アーケードゲーム開発のよさ(2)

On 2010年11月28日, in ブログ, by nakamura
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この記事の所要時間: 約 2分56秒 Tweet 前回のエントリーで、アーケードゲーム(ゲームセンター等に置かれるゲーム機)開発の良さについて、お客様が自分達の商品で遊ぶところを企画開発する人が直接見ることができる事を挙 […]

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この記事の所要時間: 256

前回のエントリーで、アーケードゲーム(ゲームセンター等に置かれるゲーム機)開発の良さについて、お客様が自分達の商品で遊ぶところを企画開発する人が直接見ることができる事を挙げました。

過去エントリー:アーケードゲーム開発の良さ(1)

それによって、商品を生み出す人のモチベーションが高くなる事が一つの良さだと思います。

もう一つ、今こそアーケードゲームの開発の文化の良さを見直すべきと考える理由があります。

それについて少し説明しましょう。


アーケードゲームがヒットする条件の基本は下記のような事です。

  1. 見ているだけで、最初に100円をお客様が入れたくなる事。
  2. 一度遊んだら、また100円をお客様が入れたくなる事。
  3. 日を変えてもまた繰り返し遊びたい、と思わせる事。

finalfurlong02.gif

100円で1ゲーム、というコインオペレーションの場合、おおよそ目安があって、100円1プレイ、およそ3分が適当とされていました。

長く遊べたほうが満足してもらえるかもしれませんが、ゲーム機の元を取るためには3分程度でもう一度100円を入れてプレイしてもらうというスタイルです。

この事がゲームデザインに大きな影響を与えています。

「お客様は理解できないものは買わない」というエントリーを書きましたが、最初にお客様に100円を入れてもらうためには「理解」してもらわないとダメなので、複雑でない、ルールや遊び方はすぐに理解できる事が求められました。

過去エントリー:お客さまは理解できないものは買わない

何をするゲームなのか、どういうルールなのか、どう操作すればよいのかは、100円を入れる前に理解できる必要性がありました。

同時に、プレイを始めたら、1分で面白さが分かり、3分程度でゲームが終わる頃にはもう100円を入れたくなっている、という事が求められます。

しかも、遊ぶたびに新しい発見があり、またやりたい、と思わせる必要がありました。

多くの人に遊んでもらい、なおかつ何度も遊んでもらうという事が基本です。

結果的に、シンプルで分かりやすく、すぐに面白さが伝わる上に、何度も遊びたくなる奥深さ、がゲームデザインの中心となるようになっていました。


そんなのは昔の話でしょ、と思うかもしれません。

しかし、今は例えばiPhoneのアプリのゲーム等で求められている事は同じ条件ではないかと思うわけです。

シンプルで分かりやすく、すぐに面白さが伝わる上に、何度も遊びたくなる奥深さ。

無料や100円程度のゲームがあふれている状態では、この条件を満たす事は非常に大事です。

iPhoneアプリ “Angry Birds” from Youtube

iPhoneアプリ AngryBirds ダウンロードはこちらからAngry Birds - Clickgamer.com

ルールや遊び方を理解するだけで何十分もかかっていては、仮にそれを覚えればものすごく面白かったとしても、多くの人はその前に遊ぶのを止めてしまいます。

無料のゲームがあふれている現状では、最初1分触った時点で「容量の無駄」と思い、パッと削除、そして二度と遊ばない、という事が普通になります。

家庭用ゲームの場合、アーケードとは遊ぶ時間が違うのだから、同じ事は要求されていない、と思うかもしれません。

確かに重みは多少違うかもしれませんが、僕自身は「もじぴったん」の経験からも、シンプルで奥深い、すぐに楽しさが伝わる事がヒットの要因の一つになると思っています。(詳しい話はいつか別のエントリーでするつもりです)

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アーケードゲーム開発の良さ(1)

On 2010年11月27日, in ブログ, by nakamura
DSC04230.jpg

この記事の所要時間: 約 2分5秒 Tweet 前のエントリーで商品を企画開発する人が上流、と呼ばれていてお客様から遠い存在になっている、という話をしました。 過去エントリー:ゲーム開発が「上流」と嫌みを込めて言われる訳 […]

