思うのではないでしょうか。
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もっと言えば、PlayStation 2 向けに発売されたオリジナルのモンスターハンターという商品が全然ダメな商品だったら、今のこのモンスターハンターポータブル3rdのヒットはない訳です。
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PlayStation 2 向けのモンスターハンターが発売されたのは2004年3月。開発が始まったのがその2年前だと仮に考えるとかれこれ8年位かけて積み上げてきたものが、今の「売れている」という結果に結びついているのだと僕は考えます。
(参考)Wikipedia によるとオリジナルのPlayStation 2版のモンスターハンターは29万本の売り上げだったそうです。
経営者やプロデューサーが信頼を積み重ねる必要がある、という話を過去のエントリーでしましたが、今ゲームソフトをお客様が発売日に買うというのは、過去に積み重ねた「信頼」によるものなのです。
過去エントリー:商売で本当に大事なのは「売上・利益」より「信頼」
今、50万本、100万本、200万本も売れている商品の殆どは過去5年、10年、いやそれ以上積み重ねてきた「信頼」の元にお客様が購入しているのではないでしょうか。あのシリーズ物も、あの世界的に有名なキャラのゲームも、まさに積み重ねてきた会社やブランドへの信頼がなければ購入していただけないのです。
別の見方をすると、今売り上げがあがらないという要因は5年、10年前から段々信頼を失ってきた結果ではないか、という見方もできるのではないかと思っています(もちろん、それだけではないのは十分理解していますが)。
信頼は、残念ながら一朝一夕には積み上がるものではありません。
目先の利益にとらわれて、信頼を失っていく事が、どれだけ将来の自分たちの首を絞める事なのかを経営者やプロデューサーは肝に銘じる必要があるのではないでしょうか。
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この記事の所要時間: 約 1分35秒 Tweet 多分、僕がまだナムコの業務用ゲーム機開発のプログラマーだった頃(10年以上前)の事です。 ある時、今まで「常識」と思っていた事に大きな疑問を感じました。 何故家庭用ゲーム […]
[続きを読む]多分、僕がまだナムコの業務用ゲーム機開発のプログラマーだった頃(10年以上前)の事です。
ある時、今まで「常識」と思っていた事に大きな疑問を感じました。
何故家庭用ゲームソフトは発売日、あるいは発売された週に一番売れるのだろうか?と。
考えてみたら、不思議なのです(当時の自分にとっては)。
発売日にゲームソフトを買う人は皆、そのゲームを遊んでから買うわけではなく、買ってから遊ぶわけです。
発売日に何十万本と売れるソフトも、皆、遊んで面白さを確かめてから買うわけではないと。発売日に買う訳ですから、誰か遊んだ人の話を聞いて買う訳ではない。
しかも、ゲームセンターのゲームなら100円や200円で遊んでみる事ができるのに、家庭用のゲームは5000円、いやもっと値段がするわけです。
でも、発売日に一番売れる。
つまり、お客様は「遊んで面白いゲームソフトだから買う」のではないのです。
遊んでなくても、買う前に、何千円もお金を出してもいい、面白そう、あるいはきっと面白いに違いない、と想像して、期待して購入しているのです。
その結果、期待通り、期待以上の事もあれば、裏切られて「なんだこのクソゲー!」と思ってしまう事もあります。
ゲーム開発者はがゲームの開発にどっぷり浸かっていると「面白いゲームソフトを作れば売れる」と思い込みがちです。
でも「ゲームソフトが発売日に一番売れる」という事は、違う見方をしなければいけない事を示しています。
僕自身も、10年前までは「面白いゲームソフトを作れば売れる」と思い込んでました。今は、そうではない事を理解しています。
お客様の目から見れば当たり前の事ですが、ゲーム開発の現場で長く働き始めると「ゲームが面白ければ売れる」という勘違いをしてしまうのです。
この話はちょっと奥深いので、何度か事例なども出して違う角度からお話できればと思います。
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[続きを読む]ゲームを作る側の人間としては、実のところ世間のゲームの情報から意識的に遠ざかろうとしても、本当にゲームの事を知らない人の立場になるのは大変に難しいです。
であるなら、ゲームを本当に知らない人、ゲームを全然遊ばない人をよく観察する事でその人達の気持ちを理解する努力も別に必要になります。
そんな人を観察する機会はないな…と思うかもしれません。
でも、身近にいるよく知る一人、を想像してみるという手があります。
例えば…あなたの母親はどうでしょうか。
自分が作ったゲームがあったとして、それが動く家庭用ゲーム機をソフトと一緒に実家に送ったとしましょう。
でも…あなたの実家の母親はゲーム機の箱を開けて、そのゲーム機をテレビに繋ぐ所まで行けるでしょうか。
多分、僕の母は無理だと思います。実家にいるときは、家電製品が来たら、設置と設定は全部僕の仕事でした。
女性の年配の方は特に、機械に弱い方が多いものです。ゲーム機の取扱説明書を読めば… って事はいいませんよね?
仮に機械には多少詳しい父親に手伝ってもらって接続する事が出来たとして….あなたのそのゲームは、両親に説明なく楽しんでもらえるでしょうか。
いや、中村さん、僕の作っているゲームはターゲットが違うので無理ですよ、と思うかもしれません。
でも、今のような思考をして、あの人だったら…と考えればゲームを知らない人の気持ちが少しは分かるかもしれませんね。
そう考えると、身近にもゲームをまったく遊ばなそうな人がいませんか?
