この記事の所要時間: 約 1分43秒 Tweet ナムコに入社して最初の頃に驚いた事の一つに「映画を見に行った時に映画代を経費で精算できる」という事でした。もちろん業務に関係あるかどうかによるのですが、気になった映画は何 […]
[続きを読む]ナムコに入社して最初の頃に驚いた事の一つに「映画を見に行った時に映画代を経費で精算できる」という事でした。もちろん業務に関係あるかどうかによるのですが、気になった映画は何度か会社の業務の一つとして見に行った事があります。上司の許可があれば業務時間中に見に行く事もできました。
(なんて変わった会社なんだ、とその時は思いました)
ある時、僕はどうしても見に行っておきたい映画があったので、見たい映画を上司に伝えて、許可をもらってその映画を見に行きました。
映画を見に行った経費精算をするのにその「半券」が必要で上司に精算用紙にハンコを押して貰うのですが、その時の上司が「後ろはちゃんと見た?」とハンコを押しながら僕に尋ねたのです。
正直何のことかわからずキョトンとしていると、「映画を見ている時、スクリーンだけじゃなくて、後ろを向いてお客さんの表情を見てみた?っていう事だよ」と言われたのです。
この時、僕は自分が足りなかった大事な視点に気づかされました。
文字通り、映画を見に行ったなら、「後ろを見る」必要があったのです。
その映画に来ているお客様がどんな人か(若いカップル、年配の人、女性のグループ、カップル、男性一人客…)、どんなシーンでどんな反応をしているか…
ゲームを作る人がよく陥りがちな事ですが、資料として他社が作ったゲーム等を評価する時にゲームそのもののほうにどうしても注目してしまいます。映像の作りとか、ゲームのルールがどうなっているか、とかそういう事が、開発者目線でいうと気になってしまうのです。
しかしながら、実は本当に大事で、じっくり観察をしなければいけないのは、それを遊んでいるお客様の反応なのではないかと思います。
プロとしてはどんなにすごい技術を使っていても、どんな手間がかかった事をしていても関係なく「お客様の反応が全て」という意識を持つべきだと思います。これはゲームや映画に限らず、エンタテインメント(おもてなし)を生業とする人全てに言える事ではないでしょうか。
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[続きを読む]ゲーム開発や商品企画をする人達は「売れている商品」が何かを調べようとして、結局POSデータから集計される週販売上TOP30を頼りにしてしまう傾向にあります。毎週の売上TOP30をずっと見ているから、売れ筋がなんだか把握している、と考えてしまいます。しかし、これは本当の意味で売れている商品を見落とす可能性が実は高いのです。
それは、「ランキングには殆ど載ってこないが、お店では実は売れている商品」というのがあり、実はそういう商品こそお店が必要で、利益に貢献する商品になっているからです。
以前にお店にとって「定番商品」がいかに大切か、という話をしました。
過去記事:定番商品の必要性
過去記事:定番商品になる条件とは
実は、定番商品といわれる商品の殆どは瞬発的に売れないかわりに、地味にずっと売れ続ける商品なので、発売から何ヶ月かたってもお店には新品で品揃えされていて売れたら、すぐに補充され、その商品もまた売れ、また補充、そういう売れ方をします。
このような商品は週に10本以上も新作が発売される状況で週だけの集計ではTOP30等のランキングには入っていませんが、地味にコンスタントに売れ続け結果的にトータルでは意外なほど売れている、という事が多いのです。
毎週TOP30の売れ行きを見ていて、ゲームの売れ筋を知っているつもりになっている開発者と、お店でランキングには入らない定番商品の売れ行きを知っている人の間では、「本当に売れているもの」の認識がものすごく違ったりするわけです。
また、ランキングで初週だけランクインするような短期間で量が売れる商品は同時に値崩れの可能性も高く、中古でも値段が低かったりするので、お店にとっては商材としてはあまり美味しいものではなかったりするのです。
僕のポリシーは「永く愛される商品を作る」事にあります。永く売れ続ける商品が結局はお客様のためにも小売店のためにもメーカーのためにもなるからです。
過去記事:永く愛されるゲームを作る
その視点からいえば、実は「ランキングには載ってこないけど、地味に売れ続ける商品」の発見と、それを誰が買っていて、何故売れ続けているのか、の分析が実は大切なのだと考えています。
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この記事の所要時間: 約 2分50秒 Tweet 今はPOSというシステムのおかげで、自分の席に座っていても商品の売上が簡単にわかります。例えばゲームであれば、発売日の翌日の夕方には全国の発売日当日の売上の速報が出ますし […]
