この記事の所要時間: 約 2分10秒 Tweet 僕がナムコでプロデューサーになってから最初に感じた事は、ゲームソフトを売る、という事について殆ど何も自分が知らないという事でした。 ゲームの開発をする、という意味ではそれ […]
[続きを読む]僕がナムコでプロデューサーになってから最初に感じた事は、ゲームソフトを売る、という事について殆ど何も自分が知らないという事でした。
ゲームの開発をする、という意味ではそれほど不安はなかったのですが、広告宣伝、販売、流通の仕組み、知らない事がたくさんあったわけです。
社内で色んな人に聴いてまわったけれど、結局の所、PS2,GBA版のもじぴったんを発売するまでは特にお店の実態がよく分からずじまいでした。
そんな時、ある方の紹介で東京の葛西にあるゲームズマーヤというお店の事を知りました。お店の話を聞いた後、一度お店に行ってみたい、そう思いました。
ゲームズマーヤは決して大きなゲームショップではありませんが、業界でも非常に有名なお店です。何故か。一番の理由は、店長の秋谷久子さんが、本当にすごい人だからです。
秋谷さんは、お店に来るお客様の顔も名前も、過去にどんなソフトを買って、いつ中古で売りに来たか、それだけでなく今何年生だとか、家族構成とか、恋人がいるかどうかとか、本当にあらゆる事を覚えているのです。
そしてお客様とのコミュニケーションも密で、お客様にも非常に信頼の厚いお店です。
その後、3ヶ月程、僕はゲームズマーヤで店員として立たせていただいて、その事をすごく実感しました(この時の話はまた別の機会にさせていただこうと思います)。
僕が本当にショックだったのは、それほど細かくお客様の事を分かっているゲームズマーヤでも、ゲームソフトの販売、特に新品のゲームソフトの販売ではやっていけない、という話でした。
新品のゲームソフトはお店が買取であり、利益率がそもそも低い事から、メーカーが売り逃げしてメーカーには利益が出ても、店頭では売れないソフトがあった場合、お店が損失をかぶる、赤字になる可能性が「ものすごく」高い、という事を、僕は知らずにゲームソフトの開発をしていたのです。
このあたりの数字的な話は平林和久さんのTweetがTogetterでまとめられているので、そちらを参照して頂きたいと思います。
僕は、お店の事をもっと知る必要性を感じました。
それがプロデューサーの仕事をしながら、ゲームショップに店員として立たせていただこうと思った理由です。
これから何度かに分けて、僕がお店について学んだ事を書こうと思います。
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この記事の所要時間: 約 3分22秒 Tweet 先日、ワンピースのゲームの開発で有名なガンバリオンの山倉社長をはじめとした数人と会食をしました。 ワンピース アンリミテッドクルーズSP(発売日未定) posted wi […]
[続きを読む]先日、ワンピースのゲームの開発で有名なガンバリオンの山倉社長をはじめとした数人と会食をしました。
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ガンバリオンの企業のビジョンは「永く愛されるゲームを作る」という事。
実は僕が「もじぴったん」に取りかかる前から、自分はどんな商品を作りたいのか、という事を考えて10年以上前にたどり着いたのが「永く愛されるゲームを作る」という事でした。
当時、家庭用のゲームソフトというのは、発売から1ヶ月もしたら宣伝も何もしない、3ヶ月たったら店頭からなくなっている、というのが殆ど常識でした。僕自身は、その常識にものすごい違和感を感じていたわけです。
もじぴったん開発当時インタビューを受けたりした時に、僕が必ず永く愛される商品の例に出していたのは「人生ゲーム」でした。
「人生ゲーム」は、どんな小さい街のおもちゃ屋さんにも必ず置いてあるし、発売から何十年たっても売っているわけです。小さい頃に遊んだと思っていたのに、大人になったら今度は子供と一緒に遊べる。
おもちゃの世界では普通なのに、ゲームの世界では普通ではない。
僕はそんな「永く愛されるゲーム」が作れないのだろうか、と思っていました。
「もじぴったん」を作り始めた時、10年後にも遊ばれているというイメージがはっきり沸いたのを覚えています。
僕は少なくとも10年は愛される商品にしたい、とそう強く思いました。
ガンバリオンさんでのゲームを開発する姿勢は、驚くほど僕がとったアプローチと近いものでした。
そして、実際にお店で定番商品となり、永く売れ続ける、そして永く愛されるゲーム作りに成功されていると感じました。
社長の山倉さんは、元々はゲームショップの店長をしていたそうです。
僕は、ああ、なるほど、と思いました。
お客様に近い所にいてゲームを見ていた事。お店の本当に必要にしている商品、つまり定番商品=「永く愛されるゲーム」を開発すべきであること。そのために必要な条件がいくつもあることを知っている事。
お話していて、共感できて、少し時間を忘れて遅くまでお話しました。
楽しかったのもあるし、とても印象深い時間を過ごせました。
もし、今新しいゲームを作っているとして、「10年後も変わらず、もしくは今以上に愛される商品になっているか」という問いは、多分意識しなければしないと思います。でも、一度問い直す価値のある自分たちへの質問であると僕は思っています。
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この記事の所要時間: 約 1分47秒 Tweet プロデュースにおけるコンセプトとは、 誰にとって ( 顧客 ) どんなよい事がある ( ベネフィット=便益 ) 何であるか ( カテゴリー ) を簡潔に述べたものです。 […]
[続きを読む]プロデュースにおけるコンセプトとは、
- 誰にとって ( 顧客 )
- どんなよい事がある ( ベネフィット=便益 )
- 何であるか ( カテゴリー )
を簡潔に述べたものです。
ここで、(誰にとって)の部分はお客様に明確に知らされるケースと知らされないケースがありますが、プロデュースをする側は(誰にとって)はコンセプトの中の重要要素です。
これは最低限の要素ですが、最低限の表現にした時に「するどい」コンセプトになっているかどうかはそれが商品ならば成功するかどうかを左右します。
もしプロデュースする商品のコンセプトが簡潔にまとまらないのであれば、それは何か根本部分を見直した事がいいことを意味しています。上記の要素が全て「一言でズバリ」言えないのであれば、言えるまでコンセプトを考え直す必要があります。
【誰にとって(顧客)】
あまりターゲットという言葉は使いたくないですが、商品をプロデュースするならはっきりとした対象となるお客様がイメージ出来ているはずです。何歳位の男性、女性。既婚、未婚。子供の年齢、どんな生活をしている人か…。 商品企画書に「オールターゲット」と書かれたものを見る事は珍しくありませんでしたが、そういうのは顧客が見えていない典型です。
【どんなよい事があるか】
お客様はその商品が何かしらのいい事を提供してくれるからその商品を購入するわけです。 売れる商品を開発する上で大事なのは、その「よい事」がお客様が強く欲していて、なおかつ他では得られない事である事です。
【何であるか】