その人だったら…と考えてみたら、どうでしょうか。
ちなみに、僕は妻を観察する事で「ゲームを知らない人」の一つの反応を確かめる事を頻繁にしています。理由を聞けるのもメリットです。
以前にお話したパッケージのエピソードもその一つです。
(参考) 過去エントリー:お客様は何も知らないという前提で考える
そういえば、任天堂の宮本さんもGDC2007の基調講演で、「奥様メーター」という話をしていました。僕と同じで(笑)奥様がバロメーターになっているようです。
Game Watch 任天堂の宮本茂氏による基調講演 “A Creative Vision”
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070309/miya.htm
ぼんやりと「お客様」というイメージを持つよりも、身近にいる「あの人」と考える事で自分とは違う視点で物事を見ることができるような気がします。
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- ゲームを遊ばない、という努力の訳
- お客様は何も知らないという前提で考える
- 「売れてるモノ」でなく「身近な問題」を見る
- 「リアル」な事がゲームを買わない人の理由になっている
- 好きなゲーム、が故に買わない訳
![週刊ファミ通 増刊号 2011年 3/17号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61IgfbjAe9L._SL160_.jpg)
この記事の所要時間: 約 2分3秒 Tweet 正確にいつ頃からかは覚えていないのですが、僕がプロデューサーとして働くようになってからは、はっきり意識してゲームをプレイしないようにしていました。 会社にはゲームが溢れてい […]
[続きを読む]正確にいつ頃からかは覚えていないのですが、僕がプロデューサーとして働くようになってからは、はっきり意識してゲームをプレイしないようにしていました。
会社にはゲームが溢れていますから、遊ぼうと思えば会社でいくらでも遊べる訳です。
にもかかわらず、僕は会社でもあえて殆どのゲームをプレイする事はありませんでした。
同時にいわゆるゲーム専門誌も読まない事にしました。会社ではあちこちにあって読もうと思えば自由に読めるのにも関わらず、です。
ゲーム業界で働いている人なら、その行動には少し疑問を感じるかもしれません。
業界のトレンドや、他社がどんな技術を使ってどんな製品をだしているかは知っておくべき、というのが常識だからです。
しかし、僕自身はそういう環境だからこそ、あえてゲームを知らない人の立場を理解するために努力をする必要があると考えたのです。
同時にその行動が、実際に問題になる事は少ないと思いました。何故なら、周りで一緒に開発しているメンバーは、殆ど皆ゲームの事について詳しいからです。
あえて情報が溢れる中で、知らない人の立場をなるべく理解する事が、もじぴったんチームのリーダーとしての僕の役割だと思いました。
そうする事で、見えてくるものがあるわけです。
例えば、ゲームの事を知っていれば、人気のあった続編で宣伝を見ればなんだか理解できるのだけど、知らない人から見ると同じ宣伝を見てもそもそも何のゲームでどう面白いのかすら分からないということ。
そもそも、あるブランドのゲームが評価が高いとか高くないとか分かっていない事。何がいいのか知らない事。
大手のゲーム会社の開発の現場にいつつ、ゲームの情報を仕入れないようにするにはかなり努力が必要でしたが、結果的にはゲームを遊ばないようにする努力は正解だったと思っています。
もじぴったんが、ゲームを初めて遊ぶ人でもちゃんと遊べて、購入前になんとなくでもどんなゲームでどうよいのか理解できるようになっているのも、一つはその努力のおかげです。
業界の人全てに僕のマネをして欲しい、とは思いません。
ただ、皆がゲームの事について詳しいならば、ゲームを知らない事を生かしてチームに関わる役割の人が必要だと思います。
特に、今までゲームを遊んだことがない人に遊んで欲しい、喜んで欲しいと思うのなら、そのような役割の人は必要です。
ゲームを遊ばない事で見えてきた事、について明日もエントリーを書こうと思います。
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この記事の所要時間: 約 1分42秒 Tweet 今発売されているゲームを見ていると、多くのケースで「売れる」事を狙いに行って、結果的にパッとしない事になってしまっているように思います。 もちろん、入念な戦略があって売れ […]
[続きを読む]今発売されているゲームを見ていると、多くのケースで「売れる」事を狙いに行って、結果的にパッとしない事になってしまっているように思います。
もちろん、入念な戦略があって売れているものもあります。
「売れる」事を狙いに行くと、皆がよくやりがちな事は「売れているもの」のマネをする事です。しかし本質を理解しないと、単なる後追い商品になってしまいます。
でも、「売れる」事を目標にする事ではなく、あえて身近にある問題で、今ある手段では解決できない事をなんとかする方法を発明する、というのが実はヒット商品の近道かもしれません。
Dr.中松が発明したものの中に「灯油ポンプ」(Dr.中松は醤油用に発明した)がありますが、母親が漏斗で醤油を瓶に移し替えるのに苦労しているのをなんとか解決しようとして発明したものだそうです(当初の商品名は「醤油チュルチュル」)。
実用品だけではありません。
ポピュラーでロングセラーなテーブルゲーム「オセロ」。
発明した長谷川五郎さんは、中学生であった当時、終戦間もない焼け野原で「休み時間10分以内に決着のつくゲームはないか?」と囲碁を元に自分達のためにオセロを考案したそうです。
僕は身近な、生活の中の問題がこんなゲームがあれば、あるいはこんなゲームの技術で解決できないか、と常に考えています。
実は今売れているもの、は殆ど気にしていません。
それが「売れるモノ」を作る近道だと思っているからです。
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