[続きを読む]今はPOSというシステムのおかげで、自分の席に座っていても商品の売上が簡単にわかります。例えばゲームであれば、発売日の翌日の夕方には全国の発売日当日の売上の速報が出ますし、日曜日までの売上の集計は、翌水曜日に本数も含めたランキングの集計結果が出ます。
この便利なシステムのおかげで、これを見ていれば売れ行きがわかるし市場動向もわかるので、特に開発の人には実際にお店には足を運ぶ必要性をあまり感じていない人が多いのですが、現場を見ないととんでもない勘違いをしてしまう事になりかねません。
一つ実例を挙げましょう。これは僕がゲームズマーヤに実際に立っている時に起こった事です。
年末に発売されて、そこそこ期待されたあるタイトルAが、発売してみたらまったく売れず、という事がありました。
僕がレジの中に立っていたら、マーヤの店長に「中村さん、その足元にある箱の中に何本Aのソフトが残ってますか?」と聞かれました。ざっと50本。奥にはさらに同じ大きさの箱が見えます。「それ、全部で幾らになると思います?」一本仮に5000円だとして、25万円。奥にあるのを合わせれば50万円…
もちろん全部綺麗に売れれば現金になり、多少の儲けが出るでしょう。しかし、売れない限りは在庫。単なる邪魔なお荷物です。自分がこの商売をしていると思ったら、本当にゾッとします。
以前にもお話した通り、お店は現金商売ですから、在庫をなんとかして売って現金に変えなければ次の商品を仕入れる事もできません。
過去記事:厳しい新品ゲームソフトビジネス
結局そのタイトルは、僕がマーヤに足を運ぶ度に値段が下げられていきました。しかし、在庫はなかなか減らない様子でした。
ところが年明けた後に、会社で商品の週販集計結果のランキングを見ると、その売れずに困っていたタイトルAの売上が伸びていました。不思議に思いながらマーヤに足を運ぶと、そのタイトルAの値段は1500円(元の定価7000円位)となっていました。
そのタイトルAを手にとっていると、店長は「その値段にしたらようやく動き出しましたよ(売れ始めましたよ、という意味)」と教えてくれました。
その後、近所のゲームショップ、大手家電量販店等を見て回りましたが、軒並みマーヤと同じ位かそれ以下の値段で投げ売りされていました。年末商戦にまったく動かなかったので、どこも在庫を処分するために大幅に値下げして売っていたのです。
売上の集計では、本数しか出ませんから、捨て値で投げ売りされたのが売れても1本売れた、とカウントされます。
会社に戻って、値下げされている事を伏せて、まわりの数名に年明けに売上が伸びている理由を聞いたら、「高校生がお年玉をもらって年明けに買ったのではないか」とか「製品の中身がよいという口コミが広がり始めたので売れ出したのでは」といった事を言う人が多かったのです。
これは一例ですが、現場を見ないで、机の上で数字とデータだけ見ていればわかる、というのは大変危険な発想です。確かに、一部の現象だけを見て判断する事も危険ですが、現場を見ないで机の上でデータを見るだけで判断する事は本当の理由を掴めず、大きな判断ミスの原因にもつながりかねません。
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この記事の所要時間: 約 2分34秒 Tweet ブログを書き始めてから少し時間がたってしまいましたし、僕がこのブログを(それなりに力を入れて)書いている理由を少しお話させて頂ければと思います。 参考過去記事:中村が伝え […]
[続きを読む]ブログを書き始めてから少し時間がたってしまいましたし、僕がこのブログを(それなりに力を入れて)書いている理由を少しお話させて頂ければと思います。
参考過去記事:中村が伝えられる事
僕がナムコで働いてよかったと思う事の一つは色々経験させてもらえた事です。
よく、他社から来た人には「ありえない」と言われる事があったカルチャーの一つですがナムコは昔は「これがやりたい」と言えばやらせてもらえる(あるいはちゃんと聞いてもらえる)雰囲気がありました。
いや、もちろん期間や人数をかける場合には正当な理由が必要だし、そうでなくても、他の人には迷惑はかけない、みたいな暗黙のルールはあるわけですが、プロジェクトが一段落したあたりで、次が決まるまでは少なくともこれをやろう、おもしろそうだし、みたいなミニプロジェクト的なものは結構許されて変なものがいっぱい動いている時代がありました。皆が知っているもので、実際に製品化されヒットに繋がったモノもいくつもあります。
それに加えて、教育・研修的なものを受けるチャンスは沢山ありました。僕自身もいわゆるリーダー研修的なものを何度か受けましたし、マーケティングに関する研修も幾度となく受けました。
その上で、実際にプロジェクトのリーダーをやって、得た経験や知識が僕にはある訳です。
社内では、自分自身が研修を企画する事もありましたし、積極的に外部のセミナー等にもメンバーに参加してもらったり、僕自身が研修講師を行ってカリキュラム的なものを作ったり、テキストを作ったりしていました。
ずっと大きい会社にいると、それらの事が実に恵まれているという事に気がつかないかもしれません。僕自身も、外に出てみて非常に実感した事です。ゲーム業界の中小の会社では社内に研修講師がいるとか、研修、教育の機会や仕組みがある例は現実には殆どないように思います。