まったく新しい商品であればあるほど、それが一言で言うと何であるか(カテゴリー)が大事です。本当に新しい商品の場合、このカテゴリ名を作り出す必要が出てきます。仮に既存のカテゴリ上の商品だったとしてもカテゴリを明確にする必要性があります。でないと、お客様はそれが何なのかを理解することが出来なかったり、理解するのに時間がかかったりするからです。
多分実例を見れば多少ピンとくるんじゃないかと思います。
次回以降でコンセプトの実例を使ってもう少し深く説明をします。
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この記事の所要時間: 約 2分31秒 Tweet 僕がプロデューサーになりたての頃、今まで作ればよいという立場から、作るだけでなく売るという所まで責任が広がって、色々分からない事だらけだったので、とにかく書籍を買いあさっ […]
[続きを読む]僕がプロデューサーになりたての頃、今まで作ればよいという立場から、作るだけでなく売るという所まで責任が広がって、色々分からない事だらけだったので、とにかく書籍を買いあさって暇があれば読んでいました。
多くの本はなるほど、と思いつつも、実践的でなく実際のシーンでは役に立たなかったり、自分に合わない、あるいはゲームという商品ジャンルでは何かピンとこない、と思うものが殆どであったと思います。
そんな中出会った本の1冊が、「60分間・企業ダントツ化プロジェクト – 顧客感情をベースにした戦略構築法」です。
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iOS のアプリにもなっています。iPad, iPhoneのユーザーの方はこちらもお勧めです。
iPhone/iPad アプリ: 60分間・企業ダントツ化プロジェクト
「もじぴったん」のプロジェクトはナムコという業界ではそれなりに大きい会社ではあったけれども、プロジェクトの規模は最小単位に近くて、大企業の中の、小さい会社的なイメージでした。
なので、会社的な優先順位はいつも低くて、低予算で、少人数でどうやったら成果を上げられるか、が肝だったのです。
この本は、どちらかといえば中小企業で、いかに戦略的に長期的に成功を収めるか、あるいは、新規事業で成功するための条件をわかりやすいフレームワークを元に考えていくステップを紹介しています。
僕がこのブログでも何度も話をしている「戦略」のベースの考え方についても詳しく述べられています。また、実際の中小企業での成功例(しかも意外な戦略で)がいくつも挙げられています。
「もじぴったん」プロジェクト初期に何をしたらよいか迷っている時に、この本は役に立ちました。
僕らのような小さいプロジェクトは普通のやり方をやっていたのでは負け、だからこそ戦略が必要で、その時に考慮すべき点も同時に理解しました。実際、あるシーンで、この本に載っていたフレームワークそのものを使って活路を開いた事もあります。
この本を書かれた「神田 昌典」さんの本は、一時期僕はツボっていて、著者を見ないで書店のビジネス書コーナーで役に立ちそうな本を3冊買ったら、3冊とも神田さんの書籍だった事がありました(笑)。
ご紹介した「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」は古い本ですが、中小企業や大企業の中でも小さめのプロジェクトのリーダー、新規事業を立ち上げる必要がある人、等の方にはお勧めの書籍なのでご紹介しておきます。
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この記事の所要時間: 約 1分56秒 Tweet 継続は力なり、といいます。 マーケティングにおいて最初の入り口となる「観察」においては特に継続する事は重要です。 単発的に観察するのでは得られない事の一つは、継続する事で […]
[続きを読む]継続は力なり、といいます。
マーケティングにおいて最初の入り口となる「観察」においては特に継続する事は重要です。
単発的に観察するのでは得られない事の一つは、継続する事で「変化」に気がつけるという事です。
同じお店を定点観測する事を例に挙げましょう。
同じお店に午前中行くのと、夕方に行くのと夜に行くのでは客層が異なったり、売れるものが違ったりします。
ゲームソフトなら発売日(多くは木曜日)に行くのと土日、他の平日に行くのとではまた全然違います。
単にお客様の層が異なるだけではないです。例えばお客様がお店に滞在している時間は曜日によってだいぶ違います。(この話はいつか詳しくお伝えしようかと思います)
お店では毎週発売される新作が違うのでコーナー展開はほぼ毎週変更しています。
お店に入ったすぐの場所等の目立つ場所で扱う商品は変わる事が多いのですが、逆に何週も変わらないでお店の目立つ位置でプッシュされるものもあります。
僕がよく行く某カメラ量販店ではお店のコーナー展開だけでなく、売り場の場所や売り場面積、導線をかなり頻繁に変えています。
例えば、扱うハード(プラットフォーム)の力の入れ方で、棚が占める面積も変わってきます。
そうそう、ゲームショップ等によくある「ワゴンセール」(違う事もあるけど、在庫処分であまり売れていないのを安く売っている)、普段はお客様がついているのを見かけませんが、ある時期はワゴンに人が群がる事も気がついたりしました。
店頭観察を継続する事、はあくまで一例です。
街ゆく人や、電車の中で人がどういう行動をしているか、といった観察も継続すればやはり「変化」に気づけるはずです。まぁ、実はあまり頻繁にせずに時間をあけて思い出したように観察をしたほうが「変化」に気づく事もありますね。
観察を繰り返していくと変化しているものや、逆に殆ど変化しないこと、繰り返されている事もあります。実は「変化」に気づくと同時にこの「変化していない」事に気がつく事も非常に重要です。
そして、その「変わった」「変わっていない」両方の理由を何故?と考えてみる事で新たな発見が生み出されます。
で、僕はどちらかというと他は変わっているのに「ずっと変わらない」ものを発見して、それをヒントにした事が多くあります。
その実例はまた今度。
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この記事の所要時間: 約 1分34秒 Tweet 以前のエントリーで目先の売り上げ利益よりも信頼が大切、という話をしました。 過去エントリー:商売で本当に大事なのは「売上・利益」より「信頼」 しかしながら、ゲームソフト業 […]
[続きを読む]以前のエントリーで目先の売り上げ利益よりも信頼が大切、という話をしました。
過去エントリー:商売で本当に大事なのは「売上・利益」より「信頼」
しかしながら、ゲームソフト業界の現実は目先の売り上げ利益を追いかけている企業が多い気がします。
その理由の一つは「売上利益は数字という形で見えるが、信頼は簡単には目に見えない」という事です。
「信頼」は簡単に見えませんから、失っても「すぐには」気がつきません。
そして、ジワジワと、ある時は突然、売上利益という数字の形になって現れます。例えば、今まで売れていたシリーズが全然売れない、あるいは会社全体での売り上げが上がらない、といった形でです。
で、ここでも理由はよく分かりませんから、それが過去に信頼を失った事が原因である事には気がつきにくいのです。
接客がメインの店舗経営、サービス業等であれば、「見える」事もあります。今まで常連だったお客様が来なくなったり、来店頻度が下がったり….
