
この記事の所要時間: 約 2分13秒 Tweet ゲーム開発や商品企画をする人達は「売れている商品」が何かを調べようとして、結局POSデータから集計される週販売上TOP30を頼りにしてしまう傾向にあります。毎週の売上TO […]
[続きを読む]ゲーム開発や商品企画をする人達は「売れている商品」が何かを調べようとして、結局POSデータから集計される週販売上TOP30を頼りにしてしまう傾向にあります。毎週の売上TOP30をずっと見ているから、売れ筋がなんだか把握している、と考えてしまいます。しかし、これは本当の意味で売れている商品を見落とす可能性が実は高いのです。
それは、「ランキングには殆ど載ってこないが、お店では実は売れている商品」というのがあり、実はそういう商品こそお店が必要で、利益に貢献する商品になっているからです。
以前にお店にとって「定番商品」がいかに大切か、という話をしました。
過去記事:定番商品の必要性
過去記事:定番商品になる条件とは
実は、定番商品といわれる商品の殆どは瞬発的に売れないかわりに、地味にずっと売れ続ける商品なので、発売から何ヶ月かたってもお店には新品で品揃えされていて売れたら、すぐに補充され、その商品もまた売れ、また補充、そういう売れ方をします。
このような商品は週に10本以上も新作が発売される状況で週だけの集計ではTOP30等のランキングには入っていませんが、地味にコンスタントに売れ続け結果的にトータルでは意外なほど売れている、という事が多いのです。
毎週TOP30の売れ行きを見ていて、ゲームの売れ筋を知っているつもりになっている開発者と、お店でランキングには入らない定番商品の売れ行きを知っている人の間では、「本当に売れているもの」の認識がものすごく違ったりするわけです。
また、ランキングで初週だけランクインするような短期間で量が売れる商品は同時に値崩れの可能性も高く、中古でも値段が低かったりするので、お店にとっては商材としてはあまり美味しいものではなかったりするのです。
僕のポリシーは「永く愛される商品を作る」事にあります。永く売れ続ける商品が結局はお客様のためにも小売店のためにもメーカーのためにもなるからです。
過去記事:永く愛されるゲームを作る
その視点からいえば、実は「ランキングには載ってこないけど、地味に売れ続ける商品」の発見と、それを誰が買っていて、何故売れ続けているのか、の分析が実は大切なのだと考えています。
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この記事の所要時間: 約 2分50秒 Tweet 今はPOSというシステムのおかげで、自分の席に座っていても商品の売上が簡単にわかります。例えばゲームであれば、発売日の翌日の夕方には全国の発売日当日の売上の速報が出ますし […]
[続きを読む]今はPOSというシステムのおかげで、自分の席に座っていても商品の売上が簡単にわかります。例えばゲームであれば、発売日の翌日の夕方には全国の発売日当日の売上の速報が出ますし、日曜日までの売上の集計は、翌水曜日に本数も含めたランキングの集計結果が出ます。
この便利なシステムのおかげで、これを見ていれば売れ行きがわかるし市場動向もわかるので、特に開発の人には実際にお店には足を運ぶ必要性をあまり感じていない人が多いのですが、現場を見ないととんでもない勘違いをしてしまう事になりかねません。
一つ実例を挙げましょう。これは僕がゲームズマーヤに実際に立っている時に起こった事です。
年末に発売されて、そこそこ期待されたあるタイトルAが、発売してみたらまったく売れず、という事がありました。
僕がレジの中に立っていたら、マーヤの店長に「中村さん、その足元にある箱の中に何本Aのソフトが残ってますか?」と聞かれました。ざっと50本。奥にはさらに同じ大きさの箱が見えます。「それ、全部で幾らになると思います?」一本仮に5000円だとして、25万円。奥にあるのを合わせれば50万円…
もちろん全部綺麗に売れれば現金になり、多少の儲けが出るでしょう。しかし、売れない限りは在庫。単なる邪魔なお荷物です。自分がこの商売をしていると思ったら、本当にゾッとします。
以前にもお話した通り、お店は現金商売ですから、在庫をなんとかして売って現金に変えなければ次の商品を仕入れる事もできません。
過去記事:厳しい新品ゲームソフトビジネス
結局そのタイトルは、僕がマーヤに足を運ぶ度に値段が下げられていきました。しかし、在庫はなかなか減らない様子でした。
ところが年明けた後に、会社で商品の週販集計結果のランキングを見ると、その売れずに困っていたタイトルAの売上が伸びていました。不思議に思いながらマーヤに足を運ぶと、そのタイトルAの値段は1500円(元の定価7000円位)となっていました。
そのタイトルAを手にとっていると、店長は「その値段にしたらようやく動き出しましたよ(売れ始めましたよ、という意味)」と教えてくれました。
その後、近所のゲームショップ、大手家電量販店等を見て回りましたが、軒並みマーヤと同じ位かそれ以下の値段で投げ売りされていました。年末商戦にまったく動かなかったので、どこも在庫を処分するために大幅に値下げして売っていたのです。
売上の集計では、本数しか出ませんから、捨て値で投げ売りされたのが売れても1本売れた、とカウントされます。
会社に戻って、値下げされている事を伏せて、まわりの数名に年明けに売上が伸びている理由を聞いたら、「高校生がお年玉をもらって年明けに買ったのではないか」とか「製品の中身がよいという口コミが広がり始めたので売れ出したのでは」といった事を言う人が多かったのです。
これは一例ですが、現場を見ないで、机の上で数字とデータだけ見ていればわかる、というのは大変危険な発想です。確かに、一部の現象だけを見て判断する事も危険ですが、現場を見ないで机の上でデータを見るだけで判断する事は本当の理由を掴めず、大きな判断ミスの原因にもつながりかねません。
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この記事の所要時間: 約 1分27秒 Tweet 個人的には「業界」という言葉を使うのには注意をする必要があると思っています。 「XX業界」という言葉を使う時、人は無意識に「業界の外」「業界の内」を区別してしまっています […]
[続きを読む]個人的には「業界」という言葉を使うのには注意をする必要があると思っています。