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この記事の所要時間: 25

前のエントリーで商品を企画開発する人が上流、と呼ばれていてお客様から遠い存在になっている、という話をしました。

過去エントリー:ゲーム開発が「上流」と嫌みを込めて言われる訳

僕のナムコに入ってから後のしばらくのお仕事はアーケードゲーム(主にゲームセンター等に置かれるゲーム機)の開発の仕事でした。

その後、もじぴったんの家庭用版(PS2,GBA)の開発をきっかけに初めて家庭用ゲーム機の開発に取り組んだわけです。

その経験から感じた事は、家庭用ゲーム機向けのゲーム開発に比べて、アーケードゲームの開発のほうがよりお客様の観察をしやすかった、お客様の事を知りやすかったという事です。

ゲームセンターに行けば、実際に直接お客様が遊ぶところ(遊ばないところも!)を見ることが出来ます。

足で稼いで、色んなお店を色んな時間に見て回れば、製品の問題も、お客様が何に喜んでいるのか、それはどんなお客様なのか、という事も分かります。行動をよく見ていれば、理由もなんとなく想像できます。

製品も発売前に実際にお店に設置してテスト(ロケテスト)されてから実稼働させるのが普通です。

ロケテストの結果で製品の改良ポイントをつかんで改良しますが、実際、これによって製品の大きな問題が解決される事も少なくありません。


対して家庭用ゲーム機の場合は、お客様のゲームソフトの使用実態、遊んでいる所を直接見ることはかなり難しいです。

家庭用ゲーム機向けの仕事しかしたことがなければ、自分が開発した商品が実際にお客様に遊ばれている所を一度も見たことがない開発者のほうが実の所多いのではないかと思います。

僕は、このお客様が遊んでいる所を見られるという良さは、単純に自分たちが開発した商品の改善改良のため、というだけではないと考えています。

開発者のモチベーションは、お客様が喜んでくれている所を実際に見る事で生まれてくるものです。

それはお金に換えがたい喜びだし、その事が次の商品をもっといいものにしよう、という意欲を生むんです。

仮にお客様が狙い通りに喜ばなかったとしても、それは悔しさとなって次に繋がるでしょう。


だからアーケードがいい、といいたい訳ではありません。

家庭用ゲーム機(やそれ以外)の開発では難しいとしても、僕は商品企画者、開発者がお客様が実際に商品を使っている、遊んでいる所を見る機会を作るべきなんだと思います。

難しいなら、それこそ知恵の絞りどころだと思いますね。

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ゲーム開発が「上流」と嫌みを込めて言われる訳

On 2010年11月26日, in ブログ, by nakamura

この記事の所要時間: 約 1分34秒 Tweet プロデューサーになってから、小売店の方と直接お話ができるチャンスが何度かありました。僕としては知らない事だらけでしたから、話は本当に新鮮でした。 その最初の頃に、あるゲー […]

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この記事の所要時間: 134

プロデューサーになってから、小売店の方と直接お話ができるチャンスが何度かありました。僕としては知らない事だらけでしたから、話は本当に新鮮でした。

その最初の頃に、あるゲーム専門店を経営している方に僕が言われたのはこんなことでした。

「現場(小売店)では、ある種嫌みを込めて開発の方を『上流』というんです」

何故「上流」なのでしょうか。

川の上流から濁った水を流されたら、下流も確実に濁ってしまうように、上流の開発が売れないゲームを作って流通に流されても、下流の小売店ではどうしようもない、という意味なのだそうです。

売れないものは、残念だけどお店でどんなに努力しても売れていかない。お店としては同じ努力をするなら売れる商品がより売れるように目立たせたり、ディスプレイを作ったり、PVを流したりして仕掛けたほうが断然お店の売り上げ利益はあがる訳です。

そして、売れないものばかりを流されたら、小売店は無策、苦しくなるだけです。

そして、もう一つ、嫌みを込めて上流、という理由は、上流である「開発」が一番お客様から遠い、という事なのです。

開発者はゲームのことは自分達が一番よく知っている、と思っているかもしれませんが、直接お客様に接して、お客様の買う、買わないを直接そばで見ているお店からすればお客様の事を知らなすぎるように「上流」にいる開発者の事が見えているのだと思います。

その後も、小売店の方と直接お話ができるチャンスが何度かありましたが、その度に重要な示唆を頂きました。

言われた事を確かめるために店頭観察を続けて、知らなかった事実を沢山発見して自分達がいかにお客様から遠い所にいるかと言う事を思い知らされました。

ゲームを企画開発する僕らが、実のところ一番お客様の事を知っているのが本来の姿だと思います。

そこに大きなギャップがあると僕は考えています。

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お客様は理解できないモノは買わない

On 2010年11月25日, in ブログ, by nakamura
東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング

この記事の所要時間: 約 2分23秒 Tweet DSで脳トレが爆発的に売れてからDSのソフトのパッケージは脳トレと同じように帯がつくデザインばかりになりました。 東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 […]

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この記事の所要時間: 223

DSで脳トレが爆発的に売れてからDSのソフトのパッケージは脳トレと同じように帯がつくデザインばかりになりました。

ところがDSと似たような層が購入したと考えられるWiiのソフトだと帯をデザインに入れてパッケージ表で内容をアピールするものは殆どなくなりました。

多分発売後一番売れたWii Sportsのパッケージを真似たのでしょうね。もしくはPS2時代と同じ事をしたか。おかげでパッケージ表面だけで何のソフトか、何がウリなのか分からないソフトが増えてしまったように思います。

Wii Sports
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PS3やXbox360にいたっては、似たようなパッケージばかり。タイトルは横文字で意味不明。何語なのかも不明。そもそも読み方もよく分からないものも多数です。

Torneで地デジが録画できるならPS3買おうとゲーム売り場にやってきて、どんなゲームがあるんだろう、と棚を見にきた普通のサラリーマンを想像してみて下さい。

タイトルがなんと読むか、意味も分からないで7000円も8000円もするゲームを予備知識もないお客様が買うか、と言われたらそりゃ買わないのでは?と思う訳です。


パッケージソフトをもっとお客様に買って欲しいのなら、もっとタイトルやパッケージに気を使う(ついでに手間隙もかける)必要があるのです。

極めて当たり前ですが、お客様は理解出来ないものは買いません。

理解できない商品を店頭に並べておいて、売れないのは市場が悪い、というメーカーやパブリッシャーさんは如何なものか、と思うのですがどうでしょう。

お客様目線が当たり前にできるプロデューサーが足りていないのを残念ながら感じています。

そういうプロデューサーになれる人を育てるのが僕のこれからの役目の一つと思っています。

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ゲームソフトでのパッケージの重要性

On 2010年11月24日, in ブログ, by nakamura
ことばのパズル もじぴったん

この記事の所要時間: 約 2分16秒 Tweet パッケージのゲームソフトは、 遊んでから買う訳ではなく、買ってから遊ぶ のが基本です。 もちろん一部体験版を遊んでから購入したり、知人友人に貸してもらって遊んでから購入を […]

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この記事の所要時間: 216

パッケージのゲームソフトは、

遊んでから買う訳ではなく、買ってから遊ぶ

のが基本です。

もちろん一部体験版を遊んでから購入したり、知人友人に貸してもらって遊んでから購入を決める例もあるでしょうが、それは実のところ一部です(体験版がダウンロードで無料で配られている昨今でも、お客様は興味があるタイトルしかダウンロードしない)。

映画でいうと、映画はお金を払ってから見るわけで、映画を見てからお金を払うわけではないのと同じなわけです。


ゲームを作っている人は、そのゲームの中身の事を知りすぎています。どんなモードがあって、どう面白いかも知っています。

しかし、それはゲームを自分自身で体験しているからです。

何も知らないお客様にとっては、その商品を買うとどんないい事があるのか、どう楽しいのか、そしてお客様がそれを魅力的に感じるかで購入される可能性が初めて出てくるのです。

ゲームソフトのパッケージは、購入される場合は、殆どのケースでお客様が購入直前に見るものですし、購入を迷っている場合等には、それが購入の大きな決定用意になる事もあります。

またそれだけでなく、店頭で、知らなかったタイトルに触れるきっかけにもなるお客さまにとっては重要な情報源なのです。

ですから、パッケージで商品の魅力を購入前にちゃんと伝えられていなければ、当然だけどお客様に購入される可能性が大きく落ちてしいます。仮に遊んでさえもらえれば魅力的が伝わって、口コミでさらに売れる可能性があったかもしれなくても、それさえ潰してしまうことになります。


PS2版のもじぴったんでは、BEST版の発売時に(中身はまったく変えなかったのに)パッケージ、広告、価格を変えただけでまったく売れ行きが違いました。

デザインを変更したパッケージをお客さまが店頭で手に取られて購入に直接結びつくのも自分の目で見た僕は、家庭用パッケージソフトでのパッケージの重要性を再確認しました。