でも、やっぱり多くのお客様は「黙って」去ります。
残念ながら、お客様から遠い「上流の」ゲームメーカーがパッケージを作って小売店に売る、という業界の構造ではメーカーが本当にお客様に近づく努力をしなければ、お客様が何を求めているかも、信頼を得ているか失っているかも「気づかない」のです。
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結果的に、大切な「見えない」信頼を失う事で、将来的な売上利益も失う訳です。
ですが、逆も言えます。
「見えない」信頼を得る事で、将来的な売上利益を得る事も出来る可能性を増やせます。
経営者やプロデューサーの役割は、「見える」目先の売上利益だけにとらわれず、将来的に本当に何が大切かを常に考え行動に移す事だと僕は考えています。
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この記事の所要時間: 約 1分9秒 Tweet ある有名なゲームのシリーズの最新作が出た時、ある雑誌の紹介に「クリアまで100時間の超ボリューム!」みたいな事がデカデカと載っていた事がありました。その事がその最新作の売り […]
[続きを読む]ある有名なゲームのシリーズの最新作が出た時、ある雑誌の紹介に「クリアまで100時間の超ボリューム!」みたいな事がデカデカと載っていた事がありました。その事がその最新作の売りだったのです。
それをきっかけにして、僕はそのシリーズを買う事はなくなりました。
「忙しい上に、テレビは家族のもので自分が100時間独占する事はできない。」
好きだったシリーズだったけれど、もう自分向けではない、と思いました。
これまでも何度か実例を挙げてきましたが、娯楽商品は生活の中に無理なく入る事ができなければお客様には楽しんで頂けません。
どんなに遊べば楽しい、面白いゲームでも、お客様の生活の中で遊ぶ時間を取れないと思われたら、購入して頂けないのです。仮に購入して頂けたとしても気持ちよく遊ぶ事が出来ず、次第に遊ぶ、楽しむ事から離れてしまいます。そんな状態で続編なんか出されても買おうという気にはならないでしょう。
ゲームを作っている側はボリュームを増やせば増やすほど価値が上がる、売れる、お客様は満足する、と思いがちですが実はそうではありません。
特に忙しいお客様にとっては「お金」以上に「時間」は大切で、それを十分理解して商品やサービスを提供する必要があると思っています。
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この記事の所要時間: 約 2分18秒 Tweet このブログでは何度か「ブランド」の話をしています。 「ブランド」=信頼の証、ですが、その「ブランド」にも色々な種類があります。 例をあげると、 会社名 ( 任天堂, セガ […]
[続きを読む]このブログでは何度か「ブランド」の話をしています。
「ブランド」=信頼の証、ですが、その「ブランド」にも色々な種類があります。
例をあげると、
- 会社名 ( 任天堂, セガ, …. )
- タイトル ( モンスターハンター, …. )
- クリエイターorプロデューサー名
- チーム名, レーベル名 ( AM2, Team Ninja … )
- キャラクター名 ( マリオ, … )
等があります。
多分挙げた中で、一番お客様に通じにくいのは個人的にはクリエイターorプロデューサー名だと思います。
「XXXXさん」と名前を言われてもわからず、結局「○○○を作ったXXXさん」と言われて、あー、そうなんだとなる事が業界で働き始めて長い僕でもあります。
実際、多分業界で一番有名なクリエイターでプロデューサーの任天堂の宮本さんでも、例えばうちの嫁は知りません(笑)。
宮本さんが作ったマリオは知らないはずがないですけれど….