「XX業界」という言葉を使う時、人は無意識に「業界の外」「業界の内」を区別してしまっています。
「区別」した結果、多くの場合「内」しか見ない(外は無視する)、という事をするのです。
「業界」を区別しないと、確かに考慮しなければいけない事が多くなって困る事も確かにあります。
(リアルに言うと業界団体を作ってルールを決めよう、と思った時、どこまで声をかけるのか等)
しかし、どちらかというと業界を区別するのは「売る側」「作る側」の理由になっているのではないでしょうか。
この事が消費者の視点では「この商品はこうなってるのが普通なのに、こちらの商品は何故皆不便なんだろう」という不都合に繋がっている事が多くあるのではないかと僕自身は思っています。
以前にゲームのパッケージの表に「帯」をつけるというアイデアを「もじぴったん」でやった話は「書籍業界の常識」をゲームに応用した例です。
過去記事:自分の業界以外のアイデアを盗む
会社に入って、段々その業界に慣れてくると、知らない間に「業界メガネ」をかけてしまい、その業界の外に転がっている宝石(チャンス)に気づかなくなるものです。
僕自身が最近、学ぶべき事が多いと思うのは「食」に関する業界です。
「書籍」も「食」も「ゲーム業界」からは遠いような気がしますが、「業界メガネ」を外してみるとその歴史が古い業界には実は宝石がゴロゴロしているのが見えてくると思います。
これからも、一見ゲームとは関係なさそうに見える業界の工夫で、実は役立つ事を紹介していければと思っています。
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この記事の所要時間: 約 1分38秒 Tweet 以前「小売店は『発売前』にコーナー展開を決める」という記事を書きました。 過去記事:小売店は『発売前に』コーナー展開を決める これは言い換えれば、「小売店は発売前に既に、 […]
[続きを読む]以前「小売店は『発売前』にコーナー展開を決める」という記事を書きました。
過去記事:小売店は『発売前に』コーナー展開を決める
これは言い換えれば、「小売店は発売前に既に、どのゲームソフトがどれだけ売れるかを判断している」という事です。
ゲームズマーヤで働かせて頂いていた時に、秋谷店長に「どのゲームソフトが売れる、と何故発売前にわかるのですか?」という質問をしてみたところ、
「買うお客さまの顔が思い浮かぶかどうか、ですね」
と即答されました。
秋谷店長のすごい所は、以前にもお話したと思うのですが、本当にお店に来るお客さまの事をよく覚えている事です。
過去記事:僕がゲームショップで働こうと思った訳
なので、あるタイトルが発売される、と聞いた時に「ああ、XXさんと△△さん、□□さんは確実に買うし、○○さんと●●君には次に来店された時にお知らせして予約をお勧めしよう」というのが「具体的に」思い浮かぶのだそうです。
逆に、売れない、と思うのは、誰が買うのか想像できない商品なんだともおっしゃっていました。
実は、その「買う人の顔が思い浮かぶ」言葉を聞いたのは初めてではありませんでした。
あるヒット商品を何本も生み出しているプロデューサーの方が、沢山ある企画のうち、どれを進めるかを決めるかを決める決め手になるのは、
「買うお客さまの顔が思い浮かぶかどうか」
だと話してくれた事があったのです。
その方は同時に売れていく商品は「買った後に、どんなシーンで、どんなふうに遊ぶのかも想像ができる」と言っていました。
プロデューサーとして何年も働いてきて、「お客さまの顔が思い浮かぶ」という事の意味は今ははっきり分かります。
今、(ゲームソフトに限らず)企画書を作っているのであれば、「お客さまの顔がはっきりと思い浮かぶか」を一度よく考えてみるといいと思います。もし、はっきり思い浮かばなかったら何かが間違ってると考えてよいのです。
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この記事の所要時間: 約 2分33秒 Tweet パッケージで売られている家庭用ゲームソフトを開発している人が、果たしてこのブログでこれまで述べてきたような流通や小売店のニーズまで知る必要があるのか、という事を疑問に思う […]
[続きを読む]パッケージで売られている家庭用ゲームソフトを開発している人が、果たしてこのブログでこれまで述べてきたような流通や小売店のニーズまで知る必要があるのか、という事を疑問に思う現役のゲーム開発者の方もいるかもしれません。
実際のところ、ゲーム開発で企画職、ゲームデザイナーという職で働いていつつも、このブログで取り上げるような小売店や流通の事情、背景について殆ど知らない人は多いと思います。
僕自身も、かつてはそうだった訳です。
おそらくゲーム開発を行う会社や部署で働いていても、会社が積極的にそのような事を教えてくれたり、学ばせる事を積極的にはしていない、というのが現状ではないでしょうか。もちろん、一部の組織では重要視している所もあるでしょうが、多くのゲーム開発をする人達には、それよりも時が経つにつれて高度化する技術についていく事を重視する、という事が現場の実態ではないかと思っています。
しかしながら、あえて自分の経験から言えば、「上流」であるゲーム開発者だからこそ、小売店のニーズを知る必要があるのです。
小売店のニーズの背景の殆どは「お客さま(消費者)」の事情・背景・ニーズに由来しています。
お店の方は直接「お客さま」の顔を見て商売をしているからこそ、お客様のニーズと商品との「ズレ」を感じ、「上流」であるゲーム開発に「不満」を覚える訳です。
ゲームを開発する人だって、ちゃんとお客さまに喜んで買って頂いて作ったゲームを楽しんでもらいたいのなら、そこを抑えておかないと、買ってももらえず、苦労してゲームを開発した意味がなかったという事になりかねないのです。
『それはプロデューサーとか売る人の仕事で俺らの仕事じゃない』と思う人もプロとして本当にお客様に楽しんでもらえる商品を作りたいのなら、そこも頭の片隅には入れて仕事をするべきだと中村は思っています。
ゲーム業界の流通事情について書かれた本は、知る限りあまりありませんが、「デジタルゲームの教科書」には、家庭用ゲームソフトだけでなく、広くデジタルゲーム業界の仕組みについて書かれています。
厚めの書籍なので、一人一冊、とはいいませんが、いつでも見られるように、組織で1冊位はあって、自分がいる業界の仕組み(流通、利益構造やその歴史的な背景)などはこの業界に関わるならば一通り読んで知っておいて損はないと思います。