以前サイバーコネクト2の松山さんに呼ばれて社内講演を行いましたが、あんなふうに積極的に社内の人材育成に力をかける事は業界の中ではレアケースなのかもしれません。
現実、開発の現場では教育にかける時間を取る事は非常に難しく、また、仮に社内にそれなりの経験とノウハウを持つ人がいたとしても、その人が「教えるのがうまい」とは限らないという現実があります。
僕自身はプロジェクトのリーダーで実製品の開発に企画から開発、販売、宣伝に至るまで関わらせてもらえただけでなく、そのノウハウを社内で研修の形で伝えるという経験を数年にわたってしてきました。退職した今は、今僕が持っている知恵を広く伝える事で、現実的にはなかなか会社に入ってから教育・研修等を受けられないゲーム開発者、関係者、あるいはこれからゲーム業界を目指そうという学生の方の役に立てればと思っています。
ブログは、そんな僕のノウハウ・知恵の一部をご紹介する場です。
今週末 6/18(土)にツブヤ大学にて講義を持ちますが、これからも講演活動、執筆活動、その他で僕がお役に立てる事をしていきたいと思っています。
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この記事の所要時間: 約 2分31秒 Tweet ポケモンタイピングDSを例にあげて、まだ小さい子供がどうしてタイピングゲームを欲しがるのか、という考察を前回の記事でしました。 過去記事: 「おもちゃ」が満たす親の基本の […]
[続きを読む]ポケモンタイピングDSを例にあげて、まだ小さい子供がどうしてタイピングゲームを欲しがるのか、という考察を前回の記事でしました。
過去記事: 「おもちゃ」が満たす親の基本のニーズ
子供が誕生日プレゼントに欲しい、と言った時に妻も僕も速攻で「それね、もう買っちゃうからプレゼントは変更できないよ」と長男に言って、近所のお店で予約を受け付けているお店に行きました。
子供の誕生日やクリスマスのプレゼントは、子供が選んでいるようでいて、実は最終的には親が選んでいるという話をしましたが、まさに今回は親が選んだ、という感じでした。
過去記事: サンタのプレゼント、選ぶのは子供でない?
妻は「このゲームを遊んで、小学校二年でアルファベットが分かるようになって、ローマ字がわかるようになって、さらにキーボードが打てるようになるのはいい」と思う訳です。もちろん僕もそういう期待を持ちます。
任天堂がニクいのは、このキーボードをわざわざ Bluetooth キーボードにしているという事です(Bluetoothを内蔵したDSカードを特別に作ってまで!)。あの作りがよさそうなキーボードがiPhoneやiPadでも使える、と聞いた僕は「これは子供が飽きたらキーボードは自分のモノにしてしまおう(笑)」と思う訳です。
兄弟ではありがちな事ですが、次男も「お兄ちゃんがやるなら、僕もやりたい」と思う訳です。これの何がいいかというと、買った後、お兄ちゃんがあんまり遊ばなくなっても次男が遊ぶんじゃないかという期待と、(今はちょっと早いかもしれないけど)1年後とか2年後は次男が遊んでる事が想像できるから、長く使えるだろう、という期待もできます。
パパの事情は多少偏ってるかもしれませんけど、これからスマートフォンが普及していくと考えると、あながち偏ってるニーズという訳でもないかもしれません。とにかく、「家族全員」メリットがある、子供の誕生日プレゼントなんて滅多にありません。変な話ですが、我が家にとっては「買わない理由がない」商品です。
ポケモンタイピングDSは発売からずっと品薄状態が続いているのですが、おそらく年末のクリスマス時期にも人気のプレゼントになって、かなりロングセラーになるんじゃないかと個人的には思います。
買うつもりがない人も、Amazonのレビューは読んでおくとよいと思いますよ。
余談ですが、実はちょうどお店にポケモンタイピングDSを予約しにいった時、お母さんと一緒にそのショップに来ていた小学校中学年位の女の子が、ポケモンタイピングDSを前に「これって、ローマ字の勉強にもなるし、キーボードの勉強にもなるんだよね。欲しいなー。」と、なかなかおねだり上手な事を言ってました。
(僕も小さい頃、欲しいものを色々理由つけておねだりしてました…)
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この記事の所要時間: 約 2分25秒 Tweet うちの長男(小学校2年生)がもうすぐ誕生日な訳ですが、誕生日プレゼントは「ポケモンタイピングDS」に決まりました。 バトル&ゲット ポケモンタイピングDS po […]
[続きを読む]うちの長男(小学校2年生)がもうすぐ誕生日な訳ですが、誕生日プレゼントは「ポケモンタイピングDS」に決まりました。
以前、子供のクリスマスプレゼントは実は親が決めている、という話をしましたが、今回もまさにそんな感じです。
過去記事:サンタのプレゼント、選ぶのは子供でない?