(宮本さん、見てたらすみません…)
ですが、僕は葛西にあるゲームショップ「ゲームズマーヤ」の秋谷店長にこんな事を教えてもらいました。
「商品(ゲームソフト)をどれだけ入荷するかは勝負。勝負に勝つには誰がプロデューサーで、誰がクリエイターか、何を作ったチームなのか、内部開発なのか外部開発なのか、どの会社が開発等は基本全部調べる。そして過去のそのプロデューサーやクリエイターの勝率は入荷数を決める上で参考にする。このプロデューサーは何勝何敗だから、多めに入れる、あるいは絞っておこう、のように。」
商品がどれだけ店頭でプッシュされるか、はお店次第で、それにより売り上げは確実に違ってきます。
ですから、お客様が買う時には「直接の」影響は少ないかもしれないですが、誰がプロデューサー、クリエイターなのかはお店の人は(ある程度は)知っていて間接的には売り上げを左右しているという事がいえるのかと思っています。
秋谷店長は「プロデューサーは特に勝率で見ている」という事をおっしゃっていました。
この事を聞いた時、僕はプロデューサーとして身が引き締まる思いでした。
プロデューサーとして信頼を持ってもらえなければ、まずお店にちゃんと並べてもらえるかの壁を越えられない訳です。
仮に一度信頼されたとしても、失敗ばかりしていては信頼を失って、より失敗する確度が高くなってしまうのです。
ブランドには「勝率」が密接に絡んでいます。
この話はまた詳しくお話しようと思います。
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[続きを読む]世の中には、そのゲームが「大好き」なタイプが故に「買わない」という人がいます。
僕はそういう方に何度も出会いました。
もじぴったんの家庭用版が発売された後、ある、まだもじぴったんを遊んでいない女性に是非遊んでみて下さい、と言ったら、「うわっ、すごく好きなタイプのゲーム!」と言った後に「怖いから買わない」と言われました。
何が怖いのかというと、大好き故にハマりすぎて仕事や生活に支障をきたす事を恐れているのです。
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その人は「パズルゲーム」や「クロスワード」が大好きで、夢中になりすぎる事が目に見えているので、絶対にハマる、楽しめる事を確信しながら、それを理由に「絶対買わない、買っちゃダメ」と思っているようです。
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そんなのごく一部の人でしょ、と思うかもしれません。
でも、同様な理由でゲームを遊ばない、買わない、という方は少なくはない、というのが僕の印象です。
時間がたっぷりあって、遊ぶ暇なら沢山ある方なら、そんな事は言わないかもしれません。
でも、ものすごく楽しいが故に生活上の問題が生じる、というのは立派な「買わない」理由になるわけです。
楽しい事よりも、生活上に問題が生じるほうが殆どの場合重大な問題になるからです。
ゲームを作っている人は、楽しい、もっと楽しい、面白い、もっと面白いゲームを作ろうとします。
それが、より売れるゲームになる、と思っている方も多いでしょうね。
しかし、その事が逆に「買わない」一因になっていて、本質的にそれは何故なのか、についてはゲーム制作に関わる方はよく知る必要があると考えています。
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この記事の所要時間: 約 2分1秒 Tweet 今は携帯音楽プレイヤーというのは当たり前の存在になっています。 古くはウォークマン、今は iPod。 Apple iPod touch 32GB MC544J/A 【最新モ […]
[続きを読む]今は携帯音楽プレイヤーというのは当たり前の存在になっています。
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自分がその携帯音楽プレイヤーを初めて知って購入しようと思った時を考えて欲しいのですが、購入前に自分がどんなシーンで携帯音楽プレイヤーを使っている所を想像していいと思ったのでしょうか。
多分、電車の中、あるいは待っていて時間がある時等….
そんなシーンは、実は不快を感じているシーンではなかったでしょうか。
あくまで仮説ですが、僕はこういう娯楽製品は「不快」を感じている時に「使われる」事をお客様は想像して価値を感じて購入していると思っています。
先に携帯音楽プレイヤーを例に出しましたが、携帯ゲーム機や、携帯電話でゲームをするのもきっと同じ心理なのではないかと思っています。
自分の生活の中で、不快を感じている時間を紛らわす、あるいは楽しい時間に変えるという商品は、娯楽ではあるけれど、実は生活の中の「必需品」として扱われている気がします。
遊ぶゲームは色々変わるかもしれないけど、その電車の中の不快を感じている以上はそのシーンで「毎回使われる実用品」なのではないでしょうか。
ゲームも含めた「娯楽商品」は一般的には「必需品・実用品」とは思われない傾向がある気がします。
僕もナムコに入社してから何度か、ゲームは必需品ではない、という事を周りから言われた気がします。
ですが、度々起こる生活の中の不快を解消する商品は娯楽商品であっても「必需品」であるとお客様は感じているのではないかと思います。
おそらくそういうお客様には既に「ないと困る」ものになっているのです。
で、僕は「娯楽商品」でありながら「必需品」になっている商品が実はヒット商品になっているのではないかと思っているのです。
詳しい理由や事例はまた別のエントリで。
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この記事の所要時間: 約 3分1秒 Tweet クリスマスが近づいてきていますね。毎年12月、ゲームショップは一番の賑わいを見せます。 その理由の大きな一つは、子供向けのクリスマスプレゼントのためです。 (c) .fot […]
[続きを読む]クリスマスが近づいてきていますね。毎年12月、ゲームショップは一番の賑わいを見せます。
その理由の大きな一つは、子供向けのクリスマスプレゼントのためです。
今の時期、親御さんが子供のクリスマスプレゼントを購入しにゲームショップにやってきます。お店も購入されるだけでなく、ラッピングのサービスをしたりする事もあって大忙しになります。
小さいお子様がおられるご家庭であれば分かると思うのですが、クリスマスのサンタさんのプレゼントは子供が選んでいるようで、実は「親」が最終的に選んでいます。
子供が欲しい、と言った商品(おもちゃやゲーム)を親が買うんじゃないの?と思うかもしれません。
しかし、実際はこんな感じです。
子供はテレビ番組や、友達が持っていたりするモノに影響されて、あるおもちゃ、ゲーム等が欲しくなります。
それはクリスマスよりずっと前、下手をすれば年明けぐらいからずっとです。
子供は欲しがりますが特に高価だったりすると、そんなに簡単に買ってあげるわけにはいきません。
ゲームソフトの値段帯は、サンタさんがいるって思っている位の年齢の子供には、欲しい、というだけでは買わないと思います。
ですから、親は「じゃあそれは、誕生日かサンタさんにね」と言う訳です。
ここで重要なのは、子供は他から影響されやすく、好みや欲しいものもコロコロ変わりやすいという事です。
あのゲームが欲しい、と言った3日後には、別のおもちゃを欲しがっている事は普通にあります。
実際にお子さんがいれば、どれくらいコロコロ変わるか分かるでしょう。
で、実際にクリスマスにサンタさんにお願いするプレゼントは、実際にはそのコロコロ変わる欲しいものの中から、値段や買い与えてよいものか、ためになるか、すぐに飽きてしまわないか、兄弟で喧嘩にならないか、等を細かく考えて、実際には親が決めてしまっているのです。