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iPad向けの電子書籍としても発売されています。
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この記事の所要時間: 約 2分42秒 Tweet ゲームの売り文句の話は、以前に紹介した平林さんの記事にありましたので、そちらも見て頂きたいと思うのですが、「スゴイのかもしれないけど、意味がわからない」「難しい表現でカッ […]
[続きを読む]ゲームの売り文句の話は、以前に紹介した平林さんの記事にありましたので、そちらも見て頂きたいと思うのですが、「スゴイのかもしれないけど、意味がわからない」「難しい表現でカッコいいって感じてるのこれ書いてる人だけじゃない?」「で、結局このゲームは何ゲーなの?」みたいになりがちです。
過去記事:紹介:ゲームの文章術(GameBusiness.jp)
ひとまず、知らない人が読んで「理解できる」「少なくともどんなゲームか想像できる」ようにパッケージの裏面の説明などが書いてある例は、パッケージゲームでは実は珍しいのではないかと思います。
そういうコピーをつけてしまうと、せっかく新しい魅力的なゲームを作ったとしてもお客さまに伝わらず購入してもらえない事になってしまいます。
過去記事:お客様は理解できないものは買わない
これが(表現のツメが)「甘い」言葉です。
具体的に、実は僕自身も失敗した事で、これだけは言える事があります。
今までにない、新しいゲームを作ろうとして、いざ売るという段階になった時、その商品に
- 新感覚アクションゲーム!
- 新感覚RPG。
みたいなコピーをつけてしまいがちなのですが、あえて自分の経験から言うと「新感覚」という言葉はゲームなどの商品において使ってはいけない「NGワード」なのです。
実は、もじぴったんの最初の家庭用商品であるPS2版、GBA版は、まさに「新感覚パズルゲーム」と謳ってしまっていました。
ですので「新感覚!」と言いたくなる側の気持ちはよくわかります。
何故なら、面白さとか楽しさという感覚は言葉では多くの場合うまく伝えにくいからです。
今までにない楽しさとか面白さを持つ商品ができた、でもうまく表現できず、「新感覚」という言葉を使ってしまいがちなのです。
もじぴったんも、面白い、今までにない感覚の面白さがあるパズルゲームである事は間違いなかったのですが、どう伝えていいかわからず、結局「新感覚パズルゲーム」という表現を使ってしまいました。
しかし、言葉では魅力が伝わりにくいからこそ、お客様にとっては曖昧でなにがいいのか、新しいのかわかりにくい「新感覚」という言葉は使わず、「具体的にどういう気持ちいい快の感覚であるのか」「その商品の他にはない感覚的なよさを具体的に言葉にするとどういうことか」を考えてキャッチコピーを考えて、お客さまに具体的にどうよいのかをイメージしてもらう必要があるのです。
もじぴったんの場合、後の調査で商品を認知していないお客様にPS2版の最初のパッケージを見ていただいた時にこの事がハッキリわかったので、その後のベスト版発売時には「知的好奇心くすぐり系パズルゲーム」(後に「知的好奇心くすぐるパズルゲーム)という表現に改めています。
もし、ゲームショップの店頭によく行く人なら、色んなパッケージの裏面を手にとって見てください。「新感覚XXXXゲーム!」と謳ってるゲームは驚くほど沢山あるのが現状です。
もし、パッケージの売り文句やキャッチコピーを考える立場にある人なら、新感覚という言葉を使いそうになったら、ちょっと待てよ、と思って欲しいと思います。
この詳しい理由についてはまた別の記事でお伝えしようかと思います。
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この記事の所要時間: 約 1分45秒 Tweet 前回のエントリーで、「店頭はメディアである」というお話をしました。 過去記事:店頭はメディアである ある意味、店頭がメディアとして最強であるのは、 「欲しいと思ったら、そ […]
[続きを読む]前回のエントリーで、「店頭はメディアである」というお話をしました。

ある意味、店頭がメディアとして最強であるのは、
「欲しいと思ったら、その場で買える」
事です。
他のメディアでは「興味を持たせる」「欲しくなる」事はある程度できても、その場で「買う」所まではできません。
( ある意味 Amazon等の通販はその意味で強いですね。あれもいわばネット上の店頭になるわけです。)
お客さまは、ある商品に興味を持って来店されたとしても、「絶対に買う」と決めて来る人ばかりではないのです。言い換えると、お客さまには来店までは買うかどうかの「迷い」があるわけです。
ですから、店頭では、そんなお客さまにとって「買おう!」という気持ちに「背中を押す」情報があるかどうかで売れ行きが変わってくるのです。
ゲームズマーヤで店頭に立たせて頂いていたのは殆どは「木曜日(多くのソフトの発売日)」と「土曜日」でした。
発売日に来店されるお客さまは、確かに指名買いで、来店してすぐに購入、というお客さまが多い印象です。
しかし、発売日に来店されるお客さまの中でも、何度もパッケージを見直したり、他のソフトもチェックしたり、店頭で流れているビデオをじっくり見たりした後に、パッケージを手にとってレジに持ってくる、というお客さまも多いのです。
週末に来店されるお客さまは、その傾向がより顕著のように思います。
お客さまとしても、「じっくり考える」時間も含めて土日に来よう、という心理が働くのかもしれません。
あなたがもしゲームソフトのプロデューサーだったとしたら、例えばパッケージがちゃんとお客様にとって「背中を押す」ものになっているかどうかをじっくりチェックしてみるべきだと思います。
迷っているお客様は「背中を押して欲しい」のです。
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この記事の所要時間: 約 2分25秒 Tweet 皆さん、いわゆる携帯ゲーム機、据え置きゲーム機用のパッケージゲームソフトは、年間に何タイトルくらい発売されていると思いますか? 僕が会社を辞める前の状態しか正確なところは […]
[続きを読む]皆さん、いわゆる携帯ゲーム機、据え置きゲーム機用のパッケージゲームソフトは、年間に何タイトルくらい発売されていると思いますか?