正直言うと、この製品の発売を知った時、子供が欲しがるとはあまり思いませんでした。
しかし、子供の反応を見て、そうか、それは欲しがるな、なるほど、と思ったのです。
前職でバンダイナムコゲームスにいた僕は、バンダイの女児向け「おもちゃ」を開発している方にお話する機会があって、「おもちゃ」が満たす基本的な親のニーズについての話を聞いた事があります。
子供は本能的に「親がやっている事」を真似したがります。女児の「おままごと」を実際やっている所を見たりすると、いかに子供が親を観察してマネをしているか分かります。ほほえましいというか、この子の親はきっとこれが口癖なんだろうな…って所までわかったりしますね。
ところが、なんでも真似されると困る事が沢山ある訳です。例えば、お母さんが毎日包丁や火を使っている所を見て、実際にキッチンで火を使われたり、包丁を使われるのは危ないし、怖い訳です。
ですが、子供は料理のまねごとはしたい。そこで、おもちゃの包丁や火が出ないままごと用キッチン、そんな親が心配したり困ったりする事なく子供が真似して遊ぶ事ができる商品が「おもちゃ」として価値があるという訳です。
我が家では、僕は家にいる時はPCの前にいる事が多いです。妻もPCの前にいる事が多いです。PCって、子供に触られると親は困りますよね。キーボード適当に打たれて変なメール送られたりとか、大事なファイル消されたりとか….でも、子供はやっぱり真似したい、という気持ちを持っているのではないでしょうか。
次男(5歳)も最近ようやくひらがなとカタカナの読み書きが少しできるようになった位ですが、興味津々です。
すごく小さい子向けのパソコンみたいなオモチャは今まであったのですが、ちょうどポケモン世代の子供にとっては「今までなかった」のが人気になっている原因の一つのような気がします。
ポケモンタイピングDSのケーススタディは、もう少し別の切り口でやろうと思っています。
ちなみにポケモンタイピングDSはかなり品薄で、定価以上で売ってる事も多いのでご注意。うちはかなり前から予約して入手しました。
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[続きを読む]僕はいわゆるデパ地下、特に地方の物産展のようなものが好きで、見つけるとだいたい立ち寄って、グルグル回ったりします。
そういう物産展って、見たことない、聞いた事のない素材を使った食品なんかがあって、非常に興味深いです。食べ物、飲み物だと試食をさせてくれる所が殆どで、それも結構楽しみな訳です。
だいたい味が想像できるものもあれば、どんな味がするのか分からないものもあります。中には、試食してみたら想像と違ってあわない、とかお酒を飲む人にはいいんだろうけど、飲まないから買わないな、と思ったりします。というより、買うにまで至るのは実は少なかったりしますね。
さて、ここで考えてみて欲しいのは、ある好き嫌いがはっきりしてしまうような食品があったとして、試食をする事で「買わない」と思う人が多いのであれば、試食させないほうがよいと考えるべきなのかどうか、という事です。
結論からいうと、試食をして買わないと決めた人は、買わなかった事で満足ができるのです。言い方が変ですが、逆に言えば試食をしないで購入して、家に持ち帰って食べてみて、想像と違っていたら、そのお客様は不満になってしまうわけです。
参考過去記事:まったく同じゲームでも事前の期待で評価が変わる
デパ地下の食品を例を出しましたが、これはゲームでもまったく同じです。
もし、ゲームの体験版を遊んだ結果、「これは自分に合わないから買わない」と決める人が多かったとしても、そのほうが提供する側にとっても、お客様にとってもよいのです。結果的に、それ以外の人が本当に納得して、これは自分にとってよいものだ、と思って購入して頂いたほうが、商品を購入された方の満足が担保されるからです。
デパ地下の試食も、ゲームの体験版も、単に売上を上げるのが目的ではなく、「買ったら満足しないお客様には買って頂かない」ために必要なのだと僕は考えています。
参考過去記事:買ってはいけないお客さまに買わせてはいけない
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この記事の所要時間: 約 2分0秒 Tweet 僕がその存在を知ってから、不思議でしょうがなかった事の一つが、「プリキュアは何故戦うのか」という事でした。 男の子向けのヒーローものが戦う理由は疑いようもなく分かります。自 […]
[続きを読む]僕がその存在を知ってから、不思議でしょうがなかった事の一つが、「プリキュアは何故戦うのか」という事でした。