そんな訳で、この時期の親は子供と駆け引きをして、あんまり高くなくて、簡単に飽きてしまったりしなくて、できれば子供のためになるような商品で、子供が満足するプレゼントを選ぶのです。
子供向けのおもちゃやゲームは、作っている側は「子供が欲しがるように」すればいいと思いがちですが、実際にはそうではありません。
購入するのは親であり、現実には子供が欲しいと言う商品の中から、親が選んでいます。
つまり、実は親が子供に買い与えるおもちゃやゲームは、実は「親のニーズ」を満たす必要があるのです。
実例を挙げればもっとイメージがはっきりすると思いますが、それはまた今度。
昨日は、ぷよぷよのゲームデザイナーとして有名な米光一成さんと対談をさせて頂きました。
いや、本当に面白かったです。WEBの記事として「ガジェット通信」と「エキサイトレビュー」にて後日掲載予定です。
お楽しみに。
→掲載されました。詳しくはこちら。
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[続きを読む]ゲームソフトが発売日に売れる不思議、というお話をしましたが、一般の方には不思議には感じない方もおられると思います。
すごく期待しているゲームなんだから、早く購入して、早く遊びたい。
あるいは、皆と一緒に遊びたい。
だから発売日に並んででも購入したい。
でも、前提になっているのは、その期待しているゲームソフトが購入すれば期待通りか期待以上の満足を与えてくれるという会社やブランドに対する「信頼」なのです。
今PSPのモンスターハンターポータブル3rdが爆発的に売れています。もちろん発売日には行列ができ、今でも品薄状態が続いています。
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それは、モンスターハンターポータブルのこれまでのシリーズが、最初の製品からずっと信頼を裏切らない、期待通りか期待以上の満足を与えてくれたからではないでしょうか。
ですから、その最新作は、きっと今まで以上の満足を与えてくれるに違いない、と思って発売すぐに購入したい、と思うのではないでしょうか。
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もっと言えば、PlayStation 2 向けに発売されたオリジナルのモンスターハンターという商品が全然ダメな商品だったら、今のこのモンスターハンターポータブル3rdのヒットはない訳です。
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PlayStation 2 向けのモンスターハンターが発売されたのは2004年3月。開発が始まったのがその2年前だと仮に考えるとかれこれ8年位かけて積み上げてきたものが、今の「売れている」という結果に結びついているのだと僕は考えます。
(参考)Wikipedia によるとオリジナルのPlayStation 2版のモンスターハンターは29万本の売り上げだったそうです。
経営者やプロデューサーが信頼を積み重ねる必要がある、という話を過去のエントリーでしましたが、今ゲームソフトをお客様が発売日に買うというのは、過去に積み重ねた「信頼」によるものなのです。
過去エントリー:商売で本当に大事なのは「売上・利益」より「信頼」
今、50万本、100万本、200万本も売れている商品の殆どは過去5年、10年、いやそれ以上積み重ねてきた「信頼」の元にお客様が購入しているのではないでしょうか。あのシリーズ物も、あの世界的に有名なキャラのゲームも、まさに積み重ねてきた会社やブランドへの信頼がなければ購入していただけないのです。
別の見方をすると、今売り上げがあがらないという要因は5年、10年前から段々信頼を失ってきた結果ではないか、という見方もできるのではないかと思っています(もちろん、それだけではないのは十分理解していますが)。
信頼は、残念ながら一朝一夕には積み上がるものではありません。
目先の利益にとらわれて、信頼を失っていく事が、どれだけ将来の自分たちの首を絞める事なのかを経営者やプロデューサーは肝に銘じる必要があるのではないでしょうか。
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この記事の所要時間: 約 1分35秒 Tweet 多分、僕がまだナムコの業務用ゲーム機開発のプログラマーだった頃(10年以上前)の事です。 ある時、今まで「常識」と思っていた事に大きな疑問を感じました。 何故家庭用ゲーム […]
[続きを読む]多分、僕がまだナムコの業務用ゲーム機開発のプログラマーだった頃(10年以上前)の事です。
ある時、今まで「常識」と思っていた事に大きな疑問を感じました。
何故家庭用ゲームソフトは発売日、あるいは発売された週に一番売れるのだろうか?と。
考えてみたら、不思議なのです(当時の自分にとっては)。
発売日にゲームソフトを買う人は皆、そのゲームを遊んでから買うわけではなく、買ってから遊ぶわけです。
発売日に何十万本と売れるソフトも、皆、遊んで面白さを確かめてから買うわけではないと。発売日に買う訳ですから、誰か遊んだ人の話を聞いて買う訳ではない。
しかも、ゲームセンターのゲームなら100円や200円で遊んでみる事ができるのに、家庭用のゲームは5000円、いやもっと値段がするわけです。
でも、発売日に一番売れる。
つまり、お客様は「遊んで面白いゲームソフトだから買う」のではないのです。
遊んでなくても、買う前に、何千円もお金を出してもいい、面白そう、あるいはきっと面白いに違いない、と想像して、期待して購入しているのです。
その結果、期待通り、期待以上の事もあれば、裏切られて「なんだこのクソゲー!」と思ってしまう事もあります。
ゲーム開発者はがゲームの開発にどっぷり浸かっていると「面白いゲームソフトを作れば売れる」と思い込みがちです。
でも「ゲームソフトが発売日に一番売れる」という事は、違う見方をしなければいけない事を示しています。
僕自身も、10年前までは「面白いゲームソフトを作れば売れる」と思い込んでました。今は、そうではない事を理解しています。
お客様の目から見れば当たり前の事ですが、ゲーム開発の現場で長く働き始めると「ゲームが面白ければ売れる」という勘違いをしてしまうのです。
この話はちょっと奥深いので、何度か事例なども出して違う角度からお話できればと思います。
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この記事の所要時間: 約 2分19秒 Tweet ゲームを作る側の人間としては、実のところ世間のゲームの情報から意識的に遠ざかろうとしても、本当にゲームの事を知らない人の立場になるのは大変に難しいです。 であるなら、ゲー […]
[続きを読む]ゲームを作る側の人間としては、実のところ世間のゲームの情報から意識的に遠ざかろうとしても、本当にゲームの事を知らない人の立場になるのは大変に難しいです。
であるなら、ゲームを本当に知らない人、ゲームを全然遊ばない人をよく観察する事でその人達の気持ちを理解する努力も別に必要になります。
そんな人を観察する機会はないな…と思うかもしれません。
でも、身近にいるよく知る一人、を想像してみるという手があります。
例えば…あなたの母親はどうでしょうか。
自分が作ったゲームがあったとして、それが動く家庭用ゲーム機をソフトと一緒に実家に送ったとしましょう。
でも…あなたの実家の母親はゲーム機の箱を開けて、そのゲーム機をテレビに繋ぐ所まで行けるでしょうか。
多分、僕の母は無理だと思います。実家にいるときは、家電製品が来たら、設置と設定は全部僕の仕事でした。
女性の年配の方は特に、機械に弱い方が多いものです。ゲーム機の取扱説明書を読めば… って事はいいませんよね?