僕が会社を辞める前の状態しか正確なところはわかりませんが、
年間およそ 1,000 タイトル
が発売されています。
1年は52週ですから、だいたい1週間に20タイトルが発売されている計算になります。
(現実には週によってもっと偏ります。)
小売店としては、「買ってくれるお客様がいる限り」出来る限り品揃えを多くしてお客様の期待に応えたい、と考えます。新作を買いに来てくれたお客様に「すみません、当店では扱っておりません」とは簡単に言いたくはないのがお店の方の気持ちではないでしょうか。
しかし「売れないものは売れるようにしない小売店の心理」という記事でもお伝えした通り、物理的なスペースの問題が実店舗ではどうしてもつきまといます。商品を陳列する棚のスペースは有限なのです。
ですから、次々発売される新作タイトルを扱うのと同時に、発売から時間がたった商品は残すものと、残さないものに分けていく必要性に迫られます。
では、どんな商品は残し、どんな商品の扱いを止めるのでしょうか?
一時期、DSの脳トレが大ブームになり、その後似たような脳トレ系のゲームが各メーカーから乱発される事になりました。
発売からしばらく立って、ブームが落ち着いてきた後、ではお店が残すソフトは何かというと、おそらく任天堂から発売された(元祖の)「脳を鍛える大人のDSトレーニング」になるのです。
脳トレ系の棚が他のカテゴリーの棚の幅が増えてきて、棚が手狭になっていくにつれ、いわゆる後発の3番煎じ、2番煎じといった商品は、お店は扱いをやめていくのです。特に発売から時間がたった後は、そういったソフトは売上自体も「元祖の商品」に比べてかなり落ちるケースが殆どです。ですから結局、一番売上のよい「元祖の商品」を残して、他のソフトの取り扱いをやめていく事になります。
脳トレ、で例を挙げましたが、これは他のカテゴリーの商品でも同じ事が言えます。
また、同じ事はゲームに限らず、実店舗、特にスペースが限られた店舗での小売業一般に言える事です。
このブログの「定番商品になる条件とは 」という記事で、ゲームズマーヤの秋谷店長が言った言葉、
「定番商品は、他に換えが効かない商品。お客様にとってはこれしかない、という商品なんですよ。」
というのは、つまり、2番煎じ、3番煎じの商品ではない商品が欲しい、それが結局定番商品としてお店は長期に扱い、売れ続ける商品になるという事なのだと僕は理解しています。
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この記事の所要時間: 約 2分2秒 Tweet 中古が売れれば新品も売れる、という話を以前の記事で行いました。 過去記事:中古が売れれば新品も売れる その一端の例になるかもしれない話をしようと思います。 僕が、あるゲーム […]
[続きを読む]中古が売れれば新品も売れる、という話を以前の記事で行いました。
その一端の例になるかもしれない話をしようと思います。
僕が、あるゲーム専門店のチェーン店に入った時の事です。
そのお店は店自体は比較的小さく棚も決して広いとはいえません。
扱っているのは中古がメイン。ゲーム専門店ですが、DVDソフトの中古も扱っています。
新作・準新作のコーナーに新品で販売するゲームのパッケージが置いてあるのですが、中古も新品も両方は置けないので、同じパッケージに新品と中古の価格が書いてあります。
そして、同時に中古の買取価格も、パッケージだったり、パッケージ側のPOPで書いてあります。
(中古販売をメインにしているお店は、発売と同時に買取価格を提示してある事が多いです)
見て回ってるうち、発売から1週~2週程度たっているあるゲームソフトの販売価格と買取価格が、
(新品)販売価格:4,800円
(中古)買取価格:4,300円
のようになっていたのです。これにはちょっと驚きました(中古販売価格は多分この二つの数字の間になるのだと思います)。
もちろん、新品が同じ値段帯の他のソフトの買取価格はずっと低いのです。
このソフトは発売後、口コミ等の効果もあって品薄状態がその後もしばらく続いていました。
お店としては、人気で殆ど買取がこないので、買取価格を上げて在庫を確保しようとしていたのかもしれません。
新品販売価格と中古買取価格の差が少ないという事は、お客様の目線で見ると、「欲しいけど買うか迷ってたが、遊んでダメだったら売りに来ればよいかも。買ってみるか」という心理が働く可能性があります。
逆に、中古の買取価格がすごく低くて、新品で買うより中古のほうがずっとお得な価格だったら、新品を買うのをやめて、中古を買ってしまうかもしれません。
多くのゲーム専門店では中古と新品を併売していて、店舗の広さによっては同じ棚で中古と新品を売っているケースが多々あるわけです。
そういう場合は特に、中古が売れていく事が新品も売れていく事に繋がる可能性が高くなるように考えています。