男の子向けのヒーローものが戦う理由は疑いようもなく分かります。自分も子供の頃に仮面ライダーごっことか、ウルトラマンごっこをやっていましたし、小さい子供は本能的にああいう戦いモノが好きなのは分かるのです。
だけど、明らかに女の子向けの番組の「プリキュア」に「戦う」要素が入っている事に不思議な感じを受けていました。女の子やお母さんにしてみたら、それは余計な要素なのではないか、と思った訳です。
はじめは、「変身」するための必然性を持たせるため、「戦い」なのだと思っていました。女の子はちょっと大人に変身する、という事にはあこがれますし、変身するための「道具」がオモチャとして人気がある所を見ると、それも確かに、とは思っていたのですが、それでも「?」がついていたのです。
以前、TV番組の仮面ライダーが満たすニーズとは何か、というお話をしました。
過去記事:TV番組の仮面ライダーシリーズが応えているニーズは?
あくまで「仮説」に過ぎず、プリキュアを作っている人に聞いた訳でもありませんが、もしかしたら、「兄弟」の存在がその答えかもしれないと思っています。
日曜日の朝、7:30からスーパーヒーロータイムが始まります。戦隊モノ、仮面ライダーときて、その次がプリキュアな訳です。
女の子の兄弟が女の子とは限らないですから、男の子の兄弟にとって、プリキュアがまったく興味のないものになってしまうより、男の子もスーパーヒーロータイムに引き続きTVを見ていてくれたほうが日曜日の朝、親はゆっくり出来るわけです。
プリキュアが「戦う」のは男の子の「兄弟」のためで、結局日曜日の朝ゆっくりしたいという親のニーズに応えているから、ずっと「戦い続けている」のではないかと「仮説」ですが思っているわけです。
なんだか、中村さんは変な考察をしているなぁ(笑)と思うかもしれませんね。
でも、家のテレビを使うゲームも同じ発想で、仮に女の子向けのゲームを作るのなら兄弟も女の子とは限らず、男の子かもしれない、と考えたり、逆に男の子向けのゲームを作るのでも、姉妹がいる、その子が退屈しないように考えるべきでは、と思うのです。
そういう所まで気がつくかどうかが「おもてなし」になるかならないか、という所の差になると僕は考えています。
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この記事の所要時間: 約 2分25秒 Tweet PS2版もじぴったんの発売後、パッケージに問題があり、本来は大人、特に大人の女性が楽しめる商品だったのに、それがうまく伝わっていなかった事がわかりました。 過去記事:もじ […]
[続きを読む]PS2版もじぴったんの発売後、パッケージに問題があり、本来は大人、特に大人の女性が楽しめる商品だったのに、それがうまく伝わっていなかった事がわかりました。
過去記事:もじぴったんPS2でのパッケージの失敗
逆に言えば、そこの伝え方をうまくすれば、まだ「もじぴったん」を買って頂けると考えていました。
過去記事:失敗の中から機会を発見する姿勢
そんな時にベスト版(廉価版)の発売の話が舞い込みます。
ほんとにこの時には色々あったのですが、今回は特にパッケージデザインの話をします。
通常、ベスト版発売時には最初に発売されたオリジナル版からデザインや表記の中身を変更する事は基本的にありませんでした。ベスト版にする時には共通のフォーマットがあって、それにあわせて修正を加えるだけ、なのが普通でした。
しかし、パッケージの問題点がはっきり分かっていた事もあり、絶対に修正が必要だと思った僕は、関係各所にかけあって、デザインには大幅に手を入れました。
ベスト版のパッケージデザインを変更しない理由は、もちろんあるのです。
過去記事: 会社の常識を疑い、うまく破る方法
ベスト版で大幅にデザインを変えて、もし過去にオリジナル版を購入したお客様が「新作」だと思って購入してしまうと、クレームになってしまうのです。ですから、変更をかけない、フォーマットで廉価版である事がはっきりわかるようにする、事が必要だった訳です。
ですから、そういう誤解を与えない範囲で、修正をする必要がありました。
ものを見て貰うのが早いので、修正後(裏面)と修正前(裏面)を見てもらおうかと思います。
以下が修正後(裏面)です。
以下が修正前(裏面)です。
修正した際に、一番気をつけたのは「子供っぽい(幼児向け)ではなく大人でも楽しめそう」という事です。ですから、以前は意図的に「ひらがな」を多用していましたが、逆にベスト版のパッケージでは「漢字」を意識して使っています。
その他、その後の調査で分かった「何を訴えれば大人の女性が魅力に感じるか」を「優先づけて」「きっちり」説明するように改良しています。