仮に機械には多少詳しい父親に手伝ってもらって接続する事が出来たとして….あなたのそのゲームは、両親に説明なく楽しんでもらえるでしょうか。
いや、中村さん、僕の作っているゲームはターゲットが違うので無理ですよ、と思うかもしれません。
でも、今のような思考をして、あの人だったら…と考えればゲームを知らない人の気持ちが少しは分かるかもしれませんね。
そう考えると、身近にもゲームをまったく遊ばなそうな人がいませんか?
その人だったら…と考えてみたら、どうでしょうか。
ちなみに、僕は妻を観察する事で「ゲームを知らない人」の一つの反応を確かめる事を頻繁にしています。理由を聞けるのもメリットです。
以前にお話したパッケージのエピソードもその一つです。
(参考) 過去エントリー:お客様は何も知らないという前提で考える
そういえば、任天堂の宮本さんもGDC2007の基調講演で、「奥様メーター」という話をしていました。僕と同じで(笑)奥様がバロメーターになっているようです。
Game Watch 任天堂の宮本茂氏による基調講演 “A Creative Vision”
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070309/miya.htm
ぼんやりと「お客様」というイメージを持つよりも、身近にいる「あの人」と考える事で自分とは違う視点で物事を見ることができるような気がします。
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この記事の所要時間: 約 1分50秒 Tweet ゲームを遊ばない人の気持ちを理解するためにゲームを遊ばないように努力したり、ゲーム専門誌を読まないようにした事で見えてきた事があります。 その一例を挙げようかと思います。 […]
[続きを読む]ゲームを遊ばない人の気持ちを理解するためにゲームを遊ばないように努力したり、ゲーム専門誌を読まないようにした事で見えてきた事があります。
その一例を挙げようかと思います。
ゲーム専門の雑誌以外のいわゆる一般誌と言われる雑誌にもゲームが紹介される事があります。
エンタメ系の雑誌の場合、その週の主立ったタイトルの紹介やランキングが掲載されるものもあります。
紹介されるタイトルは限られるし、紹介されても、そこに書ける情報はとても少ない情報です。
でも、それだけの情報でも少なくともお客様に「おっ」と思ってもらい、ゲームショップに足を運んでもらえないと(発行部数が多い)一般誌に載っても意味がありません。
どれくらいの量なのかを具体例でお見せします。
(参考)B.L.T 11月号関東版 ゲーム紹介のコーナーの一部
(参考)ぴあ 12/16 号 ゲーム紹介のコーナーの一部
1本のソフトあたり載せられる情報量は、画面写真1枚(もしくはパッケージ)+ほんの少しの文章のみです。(運が良ければもう少し情報を露出できるかもしれないけど….)
もし、あなたが今パッケージのゲームを開発しているなら、この情報量で、前知識がない人にも魅力に感じさせる自信があるでしょうか。お客様に時間と手間をかけてまでもお店に足を運ばせる事ができるでしょうか。
一般誌はゲーム専門誌と違って、次の号ではもう同じゲームは紹介されませんから、二度目のチャンスはないと思った方がよいですね。
ゲーム専門誌を読み続けていると、細かい仕様とか、色んなモードなどを入れていけば商品の魅力が上がると思いがちです。
しかし、買う前にお客様がそれを知らなければ、お客様にとっては何の価値もないのです。
ゲームの中身を作り込んで、こんなによく出来ているのに何故売れないのか、と思っている開発者もいるかもしれません。でも、そんな人にも、もっとお客様の視点に近づけば見えてくるものがあるんじゃないかと思っています。
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この記事の所要時間: 約 2分3秒 Tweet 正確にいつ頃からかは覚えていないのですが、僕がプロデューサーとして働くようになってからは、はっきり意識してゲームをプレイしないようにしていました。 会社にはゲームが溢れてい […]
[続きを読む]正確にいつ頃からかは覚えていないのですが、僕がプロデューサーとして働くようになってからは、はっきり意識してゲームをプレイしないようにしていました。
会社にはゲームが溢れていますから、遊ぼうと思えば会社でいくらでも遊べる訳です。
にもかかわらず、僕は会社でもあえて殆どのゲームをプレイする事はありませんでした。
同時にいわゆるゲーム専門誌も読まない事にしました。会社ではあちこちにあって読もうと思えば自由に読めるのにも関わらず、です。
ゲーム業界で働いている人なら、その行動には少し疑問を感じるかもしれません。
業界のトレンドや、他社がどんな技術を使ってどんな製品をだしているかは知っておくべき、というのが常識だからです。
しかし、僕自身はそういう環境だからこそ、あえてゲームを知らない人の立場を理解するために努力をする必要があると考えたのです。
同時にその行動が、実際に問題になる事は少ないと思いました。何故なら、周りで一緒に開発しているメンバーは、殆ど皆ゲームの事について詳しいからです。
あえて情報が溢れる中で、知らない人の立場をなるべく理解する事が、もじぴったんチームのリーダーとしての僕の役割だと思いました。
そうする事で、見えてくるものがあるわけです。
例えば、ゲームの事を知っていれば、人気のあった続編で宣伝を見ればなんだか理解できるのだけど、知らない人から見ると同じ宣伝を見てもそもそも何のゲームでどう面白いのかすら分からないということ。
そもそも、あるブランドのゲームが評価が高いとか高くないとか分かっていない事。何がいいのか知らない事。