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[続きを読む]前回の記事で、小売店の方は「売れるモノを売れるように扱い、売れないものは売れるようにはしない」という事を書きました。
ここで一つ大事な事は、小売店は「発売前」にコーナー展開、つまり、どのタイトルを一番プッシュするかを決めるという事です。
プッシュするタイトルの場合、予約が始まる数ヶ月前から店内で目立つように展開します。
最近は予約専用のダミーパッケージ(注:実際に商品は入っていないディスプレイ用のパッケージ)があって目立つ場所に並べて予約を勧めたりします。
当然ですが、発売日の開店時にはその時の1押しタイトルのコーナーはできあがっています。
実際にお店で「売れるか売れないか」は大きくお店の取扱い方によって違い、それは「発売前に」もう勝負が決まっています。
ゲームの開発者は、「ゲームの中身がいかに面白いか、楽しいかどうか」でゲームの売れ行きが決まるように錯覚しますが、少なくとも発売すぐにお店が「売れるように」お店作りをしてくれるかどうかは、発売前に決まってる事をはっきり分かっている必要があります。
当然ですが、お店の人も力を入れるタイトルは「中身の出来」は勿論気にしています。
ですが、「売れそうにない」と思っているタイトルは「中身の出来」は同じようには気にしたりしない事を理解しておく必要があります。
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この記事の所要時間: 約 2分41秒 Tweet 小売店の方や関係者とお話させて頂いた後、プロデューサーとして知っているべき事を知らない事を痛感したので、無理にお願いしてゲームズマーヤで店員として働かせていただく事になり […]
[続きを読む]小売店の方や関係者とお話させて頂いた後、プロデューサーとして知っているべき事を知らない事を痛感したので、無理にお願いしてゲームズマーヤで店員として働かせていただく事になりました。
実のところ、一筋縄では行かなかったのですが、なんとか関係各所を説得して3ヶ月間、週に2回(木曜日と土曜日と記憶しています)、お店に立ってお手伝いをしつつ、色々と学ばせていただきました。
本当に貴重な体験で、ゲームズマーヤの秋谷さんはもちろん、色々と取り計らって頂いた方々に大変感謝しています。
さて、その機会に学んだ事は本当に沢山あるのですが、少しづつでも伝えていければと思います。多少情報が古い部分はあると思いますが、おそらく、今でも通用すると思われる事を中心にお伝えしようと思います。
さて、毎週通うようになって、まず大変だなと思ったのは、発売されるソフトは毎週変わる訳ですから、ほぼ毎週お店の模様替えをしている事です。
お店としては一番売れる、売れて欲しいソフトをお店で一番目立つ所に、目立つように置きます。そういうソフトは店頭販促物(メーカーから配布されるポスター、映像用DVD、POPと呼ばれる印刷物等)を使って、なるべくお客様の目を引くようにします。
しかし、ほぼ毎週新しいソフトが発売されるので、全てではないですが、毎週コーナー毎の場所の入れ替えをしたり、撤去したり、新設したりしています。
お店には物理的なスペースの制約がありますし、お店の中で多くの人に目が止まる「一等地」のスペースはさらに狭いのです。
目立つ場所に複数本の展示をするよりは、一番売れるものをドーンと置いたほうが目立つし、結果的にはトータルの売上は上がります。
なので、逆に売れない、とお店の人が思う商品は仕入れたとしてもあまり目立たない所へ置かれる事になります。そもそも、売れないと初めから分かる商品はそもそも「仕入れない」事も多い訳です。
(お店が1本も仕入れない事を俗に「ゼロ発注」といいます。業界の人なら聞いた事があるかもしれません)
これはほぼ、どのような小売業にも言える事ですが、小売店は一番売れる商品が一番売れるようにお店づくりをします。
売れないソフトをどうにかして売ろうとする努力をするのであれば、同じ労力を、売れるソフトがより売れるようにしたほうがお店としては売上利益をあげられるのです。
結果的に、売れるものはより売れ、売れないものはトコトン売れない、という状況が出来るのです。
ゲームを作っている立場からだと、何故自分たちの作ったゲームはお店でいいところに置いてくれないのか、せめて他と同等に扱って欲しい、と思ったりもするかもしれませんが、小売店からすれば「売れるモノを一番売れるようにする」事は当然の心理なのです。
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[続きを読む]皆さんは見たい映画のDVD( or Blu-lay )を「買う」派ですか?「レンタル」する派ですか?
映画のDVDを「買う」人もいるとは思いますが、おそらくですが、どちらかといえば映画のDVDは「レンタル」する人のほうが多数なのではないでしょうか。
その理由は何故でしょうか?