少なくとも社内では前例がなかった事だったので、関係各所への根回しは大変でしたが、幸い、パッケージに問題があった事の問題共有が関係者で出来ていたこともあり実現できました。当時の関係者には頭が下がる思いです。
ゲームを制作している人に一番伝えたい事は、「中身はまったく変わらないもの」なのに「パッケージの工夫」が売れ行きを変える(誰が購入するかが変わる)し、「購入した人の満足も変える」という事です。
今のパッケージゲームの殆どは、中身には力を入れているのにパッケージからはまったく魅力が伝わらないというケースが殆どの気がします。それではどんなに苦労した事も水の泡になってしまう可能性が高くなるのではないでしょうか。
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この記事の所要時間: 約 2分16秒 Tweet 私は失望などしない。なぜなら、どんな失敗でも次への前進の新たな一歩となるからだ。 [トーマス・エジソン(1847〜1931)] 前回の記事で、「ことばのパズル もじぴった […]
[続きを読む]私は失望などしない。なぜなら、どんな失敗でも次への前進の新たな一歩となるからだ。
[トーマス・エジソン(1847〜1931)]
前回の記事で、「ことばのパズル もじぴったん」PS2版のパッケージがうまく出来ていなかったため、お客さまに伝わらず思い通りにならなかった事をお伝えしました。
過去記事:もぴったんPS2でのパッケージの失敗
もじぴったんの最初の家庭用商品(PS2版,GBA版)発売時に最初に想定していた購入者はゲームセンターでもじぴったんを遊んでいたお客様、でした。当時のゲームセンターの小型ビデオゲーム機が置いてあるコーナーにはほぼ男性しかいないような状態でしたから、そのお客様が最初に購入するだろう、と思っていた訳です。
確かに「もじぴったん」PS2版の初期購入者の半数程度は、アーケード版の体験者でした。
しかし、残り半分のお客様は、逆にいえばアーケード版をやった事がないか、まったく知らない人だった訳です。
具体的には、「子供の言葉の勉強にちょうどいいかも」と思ったお母さんが購入しているケースが少なからずあったのです。
お母さん達にとっては「子供が遊ぶ(子供に遊ばせる)」という部分については(少し難しくて)期待通りではなかったのだったのだけど、子供のプレイを横から見ているうちに自分でやりたくなって結果はまってしまった、という事が起こっていました。
PS2版のもじぴったんの発売前から、社内では、PS2のソフト=男性向けという常識がありました。ですから、大人の女性に受けていた、という事実は想定していませんでしたが、女性の満足度が非常に高かった事は、今後の一手に繋がるのではないか、と当時の僕は考えていました。
パッケージが中身をうまく表してなかった事が、結果的にお客様にうまく内容が伝わらず、買って頂くに至らなかっただけでなく、購入されたお客様の期待とずれてしまった訳ですが、結果的に起きた事をよく理解した事で、「もじぴったん」が当初想定していなかった方々に他のゲーム商品にない魅力を与えていた、という新たなチャンスを見いだしたのです。
ゲーム業界では特に、ぱっと出して売れなかったら「ハイ、オシマイ」となりがちです。
「もじぴったん」も、PS2/GBA版発売の後「たいして売れなかった」と諦めていたら、そこで終わっていた気がします。
仮に思い通りの結果が得られなくても、そのうまくいかなかった結果の中に次の一手になるチャンスがないか、と考える姿勢はプロデューサーとして必要なのではないかと思います。
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[続きを読む]僕が担当した初めての家庭用ゲームが「ことばのパズル もじぴったん」のPS2版とGBA版でした。
以前にもお話した通り、家庭用ゲームのパッケージについては色々と疑問を持っていた事もあり、それなりに工夫はしたつもりでいました。
しかし、それらが、思っていたようにはなっていなかった事が、発売後に調査をする過程でわかります。
その一部となりますが、何が「まずかった」のかのお話をしようと思います。
表面の帯の話は過去にしたので、裏面のお話をしようかと思います。
過去記事: 自分の業界以外のアイデアを盗む
まずは実際のもじぴったんPS2版(オリジナル)のパッケージ裏面をご覧下さい。
僕らが「もじぴったん」を世の中に出す上で、最初に問題があると思っていたのは「遊ぶ前から難しすぎる」ように思われてしまうのではないかという懸念でした。
ですから、とにかく難しく見えなさそうにするという意図がパッケージのあちらこちらに反映されています。最初に訴える事が「かんたん」とか、「ひらがな」を多用する、等….