ことばのパズル もじぴったん

(発売後1年半で5万本出荷)

    ↓

ことばのパズル もじぴったん PlayStation 2 the Best

(発売後1年半で30万本出荷)

もちろん、売上が上がった効果の要因の全てがパッケージの変更によるものではありません。

しかし、いくつかの理由から、パッケージの変更が売上を大きく左右している事を僕は理解しています。

同時に多くのソフトがゲームの中身の開発は頑張っているのに、明らかにパッケージには無頓着である事は非常に残念に感じます。売れ行きを決めるのはいかに購入前に知ってもらい魅力的に感じてもらうか、だからです。

中身をいくら作り込んでも購入して遊んでもらえなければ意味がありません。

その意味でパッケージの重要性をプロデューサーは認識をする必要があります。

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お客様は何も知らないという前提で考える

On 2010年11月22日, in ブログ, by nakamura
bokuhachiisai.jpg

この記事の所要時間: 約 1分46秒 Tweet ゲームのパッケージに帯をつけるというアイデアを実行に移したきっかけになった出来事がある。 10年以上前の事だが、彼女(今の妻)を連れて、ゲームショップに行った時の話だ。 […]

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この記事の所要時間: 146

ゲームのパッケージに帯をつけるというアイデアを実行に移したきっかけになった出来事がある。


10年以上前の事だが、彼女(今の妻)を連れて、ゲームショップに行った時の話だ。

ちなみに妻はゲームにはまったく興味がなく、ゲームショップに自発的に来る事もない。

当時のPS2の棚(100以上のタイトルを展示)の前で、妻に「興味あるとかやってみたいと感じるゲームある?」と聞いてみた。

妻はうーん、と悩んだ後、「ボクは小さい」というタイトルを選んだ。しかも、だいぶ消極的に。

bokuhachiisai.jpg

棚の下の方にあって売れていそうな感じではなかったし、僕自身も一応知ってる、位のタイトルだった。

妻にどうしてこれを選んだの?と聞いてみたら、

「これ以外は、何のゲームだかさっぱり分からない。見当もつかない。」

と答えた。

改めて棚を見ると、タイトルは横文字、しかも意味がよく分からないタイトル、デザインはアニメ絵のキャラクターが勢ぞろい、的なものばかりだった。

もちろんその棚にはゲームの世界では有名なブランド、誰もが知ってるようなタイトルももちろんあった(有名すぎて白地にタイトルだけというパッケージだったけど)。

しかし唯一、このゲームだけは「小さい主人公が家の中で活躍するゲーム」とタイトルと絵で中身が理解できたから消去法的に選んだ、という事だったらしい。


僕がこの時に学んだ事は、自分は知り過ぎていて、お客様は「何も知らない」という事を前提に考えないといけないということだった。

お客様視点になる、という事の一つは「何も知らない人の立場で見たらどうか」という事である。

業界に入っていろんな事を知ってくると、実はこの「知らない人の立場になる」という事は訓練をしないと難しい。

ゲームの続編を作る時に、「前作はお客様は知っている」という前提で全部もの作りをしてしまったりするのだ。

パッケージに「前作よりXXがパワーアップ!」とかパッケージに書くけど、知らない人は何の事か分からないという事を普通にしてしまう。

自分達の作っているものがそうなっていないか、今一度見直して見てはどうだろうか。

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自分の業界以外のアイデアを盗む

On 2010年11月20日, in ブログ, by nakamura
mojipPS2pkg.jpg

この記事の所要時間: 約 2分2秒 Tweet 店頭観察はやる気さえあればすぐにできる。ここで言う「店頭」は何も自分の業界の店だけに限らない。 自分が普段買い物するコンビニ、飲食店、スーパー、書店…. 実の所 […]

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この記事の所要時間: 22

店頭観察はやる気さえあればすぐにできる。ここで言う「店頭」は何も自分の業界の店だけに限らない。

自分が普段買い物するコンビニ、飲食店、スーパー、書店….