映画DVDを買うのではなくレンタルで利用する、大きな理由の一つは「同じ映画は1度見ればいい、そんなに何度も見ない」という事なのではないかなと思います。何度も見たりはしないので、「買う」よりはお得という感覚です。
でも、同じ映画のDVDでも「買うほうがお得」なDVDもあるんです。
それは、例えば小さい子供を持つ親にとっての「子供に見せるためのビデオ」のDVDです。
小さい子供を持ってる親だと分かると思いますが「アンパンマン」とか「ウルトラマン」、ディズニーの映画なんかは、本当に何度も見せるはめになるので、レンタルではなく「買う」事を選びます。
いや、本当、DVDがすり切れちゃう位何度も見るわけです。
子供が「同じモノを」見たがる、というのはもちろんあるわけですが、親としては子供に「いつもの」DVDを見せている間は子供はおとなしくしているので、他に家事が出来たりする訳です。
子供の直接の世話から離れて家事がしたい、自分の事がしたい、と思う瞬間は、何度も何度もあるので、親からしても、手放せない訳です。
ここではあえて、レンタルの仕組みがあるビデオ(DVD)の話をしました。
ゲームソフトにはレンタルという仕組みは(国内では)ありません。
考えて見て欲しいのは、新品でゲームを購入した後、すぐ売りに行こうと思うのは「一度遊んだらもういい」からレンタルしたほうがいいと思うタイプなのか、「何度も使う」から買ったほうがいいと思うタイプのどちらなのか、という事です(もちろん人によってその判断は異なりますが)。
なかなか小売店からするとなかなか中古で売りに来てくれないタイプの商品と、中古が山のように来て困るタイプの商品がある訳です。
当然「中古が山のように来て困るタイプの商品」は、買い取り価格を下げて、中古の販売価格も下げ新品はリピート注文を控える事になります。
逆に中古がなかなか買い取りに来ずに、でも、買いたいというお客様は来る商品なら「新品で品揃えをしておこう」と小売店では考えるでしょう。
その違いは何故か?を考えると、少し「中古でも売れる」→「新品が長期で売れていく」の理由が分かるかもしれません。
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この記事の所要時間: 約 1分38秒 Tweet 前回の記事で、「中古でも売れていくゲームソフトは新品でも売れる」という事をお話しました。 過去記事:中古が売れれば新品も売れる 色々なしがらみもあって、ゲームメーカーが中 […]
[続きを読む]前回の記事で、「中古でも売れていくゲームソフトは新品でも売れる」という事をお話しました。
色々なしがらみもあって、ゲームメーカーが中古の流通を支援するような話は聞いた事がありません。中古が売れれば新品が売れなくなる、というのが大きな理由なのでしょうが、実は僕はそうではなく、中古でも売れていくゲームが新品でも長期間売れ続けるというのが実際なのではないかと考えています。
ではゲームソフトが中古でも売れる要件にはどのようなものがあるのでしょうか。
その要件にはいくつかあると思いますが、僕が持っている仮説をお話しようと思います。
中古でも売れていく条件の一つはパッケージで商品の魅力がよくアピールできている事だと考えます。
新品ゲームソフトが発売される時は広告宣伝等もメーカーが行いますし、店頭販促物(ex.ポスター、POP、店頭ビデオ等)も積極的に流します。
しかしながら、それらの販促物が中古ソフトで使われる事はまずありません。
店頭に何かないか探しに来たお客様が手にとって購入に到るまでに店頭で与えられる情報は、中古の場合、ほぼパッケージしかないといえます。
つまり、中古ゲームソフトが売れていくためには「パッケージ」の出来が大きな要因になるという事です。
これは新品ゲームソフトで、発売から時間がたった後にも同じ事がいえます。新品のゲームソフトも発売から暫くたった後に売れ続けるためにはパッケージの力が必要なのです。
ゲームズマーヤで働かせて頂きながら、発売から時間が経った後にも売れていくために必要な条件を考えると、最終的に販促物的に残るものはパッケージしかない事に気がつきました。
後に「もじぴったん」シリーズは「発売から時間がたっても売れる」「中古でも売れる」ためにパッケージについてはかなりコダワリを持ってデザインをしています。
(この話はまた近日詳しくできればと思っています)
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この記事の所要時間: 約 1分43秒 Tweet ゲームソフトの店頭での売れ方のお話です。 過去エントリー:僕がゲームショップで働こうと思った訳 過去エントリー:厳しい新品ゲームソフトビジネス 過去エントリー:定番商品の […]
[続きを読む]ゲームソフトの店頭での売れ方のお話です。
新品ゲームソフトの売れ行きは中古ソフトの売れ行きとも強い関係があります。
今、殆どのゲーム専門店と呼ばれるお店は新品ゲームソフトと中古ソフトを併売しています。
発売時期の短期間しか売れない商品の典型的なパターンは、
- 発売後短期でパッと売れる
- その後新品の売れ行きがペースダウンする
- 中古が沢山同時期に買取が来る(同時期に購入されるのでクリアされて買取に来る時期も重なる)
- 中古の在庫が過剰になるので買取価格を下げ、販売価格も下げる
- 中古と新品の価格差が大きくなるのでより新品が売れない
- 新品の在庫がなくなれば(あるいは処分価格にしてなくして)再注文しない
というようなパターンです。
お店にとって品揃えは重要ですが、中古ソフトで沢山在庫がある商品は、新品の在庫が切れてもリピート(再注文)する事はほぼありません。価格差がある上に、売りにくい新品よりも中古で品揃えをすればいいという考えになります。
反対に、定番的に長く売れる商品は中古でも売れ行きがよいケースが多く、また中古の買取も少ないパターンが多いため、中古では常に在庫を揃えられないという事が起こります。
そういう中古商品は、お店でも値段は新品とあまり変わらない値付けになったりします。中古で在庫を確保したい場合でも、お店は買取価格を上げてきますから、新品との価格差が狭まってきます。そういう場合、近隣の新品で置いてあるお店で購入される確率があがるので、結果的に新品が売れていきます。
ですから、中古でも置いておけば売れる定番商品の場合、新品でも長期で再注文されて売れ続ける、というサイクルとなるのです。
では中古が売れる条件というのはどういう事でしょうか。
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この記事の所要時間: 約 1分34秒 Tweet ゲームショップは「定番商品」を求めているという話をしました。 過去エントリー:定番商品の必要性 定番商品とは、発売からしばらくたっても長く売れ続ける商品です。 ではどうい […]