大手のゲーム会社の開発の現場にいつつ、ゲームの情報を仕入れないようにするにはかなり努力が必要でしたが、結果的にはゲームを遊ばないようにする努力は正解だったと思っています。
もじぴったんが、ゲームを初めて遊ぶ人でもちゃんと遊べて、購入前になんとなくでもどんなゲームでどうよいのか理解できるようになっているのも、一つはその努力のおかげです。
業界の人全てに僕のマネをして欲しい、とは思いません。
ただ、皆がゲームの事について詳しいならば、ゲームを知らない事を生かしてチームに関わる役割の人が必要だと思います。
特に、今までゲームを遊んだことがない人に遊んで欲しい、喜んで欲しいと思うのなら、そのような役割の人は必要です。
ゲームを遊ばない事で見えてきた事、について明日もエントリーを書こうと思います。
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この記事の所要時間: 約 1分42秒 Tweet 今発売されているゲームを見ていると、多くのケースで「売れる」事を狙いに行って、結果的にパッとしない事になってしまっているように思います。 もちろん、入念な戦略があって売れ […]
[続きを読む]今発売されているゲームを見ていると、多くのケースで「売れる」事を狙いに行って、結果的にパッとしない事になってしまっているように思います。
もちろん、入念な戦略があって売れているものもあります。
「売れる」事を狙いに行くと、皆がよくやりがちな事は「売れているもの」のマネをする事です。しかし本質を理解しないと、単なる後追い商品になってしまいます。
でも、「売れる」事を目標にする事ではなく、あえて身近にある問題で、今ある手段では解決できない事をなんとかする方法を発明する、というのが実はヒット商品の近道かもしれません。
Dr.中松が発明したものの中に「灯油ポンプ」(Dr.中松は醤油用に発明した)がありますが、母親が漏斗で醤油を瓶に移し替えるのに苦労しているのをなんとか解決しようとして発明したものだそうです(当初の商品名は「醤油チュルチュル」)。
実用品だけではありません。
ポピュラーでロングセラーなテーブルゲーム「オセロ」。
発明した長谷川五郎さんは、中学生であった当時、終戦間もない焼け野原で「休み時間10分以内に決着のつくゲームはないか?」と囲碁を元に自分達のためにオセロを考案したそうです。
僕は身近な、生活の中の問題がこんなゲームがあれば、あるいはこんなゲームの技術で解決できないか、と常に考えています。
実は今売れているもの、は殆ど気にしていません。
それが「売れるモノ」を作る近道だと思っているからです。
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この記事の所要時間: 約 3分30秒 Tweet 僕がプロデューサーになった時は、元々開発しかやった事がなかったのでとにかくモノを売るとはどういう事かをゼロから学ばないといけませんでした。 もちろん最初は、社内で色んな方 […]
[続きを読む]僕がプロデューサーになった時は、元々開発しかやった事がなかったのでとにかくモノを売るとはどういう事かをゼロから学ばないといけませんでした。
もちろん最初は、社内で色んな方に聞きまくって、「常識的」なやり方を聞くわけですが、いわゆる「ゲリラ」をやらないとダメなことを覚悟していました。
単に「普通の」販売、販促、宣伝手法を知ってそれをやっても、当初の低予算では大きな効果を出す事は難しい事は分かっていたからです。
これはどんな会社でもそうかもしれませんが、そこそこうまくいっている組織では、そういった新しい、多少奇抜に思える販売手法のようなものに対して「保守的な力」が働きます。
今までと違うやり方でやりたい、と思っていても「前例がない」「これまでのやり方で問題ない」と返されて、社内の壁に阻まれる事があります。
なので、その時に僕がとった「作戦」の一つはライバル会社が何をやっているかを研究する事でした。
この時に一番の情報源になったのは、「店頭」でした。
当たり前の事ですが、店頭では他社の販促物ややろうとしている事が分かります。毎週店頭に行き、新製品のパッケージやPOP、プロモーションビデオ等をずっと観察していました。それに対するお客様の反応も見ていました。
そうすると、「自社はやっていないが他社はやっていて効果を上げていそう」な事を発見する事ができるのです。
その事を持ち帰って、「XXX社はこんな事をやっているが、うちでも出来ないか」という相談をする事によって実現する方法を模索したりしていました。
その一つが名刺型の販促物だったりします。名刺サイズの販促物がある所で配られているのを見て、目立ち具合は劣るけど「持ち帰りやすさ」はある、と思い、WEB体験版のアピールになるのではないか、と考えました。
残念ながらはっきり効果があったかは分かりませんが、後に体験版のページのアンケートでこのカードを見て来た方がいたので多少なりの効果はあったことが分かりました。
(手元に残っていたので画像表裏です)
今ならQRコード等を使う手もありますね。
ある時、ゲームショップで体験版、といいつつPC用のCD-ROMが配られていて、なんだろう、と思ったら「逆転裁判(GBA)」の体験版CD-ROMでした。
(先にWEB版の体験版(FLASH)がある事を知らなかったのですが、多分それが遊べるCD-ROMだったのだと思います)
体験版、といえば普通、その製品と同じプラットフォームで作られるのが当たり前でしたから、この手があったか、と思いました。
後に、これをヒントに「もじぴったん」もWEBで体験版を作れないか、と考え、実際もじぴったんPS2 BESTの際にWEBで遊べるようにするのですが、それは逆転裁判の前例を知っていたからです。
(ご参考)逆転裁判シリーズ最新作「逆転検事2」ページ(体験版公開されてます)
(ご参考)「ことばのパズル もじぴったん」体験版ページ (対戦のおためしもあります!)