発売後、パズル好きでPS2を所有していて、「もじぴったん」を認知していない大人の方々に、このパッケージを見て頂く調査をしたところ、ほぼ全員一致で次のような事を「即座に」言いました。
「子供向け(というより幼児向け)ソフトで、すごく簡単すぎてつまらなさそう」
客観的に見れば、すぐに分かる気がします。
が、ここが罠なのですが、こういうパッケージ等を作っている人達は客観的になかなかなれないので、実際の内容と、パッケージから受ける印象と大きく乖離してしまう事があるのです。
実は、ちょうど「もじぴったん」の発売時期がCEROのレーティングの開始時期で、もじぴったんのパッケージの表面には「CERO全年齢」と書かれていました。
この事も相まって、購入者のアンケートの中には「全年齢と書いてあったのに、うちの子供では難しすぎて遊べなかった」という不満があったりしたのです。
(おもちゃ等の年齢表示は、何歳位から遊べるか、という表記になっている事が殆どなので、誤解を受けてもしょうがないですね。ちなみに今のCEROの表記は「全年齢」ではなくなっています)
お客さまへの配慮のつもりで、他のゲームと違って難しくないから簡単に遊べますよ、と言ったつもりが、本来なら購入すれば満足だった人には「自分達向けではない」と思われ、本来満足する人とは違う人が買ってしまい「不満に感じる」という事が起きてしまった、事例の一つです。
もじぴったんPS2(オリジナル)は、「子供のために買ったつもりがお母さんがはまってしまった」という事がお客さまの満足度を結果的には支えた形になった事がラッキーではありました。
その後 BEST版が発売される事になり、パッケージを改良するチャンスがありました。この話はまた次回に。
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[続きを読む]商売をしていく上で、特に売上の責任を負う立場(プロデューサー、経営者だけでなく営業の人等)になれば、もちろん担当している商品が沢山売れるほうがよい、と考えるのが普通です。
しかし、その商品を買ったら明らかに「不満になる」人にも「買ったほうがいいよ」とお勧めする事は、やってはいけない事です。
しかし悪い事に、商品を提供する側は意図的でなくても、半ば「無意識」に「買ったら不満になる人にまで勧めてしまう」事をやってしまっています。
(具体的なタイトル名は挙げませんが)、例えば、ゲームの内容は操作も複雑で反射神経も求められるゲームなのだけれど、それじゃ売れないから、と自社で売れているブランドとキャラクターを乗せて売る、みたいな事をする訳です。その乗っけた「ブランド」が、やはり操作が複雑で反射神経が求められている事が受けている要因(満足点)のブランドならいいのですが、真逆でむしろ複雑な操作や反射神経を要求しない事が、特に女性に受けているブランドだったりする訳です。
確かに、有名なブランドを乗っける事は小売店の初回受注や初期の売れ行きにはプラスに働くかもしれませんが、結果的に、それにつられて買ったお客さまが(例えば操作が難しすぎるというような基本的なレベルで)不満になり、中古に溢れ、小売店は値崩れに苦しむというケースは、見ている限りこの業界では珍しくありません。
これは一つの例ですが、売る側が「できるだけ多くの数を売りたい」と考える事が結果的にブランドを傷つけ、長期的に見ると売上を落としてしまうのです。
プロデューサーの役割の一つは「商品を売る事」ですが、「売りつける事」ではありません。
本当に満足する人、そんな商品を待っていたんだ、という方に「届けて」「満足してもらう」事が目的なのだと僕は思います。
ですから、「買ってはいけない」お客さまにはちゃんとそれを伝える配慮が必要だと思います。しかも、悪意を持って意識的にやらなくても、結果的にそうなってしまう事が多々ある事を十分認識すべきです。
実はPS2版の「もじぴったん」では僕自身がこれをやってしまったのですが、この話はまた今度に。
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この記事の所要時間: 約 1分27秒 Tweet 個人的には「業界」という言葉を使うのには注意をする必要があると思っています。 「XX業界」という言葉を使う時、人は無意識に「業界の外」「業界の内」を区別してしまっています […]