[続きを読む]ゲームショップは「定番商品」を求めているという話をしました。
定番商品とは、発売からしばらくたっても長く売れ続ける商品です。
ではどういう商品が「定番」となるのでしょうか。
ある商品が定番になる条件にはいくつかあると思います。
ゲームズマーヤの秋谷店長は、そのひとつのヒントを僕にくれました。
「定番商品は、他に換えがきかない商品。お客様にとってはこれしかない、という商品なんですよ。」
秋谷さんが、僕に定番商品の話をしてくれたのは、一つには「もじぴったん」は定番商品に成りうる可能性を持っていたから、と話してくれました。
実際、僕がゲームズマーヤを訪れた時はPS2,GBAのもじぴったんの発売から数ヶ月後でしたが、どちらも新品で品揃えしていただいていました。
お店が定番商品を求めているという話は、僕自身が目指した方向性とズレていなかった事を再認識させる事になりました。
僕にとっては初めての家庭用ゲームソフトである「もじぴったん」PS2,GBAを作り始めた頃、ゲームが発売から3ヶ月経てば店頭からなくなるのが常識だった事に疑問を感じていたからです。
近いカテゴリーなのに、おもちゃ売り場では「人生ゲーム」等、何十年もお店に定番として並んでいる定番商品があるのに、ゲームではそれは非常識、という事が何か変だ、と思っていて、人生ゲームのように長く愛されて売れ続ける商品がゲームでも作れないかと思っていたからです。少なくとも発売から三ヶ月後にはどのお店にも置いてないのが普通、になるのはおかしい、と思っていたのです。
後に、秋谷店長にお願いしてゲームズマーヤの店頭に立たせていただいて、実際定番商品になるための条件は何か、という事について色々と学ぶことが出来ました。
その条件となるいくつかの要素についてまた伝えていこうと思います。
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この記事の所要時間: 約 1分26秒 Tweet 新品ゲームソフトの商売は小売店にとって非常に難しいという話の続きです。 過去エントリー:僕がゲームショップで働こうと思った訳 過去エントリー:厳しい新品ゲームソフトビジネ […]
[続きを読む]新品ゲームソフトの商売は小売店にとって非常に難しいという話の続きです。
以前のエントリーで述べたように、小売店は仕入れたゲームソフトが在庫になって値下げして売るしかない状況になると沢山売れたとしても利益が出ないのです。
そして自分のお店だけでなく、他店舗の在庫状況も実は気にしなければいけません。
仮に他店舗で在庫が多い状態であれば、自分の店舗が値下げしなくても値下げせざるを得なくなるからです。
一般の人はあまり知らないと思いますが、業者、業界向けのランキングの情報には「消化率」という項目があります。これは小売店が入荷した本数のうち、どのくらいが実際にお客様に売れたか、という割合を表しています。
タイトルにもよりますが、例えば発売から1週、2週たってこの消化率が低い(入荷本数は多いのにお客様に売れた本数は少ない)場合には、全国的に値崩れの可能性が高くなります。特に入荷本数が多くて、消化率が低く、定番的に売れる事が予想し辛い場合、値崩れ、在庫処分の可能性が高くなるわけです。
ですから、お店の人はあるタイトルが全国で何本売れた、その週で何位だった、という情報よりも「消化率」の事を非常に気にしています。
一概には言えませんが、消化率が低く在庫処分されるタイトルというのは、お店にとっては「期待していたが、期待はずれだった」タイトルという事が言えると思います。
期待される事は、メーカーにとっては悪い事ではありませんが、結局その期待に応えられなければ、信頼を失って、次回からは期待されなくなってしまうのです。
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前回からさらに続きです。
前回のエントリーで述べたように、新品ゲームソフトの販売というのは、小売店にとっては非常に利益を出す事が難しい商売になっています。
そんな中でも、小売店にとって一番ありがたいゲームソフトはどんなものなのか。
僕がゲームズマーヤに初めて行った時に、秋谷店長は僕にこういいました。
「お店が求めているのは【定番商品】なんです。定番商品というのは、置いておけば発売から時間がたっていても売れて、お店は切らさずリピート(再発注)して常に品揃えしておくような商品。そういう商品をつくって欲しいんです。」
前回のエントリーで触れましたが、発売から短期間しか売れない商品は、仮に沢山売れたとしても売れ残ってしまえばお店にとっては利益にならない可能性が高い訳です。それよりも、発売から時間がたっても、長く売れ続ける定番的な商品のほうが、お店にとっては在庫になる心配が少ないため、安心して再発注でき、お店の売上、利益に貢献するわけです。
定番商品は、同時に、あまり新作で売れるソフトが発売されない時期でもお店の売上に貢献します。お店のひとつの悩みはお店の売上利益がゲームの発売スケジュールに左右されすぎる事です。
ゲームを開発している人に知ってほしい事は、全国ランキングで上位に来るような沢山売れる商品が必ずしもお店の利益には貢献していない、という事。そして、お店は長く売れ続ける「定番商品」を求めている事。逆に言えば、今発売されているゲームの殆どは定番商品になっていないという事です。
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この記事の所要時間: 約 1分57秒 Tweet 前エントリーでは僕が何故ゲームショップで働きたいと思ったかの理由をお伝えしました。 過去エントリー:僕がゲームショップで働こうと思った訳 新品ゲームソフトの販売は小売店に […]
[続きを読む]前エントリーでは僕が何故ゲームショップで働きたいと思ったかの理由をお伝えしました。
新品ゲームソフトの販売は小売店にとっては仕入れ原価が高い(定価の75%)、非常に利幅が薄く(店頭では新品ゲームソフトは少なくとも10%以上値引きされている)、かつお店が仕入れる時に買い取らないといけない(リスクは小売店が持つ)ため、利益を出すのは非常に難しいのです。
仮に20本仕入れて、1本売れ残ったとしてもお店としては利益は残らないどころか、アルバイト店員のバイト代が出せるかどうか。テナント料や電気代等の経費も考えるとお店としては利益は出ない。そんな商売なのです。
売れるまで、おいておけばいいじゃないか。
そう思う人もいるかもしれません。
しかし、在庫のソフトを売って現金化しない事には、次の月に発売されるソフトを入荷する事もできません。ですから、値下げして、損をだしても早く売ったほうがよい、という事になります。