今、ある会社が店頭でやっている事を業界全体がマネして欲しいと思う事があるのですが、写真で説明出来るようにしてから紹介するつもりです。
多分お店の人なら分かるかも、ですね。
さて、まったく余談ですが、毎日.jp で作家の「宮部みゆき」さんが好きなものを紹介していたのですが、その中に「ことばのパズル もじぴったんDS」が!
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/news/20101128ddm015070006000c.html
なんだか涙でそうになりました…
宮部みゆきさんのファンなもので(笑)。ありがとうございます。
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この記事の所要時間: 約 2分56秒 Tweet 結構昔のエピソードですが、共有したいので書きますね。 GBA版のもじぴったんが発売された数ヶ月後に、たまたま、社内の女性数名と食事をする機会がありました。 バリューセレク […]
[続きを読む]結構昔のエピソードですが、共有したいので書きますね。
GBA版のもじぴったんが発売された数ヶ月後に、たまたま、社内の女性数名と食事をする機会がありました。
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話題が(僕がいたこともあって)もじぴったんの話題になりました。
その場にいた女性全員がGBA版のもじぴったんを持っていて、早速こうして欲しい、ここが不満、みたいな話になるわけです(まぁ、僕が開発者で特に当時はディレクター&プロデューサーでしたからありがちですね)。
全員一番不満を持っていたのが「沢山ある文字の下のほうを選ぶのが時間がかかる、面倒」という事でした。
正直僕は「あれ?」と思ったのです。
GBAの場合、L,Rボタンを押すといわゆる文字の「早送り(ページ送り)」が出来るようにしていました。
取扱説明書にももちろんその事は書いてあります。
だけど、その場にいた全員はその仕様を知りませんでした。
で、僕が教えて「こうするんですよ」と言ったら、全員驚いていました。
みんな、発売から時間がたって結構もじぴったんをやりこんだ後だったのにも関わらず。
他にも皆が口を揃えてクリアできない、といっていたタイム制限のきついステージは、実はその早送りを活用しないとクリアが難しいステージでした。
そのメンバーに聞いてみたら、全員、取扱説明書は一度も読んでいなかった事がわかりました。
その時は3人でしたので、後日、もじぴったんをやっている人を社内や社外で見つけたら、説明書を読んだか、という話を聞くようにしました。
結果、殆どの人が一度も読んでいませんでした。そして同様に製品では既に解決してあるはずの問題に皆不満を持っていました。
後に、PSP版では、チュートリアルプレイにその早送り操作が分かる仕様を別途入れました。
お客様は「購入したらすぐにでも遊びたい」という気持ちを持っており、多くの人は説明書を読まずにゲームを始める事が分かりました。
他のゲームでも読まない、という人が大半でした。多かったのは分からなくなったら、読む、というパターン。
特にもじぴったんのようなシンプルなゲームは、見なくても分かる、と思いこまれてしまう事が後に分かりました。
よって、不満に感じるであろう事を製品では実装して解決していて、説明書に書いてあるにも関わらず、お客様は分からないまま不満を残してしまう事があるのです。
作る側から言うと、手間的問題、コスト的問題、色々あって何かの問題がある事を解決する仕様や操作を「取扱説明書に書いてあるから大丈夫」としがちなのですが、それでは効果がないばかりか、せっかく知っていれば不満を感じない事を「できが悪い」とお客様は思い込んでしまいます。
お客様は説明書は読まない、という前提のモノ作りが僕は(実はゲームに限らず)必要だと思っています。
(ちなみに、単純にオンラインマニュアルにしても、見ないのは変わらないですよ。むしろ読みにくいので、見ない可能性があがるかもしれません(仮説))
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この記事の所要時間: 約 1分39秒 Tweet ゲーム開発者は、無意識に「お客様」=「プレイヤー」=「ユーザー」=「購入者」と考えがちです。 以前のエントリーでも言った通り、そうなるケースもありますが、基本的にはそれら […]
[続きを読む]ゲーム開発者は、無意識に「お客様」=「プレイヤー」=「ユーザー」=「購入者」と考えがちです。
以前のエントリーでも言った通り、そうなるケースもありますが、基本的にはそれらは違うものです。
過去エントリー:追求すべきは誰の満足?プレイヤー、ユーザー、それとも?
そしてもう一つ、ゲームの開発者は「ゲーム」を研究する事で満足しがちです。
確かに、他社が作ったゲーム、売れているゲーム、そういうモノを研究する事は大事かもしれません。
それらの良い所をうまく盗むという事で、商品を改良していく事は出来るでしょう。
しかし、僕はそれ以上にお客様、あえて言えば「お客様の生活」を研究する必要があると考えます。
- ゲームを遊ぶのはどんな時なのか、遊ばないのはどんな時なのか。
- どんな姿勢で遊んでいるのか。( 寝転がって?ソファに座って?立って?両手で?片手で?歩きながら? )
- どんな場所で遊んでいるのか。(自分の部屋?リビングで?電車の中で?待合室で? )
- ゲームが嫌い、と思っている人はどんな生活をしていて、どんな理由で嫌いなのか。
- ゲームの話題をするのはどんな時か。どんな話題か。
- 生活する上で、困っている事はないか。それをゲームで解決できないか。
残念ながら、今の世の中に出ているゲームの殆どは、お客様の生活に着目して作られたのではなく「ゲームを見て」作られたゲームだと僕は思います。
お客様の生活に着目しなければ、本当の意味でお客様が何を必要としているかを見失います。
それにより、客離れ、新しい顧客を得られない、という事に繋がります。
お客様の生活、という視点を持ってもらうために、少し皆様にも考えてもらいたい事例があります。
質問:TV番組の「仮面ライダー(シリーズ)」は誰のどんなニーズ(必要性)に応えているでしょうか。
明日、この事例についての中村の考えをブログのエントリーにしようと思います。
お楽しみに。
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