実の所、他の業界では当たり前なのに、自分の業界では当たり前ではなく誰もやっていないアイデアを見つける事は店頭観察における発見の中でも重要な事だ。


僕は書店が好きでよく書店に行く。

ある時、書籍の場合、小説でも実用書でも、キャッチコピーや有名人の推薦文等が書いてある「帯」がある事が常識なのに、ゲームのパッケージの表面にはタイトルロゴと絵以外は何も書いていないという事に疑問を持った。

パッケージのゲームのほうが値段は高く、買わないと中身がわからない。比べて書籍は、立読みで中身が分かるにも関わらずだ。

その事がずっと引っ掛かっていたので、僕がプロデューサーになった時には、ゲームのパッケージにも帯をつけようと考えていた。

実際パッケージの制作の話になった際、紙の帯をつける事を検討したのだけれど、製造過程の問題でそれは無理、という事になった。

結局帯の代わりに印刷表面に白いスペースを確保して、デザインをお願いする事にした。

帯の部分には最初、ある方に推薦文を書いていただこうと思っていたのだが、諸事情により実現せず。困っていた時に、文章でなくイラストで魅力を伝えてはどうかという話になった。結果やくみつるさんに帯にゲームの推薦イラストを書いてもらう事になった。

結果PS2のパッケージはこんな感じになった。

mojipPS2pkg.jpg

裏話をすると、イラスト案としては、今思えばずっともじぴったんの魅力を伝える案が先にあったのだが、若気の至で、ダメだしをしてしまったのだ。やくみつるさんが試しに遊んでみたら思わず徹夜して原稿を落とす所だった、という話を聞いて感動して、そのハマリ具合を是非イラストに、とお願いした。

いや、もう恥ずかしい。

やくさん、ゴメンなさい。

その後、ウリにするキャッチコピーや、カテゴリ名をかなり長い時間をかけて練り直していたので、ベスト版発売時には以下のようなデザインになった。

mojipPS2BESTpkg.jpg

やくさん、ゴメンなさい(再)。

—–

話がそれたけど、この例は書籍業界の常識をゲーム業界に持ち込んだものだ。

同じように他の業界で売上を伸ばすために普通に行われているアイデアを持ち込む事は出来ないかを考えながら店頭を観察するとよいと思う。

普段の買い物の時に意識すればいいだけの話ですしね。

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店頭観察は今すぐに始められる

On 2010年11月19日, in ブログ, by nakamura

この記事の所要時間: 約 2分11秒 Tweet お客様を知る、ということはプロデューサーであるかないかに関わらず、商品に関わる人には重要である。 しかしながら、実際に調査をかけて実態を知ろうとすると色々とお金も手間もか […]

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この記事の所要時間: 211

お客様を知る、ということはプロデューサーであるかないかに関わらず、商品に関わる人には重要である。

しかしながら、実際に調査をかけて実態を知ろうとすると色々とお金も手間もかかるという事は確かにある。

店頭観察は、その意味で、時間さえ作れば誰でも今すぐ始められる。お店ではお客様の行動、店頭の実態、品揃え、店舗の工夫、その他色々な情報を「無料」で見る事ができる。

ただ漫然と見ていても発見は少ないだろうが、店頭での事実を見て、それが「何故」なのかを繰り返して考えて仮説を発見していくという目的意識を持っていれば、いくつもひっかかる事が出てくるはずだ。

それらの「ひっかかる事」がはっきり何故なのかがその場で分からない事も多々あるが、何度も繰り返して同じ店を観察したり、他店舗と比較してみることで、新たな気づきと、それが何故なのかの仮説は得られるはずだ。

店頭観察が大事だ、という事を教わったのは、何もマーケティングを教わってからという訳ではない。

僕がナムコに入社した時から、先輩から「とにかくゲームセンターに行け」という事を口酸っぱくいわれ続けていた。(今はどうなっているか知らないけれど)ナムコでは新人は入社したら開発で採用されても職場に配属されるゲームセンターで店員として2ヶ月ほど研修して「現場」を知る事を大事にしていた。

中途社員で入社して、ゲームセンターでの研修を受けないままの当時プログラマだった僕は、お店はそれなりに見に行っていたが他社のゲームがどんな技術を使っているかとか、どんなゲーム性のゲームなのか、というような作る側の視点でしか見ていなかった。

しかし、何度も足を運ぶうちに、意外な事に気づいたりした。


例えば、カップルで来た女性が体感ゲーム機を遊ぶ時に、持っているカバンを置く場所に困っている様子。地面には置きたくないけど、筐体の上には置きにくい。

4人通信対戦のレースゲームで、お財布から小銭を出すのに手間取ってしまい、4人みんなでレースするつもりが1人取り残されて、一人プレイになってしまいがっかりしている様子。