仮に自分のお店が値下げしなかったとしても、他のお店が値下げしたら、結局のところ値下げせざるを得なくなります。
さらに問題なのは、当時の、そして今もですが、殆どの家庭用のゲームソフトは売れるのは発売からすぐの間だけで、ちょっとの期間の後はパッタリ売れなくなってしまう事です。在庫が少しでも残れば利益は飛んでしまいます。
かといって、仕入れる本数を絞りすぎると売上が上がらなくなってしまい、チャンスロスとなりますし、ある程度の本数を売らない事にはお店のテナント料、電気代やバイト代を稼ぐ事もできません。
メーカーが何十万本出荷して利益がでた、みたいな事を言っていても、お店で実際に起こっている事は仕入れた在庫が売れないために大損覚悟で価格を下げて投げ売りして、小売店はまったく儲かっていないなんて事はざらにあるのです。
(正直な所、お店が儲かったという事例のほうが少ないと思います)
僕は、そんな事も全然知らずにゲームを作っていました。
多分、業界にいる人の中でも、特に開発に携わる人でそんな事情を知らない人は少なくないだろうと思います。
実のところ色々複雑な事情があるのですが、小売店は少なくとも新品ゲームソフトの販売だけでは食べていけない、というのが実情なのです。
さて、明日以降も続きます。
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この記事の所要時間: 約 2分10秒 Tweet 僕がナムコでプロデューサーになってから最初に感じた事は、ゲームソフトを売る、という事について殆ど何も自分が知らないという事でした。 ゲームの開発をする、という意味ではそれ […]
[続きを読む]僕がナムコでプロデューサーになってから最初に感じた事は、ゲームソフトを売る、という事について殆ど何も自分が知らないという事でした。
ゲームの開発をする、という意味ではそれほど不安はなかったのですが、広告宣伝、販売、流通の仕組み、知らない事がたくさんあったわけです。
社内で色んな人に聴いてまわったけれど、結局の所、PS2,GBA版のもじぴったんを発売するまでは特にお店の実態がよく分からずじまいでした。
そんな時、ある方の紹介で東京の葛西にあるゲームズマーヤというお店の事を知りました。お店の話を聞いた後、一度お店に行ってみたい、そう思いました。
ゲームズマーヤは決して大きなゲームショップではありませんが、業界でも非常に有名なお店です。何故か。一番の理由は、店長の秋谷久子さんが、本当にすごい人だからです。
秋谷さんは、お店に来るお客様の顔も名前も、過去にどんなソフトを買って、いつ中古で売りに来たか、それだけでなく今何年生だとか、家族構成とか、恋人がいるかどうかとか、本当にあらゆる事を覚えているのです。
そしてお客様とのコミュニケーションも密で、お客様にも非常に信頼の厚いお店です。
その後、3ヶ月程、僕はゲームズマーヤで店員として立たせていただいて、その事をすごく実感しました(この時の話はまた別の機会にさせていただこうと思います)。
僕が本当にショックだったのは、それほど細かくお客様の事を分かっているゲームズマーヤでも、ゲームソフトの販売、特に新品のゲームソフトの販売ではやっていけない、という話でした。
新品のゲームソフトはお店が買取であり、利益率がそもそも低い事から、メーカーが売り逃げしてメーカーには利益が出ても、店頭では売れないソフトがあった場合、お店が損失をかぶる、赤字になる可能性が「ものすごく」高い、という事を、僕は知らずにゲームソフトの開発をしていたのです。
このあたりの数字的な話は平林和久さんのTweetがTogetterでまとめられているので、そちらを参照して頂きたいと思います。
僕は、お店の事をもっと知る必要性を感じました。
それがプロデューサーの仕事をしながら、ゲームショップに店員として立たせていただこうと思った理由です。
これから何度かに分けて、僕がお店について学んだ事を書こうと思います。
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この記事の所要時間: 約 1分56秒 Tweet 継続は力なり、といいます。 マーケティングにおいて最初の入り口となる「観察」においては特に継続する事は重要です。 単発的に観察するのでは得られない事の一つは、継続する事で […]
[続きを読む]継続は力なり、といいます。
マーケティングにおいて最初の入り口となる「観察」においては特に継続する事は重要です。
単発的に観察するのでは得られない事の一つは、継続する事で「変化」に気がつけるという事です。
同じお店を定点観測する事を例に挙げましょう。
同じお店に午前中行くのと、夕方に行くのと夜に行くのでは客層が異なったり、売れるものが違ったりします。
ゲームソフトなら発売日(多くは木曜日)に行くのと土日、他の平日に行くのとではまた全然違います。
単にお客様の層が異なるだけではないです。例えばお客様がお店に滞在している時間は曜日によってだいぶ違います。(この話はいつか詳しくお伝えしようかと思います)
お店では毎週発売される新作が違うのでコーナー展開はほぼ毎週変更しています。
お店に入ったすぐの場所等の目立つ場所で扱う商品は変わる事が多いのですが、逆に何週も変わらないでお店の目立つ位置でプッシュされるものもあります。
僕がよく行く某カメラ量販店ではお店のコーナー展開だけでなく、売り場の場所や売り場面積、導線をかなり頻繁に変えています。
例えば、扱うハード(プラットフォーム)の力の入れ方で、棚が占める面積も変わってきます。
そうそう、ゲームショップ等によくある「ワゴンセール」(違う事もあるけど、在庫処分であまり売れていないのを安く売っている)、普段はお客様がついているのを見かけませんが、ある時期はワゴンに人が群がる事も気がついたりしました。
店頭観察を継続する事、はあくまで一例です。
街ゆく人や、電車の中で人がどういう行動をしているか、といった観察も継続すればやはり「変化」に気づけるはずです。まぁ、実はあまり頻繁にせずに時間をあけて思い出したように観察をしたほうが「変化」に気づく事もありますね。
観察を繰り返していくと変化しているものや、逆に殆ど変化しないこと、繰り返されている事もあります。実は「変化」に気づくと同時にこの「変化していない」事に気がつく事も非常に重要です。
そして、その「変わった」「変わっていない」両方の理由を何故?と考えてみる事で新たな発見が生み出されます。
で、僕はどちらかというと他は変わっているのに「ずっと変わらない」ものを発見して、それをヒントにした事が多くあります。
その実例はまた今度。
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