ゲームセンターはお客様が実際に遊んでいる「現場」なので、その気になれば商品開発、サービス向上にすぐに役立つ仮説は様々手に入るはずだ。

もし、商品企画をする立場の人間で、現場に足を運ぶ習慣を身につけていないなら、今すぐ店頭観察を始めるのがいい。

何度も店頭を訪れる事で、ヒット商品を作るのに役立つ生の情報を得られるはずだ。

できれば経営者にも数字ばかりの「シジョウ」だけでなく「いちば」=「現場」に足を運ぶ習慣をつけて欲しいのだけれども。

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数字ばかり見ていても売れるゲームが作れない理由

On 2010年11月18日, in ブログ, by nakamura

この記事の所要時間: 約 1分55秒 Tweet 今はゲームの世界でも売上データはPOSで管理されるのが普通になっていて、確かに、「何が売れたのか」という事実だけは数字のデータで席に座っていても分かる時代である。 しかし […]

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この記事の所要時間: 155

今はゲームの世界でも売上データはPOSで管理されるのが普通になっていて、確かに、「何が売れたのか」という事実だけは数字のデータで席に座っていても分かる時代である。

しかしながら、下記については売上のデータを見ても分からない。

  • 購入者が買った理由。
  • 非購入者がどれだけいたか。
  • 非購入者の買わなかった理由。
  • 購入後の使用動向。
  • どれだけ使われたのか。
  • どこが満足か、不満か。

つまり、POSのデータからはむしろ分からない事が多いといえるのである。

上記の中で、特に「非購入者の買わなかった理由」は売上を伸ばす、新規客をつかんで新しい商品を開発する事を考えると非常に重要である。

しかし、これは数字に表れない情報で、生の情報からでなければ得られない

売上のデータばかり見て、モノを作ると典型的には下記のようなことになる。


XXの地域の市場が伸びています。

  ↓

XXの地域の市場で売れているのは○○○というジャンルです。

売れているものはXXX万本も売れています。

  ↓

ですから、XX地域向けに○○○というジャンルのゲームを作りましょう。

調査の結果どうやらプレイヤーの好みはXXXXXな風貌の主人公らしいです。

XXXXXXな風貌の主人公の○○○ジャンルゲームをXX地域向けに発売決定(2年後に)


現実によくある話であるが、そうやって出来た商品は同ジャンルの後発商品で、伸びているという事実を知ってからさらに開発に数年をかけて発売したりするので、すっかりタイミングを逃して、よくある商品の中に埋もれてまったく売れない、ということになりがちである。

もちろん、以前にお話した通り、後発でも戦わずして勝つ「戦略」があればこの限りではないのだけれど、現場を知らないでモノを作ると結局むしろ知らないでやったほうがいい結果が出たのでは、と思う事もしばしばである。

現場の重要性を知った僕は、店頭観察にはまって、それに飽きたらず、ある方に頼んで、3ヶ月間ほどゲームショップの店員としてプロデューサーになった後に働かせてもらった。

「現場」での経験が今の自分を支えていると思う。

その経験から得られた知恵は、このブログで少しづつ伝えていくつもりだ。

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「マーケット」の異なる二つのイメージ

On 2010年11月17日, in ブログ, by nakamura
201103291139.jpg

この記事の所要時間: 約 1分7秒 Tweet 皆さんは「マーケット」と言われるとどういうものを想像しますか? 「マーケット(market)」は日本語では「市場」ですが、この「市場」という漢字には読み方が二つあります。 […]

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この記事の所要時間: 17

皆さんは「マーケット」と言われるとどういうものを想像しますか?

「マーケット(market)」は日本語では「市場」ですが、この「市場」という漢字には読み方が二つあります。
一つは「しじょう」。

「市場=しじょう」と聞いてどんなイメージがわくでしょうか。
201103291139.jpg
数字の羅列、グラフ…

そしてもう一つの読み方は「いちば」。

今度は「市場=いちば」と聞いてどんなイメージがわくでしょうか。

201103291139.jpg
並べられた商品、値札、品定めするお客、声を張り上げる店員…

「マーケット」と言われて多くの人が描くイメージは「しじょう」のイメージだと思います。パワーポイントやエクセルで書かれたような、主に数字の情報です。

確かに事実を検証する上でこういったデータは欠かせないし、それらの分析から得られる仮説もあります。

しかしながら、「いちば」と聞いてイメージするような「現場」の情報がなければ読み違えをする可能性が高くなります。

僕は後者の「いちば」的、現場の情報を重視しています。

事実をベースに仮説を立てて、何故?どうして?を繰り返していくという事です。

「生の現場」の情報は沢山触れれば触れるほど、何かを語りかけてきます。

数字だけで売れるものが作れるほど、この業界は甘くないと思うがどうでしょうか。

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追求すべきは誰の満足?プレイヤー、ユーザー、それとも?

On 2010年11月13日, in ブログ, by nakamura
太鼓の達人Wii (専用太鼓コントローラ「太鼓とバチ」同梱)

この記事の所要時間: 約 1分56秒 Tweet ゲームを作る人達は、多くの場合、そのゲームが面白くなるために努力する。 いってみれば、そのゲームを遊ぶ人(プレイヤー)を満足させるためだ。 今世の中に出ている多くのゲーム […]

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この記事の所要時間: 156

ゲームを作る人達は、多くの場合、そのゲームが面白くなるために努力する。

いってみれば、そのゲームを遊ぶ人(プレイヤー)を満足させるためだ。

今世の中に出ている多くのゲームはそこで止まっている。

ところがゲームを「商品」として見た場合、満足させるべき人は「プレイヤー」だけではない

リアルな例をあげよう。

太鼓の達人Wii (専用太鼓コントローラ「太鼓とバチ」同梱) 太鼓の達人Wii ドドーンと2代目! (専用太鼓コントローラ「太鼓とバチ」同梱)

太鼓の達人は子供に人気があるゲームだ。

クリスマスシーズンにはプレゼントに人気となる。

入進学のシーズンにもよく売れる。

子供が欲しいというので、いなかのおじいちゃんおばあちゃんが、では小学校入学のプレゼントにと購入する。

ここでは「おじいちゃん、おばあちゃん」は「商品を購入する人(お金を出す人) 」で遊ぶ人ではない

当然「おじいちゃん、おばあちゃん」にも満足してもらう必要がある。

太鼓の達人が発売されたシーズン(PS2の頃)の店頭ではよくそういう光景を見かけた。

後で気がついたが、太鼓の達人の箱の大きさは、あの年頃の子供にとってはプレゼントとして嬉しいらしい。

孫が喜ぶ姿を見て、おじいちゃんおばあちゃん(購入する人)は満足する。

もちろん、子供は家で太鼓の達人を遊ぶ。もし、子供がすぐに飽きてしまったら、困る人がいる。それは親である。

多くの子供向けのゲームは、親にとっては「道具」という一つの側面がある。子供におとなしくしてもらって、自分達は家事ややりたい事をやるための道具という側面だ。

実際、家庭用の太鼓の達人はお母さん達にとって人気である。それは遊ぶためではない。

例えばママ友同士が誰かの家に集まった時に、兄弟も含めて男女問わず3歳~小学生位までの子供が共通して遊べるので、子供達には太鼓の達人を遊ばせておいて、自分達はお茶を飲みながらママ友同士の会話をする。

家庭でのリアルな太鼓の達人の「使われ方」である。

子供が集まる機会には何度も太鼓の達人の出番があるので、ママは満足する。

つまり、ここでのお母さんは「購入者」でもなく「プレイヤー」でもなく「使う人(ユーザー)」である。

プロデューサーの役割の一つは、この商品に関わる「プレイヤー以外」の様々な人を満足させるためにはどうしなければいけないかを考える事である。

今挙げたのは1例で、実は他にも商品に関わる人達は沢山いる。

次回以降にまたこの話をしようと思う。

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商売で本当に大事なのは「売上・利益」より「信頼」

On 2010年11月10日, in ブログ, by nakamura

この記事の所要時間: 約 0分49秒 Tweet 商売において、確かにお金は大事である。それがなければ本来やるべき事が出来なかったりする事もある。 しかしながら、売上や利益をあげようとするあまり、お客様や取引先の信頼を失 […]

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商売において、確かにお金は大事である。それがなければ本来やるべき事が出来なかったりする事もある。

しかしながら、売上や利益をあげようとするあまり、お客様や取引先の信頼を失ってしまっているケースはこの業界にも少なくない。

発売すれば明らかに不満が出るだろうタイトルをスケジュール優先で発売したり、足りない売上を補うために、クオリティの伴わないタイトルを連発したり…

そうすれば短期的に売上利益は上がるかもしれないが、実際には本当に大事な「信頼」を失って、将来の売上利益を失っているのだ。

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