[続きを読む]個人的には「業界」という言葉を使うのには注意をする必要があると思っています。
「XX業界」という言葉を使う時、人は無意識に「業界の外」「業界の内」を区別してしまっています。
「区別」した結果、多くの場合「内」しか見ない(外は無視する)、という事をするのです。
「業界」を区別しないと、確かに考慮しなければいけない事が多くなって困る事も確かにあります。
(リアルに言うと業界団体を作ってルールを決めよう、と思った時、どこまで声をかけるのか等)
しかし、どちらかというと業界を区別するのは「売る側」「作る側」の理由になっているのではないでしょうか。
この事が消費者の視点では「この商品はこうなってるのが普通なのに、こちらの商品は何故皆不便なんだろう」という不都合に繋がっている事が多くあるのではないかと僕自身は思っています。
以前にゲームのパッケージの表に「帯」をつけるというアイデアを「もじぴったん」でやった話は「書籍業界の常識」をゲームに応用した例です。
過去記事:自分の業界以外のアイデアを盗む
会社に入って、段々その業界に慣れてくると、知らない間に「業界メガネ」をかけてしまい、その業界の外に転がっている宝石(チャンス)に気づかなくなるものです。
僕自身が最近、学ぶべき事が多いと思うのは「食」に関する業界です。
「書籍」も「食」も「ゲーム業界」からは遠いような気がしますが、「業界メガネ」を外してみるとその歴史が古い業界には実は宝石がゴロゴロしているのが見えてくると思います。
これからも、一見ゲームとは関係なさそうに見える業界の工夫で、実は役立つ事を紹介していければと思っています。
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[続きを読む]不思議な事に、このゲーム業界においては、失敗事例には事欠かないはずなのに、同じ失敗がずっと繰り返されているように思います。
業界内、でもそうですが、同じ社内でも、あちらのプロジェクトでやった失敗と同じ事が他のプロジェクトでも起こってしまう(原因は一緒)、という事は珍しくありません。
何故、そのような事が起こるのでしょうか。
失敗の事例がクローズアップされないのは、この業界だと10本のうち1本でもヒットを出せば(商売上)全体的には回ってしまう、という事も事情としてある可能性はあります。
(最近はそんな打率にはならないので、苦しんでいる所は苦しんでいますね)
それに人間は、自分が失敗したとしても、なかなかそれを認めたくない、という心理を持っているものです。
素直に失敗を認められる人はなかなかいません。
同時に、本人がそれが何故失敗したかを理解していたとしても、自分が犯した失敗については多くは語りたがらないものです。
結局の所、失敗した事とその理由は、深く分析される事もあまりなく、結果的に同じ失敗が繰り返されている、というのが今の状態かもしれません。
では、どうしたらよいのでしょうか。
あくまで持論ですが、失敗の事例は「他人様」から学ぶ事にする、のがよいのではないかと思っています。
自ら、あるいは自分の組織の失敗の原因を追及するのは、精神的にも辛い作業になり、無理な理由、言い訳を生み出しやすく、間違った答えを引き出しかねないのです。
「他山の石」という言葉があるように、客観的に見る事が出来る同業他社の事例(失敗例、そして成功例)を十分に研究する事で、何が失敗の原因だったのか、我々はどうすべきなのかを学び取る事ができるのではないかと、これまでの自分自身の経験上からも思います。
もちろん、自らの失敗から学ぶ事も重要です。
しかし、それが心理的に難しいのであれば、あえて「他山の石」に学ぶ事(事例研究)する事は悪い手段ではない、と考えています。
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[続きを読む]「もじぴったん」シリーズの転機となったのは、PlayStation 2のベスト版 ( 廉価版 )発売でした。
そのベスト版発売に合わせて、WEBで遊べる体験版(無料おためし版)の提供を開始した事が、「ことばのパズル もじぴったん」シリーズがその後定番的に売れる一つの要因になっています。
さて、このWEB体験版には「音ありバージョン」「音なしバージョン」の二つが提供されています。
「遊んだときの楽しさ」だけを考えるなら音があったほうが楽しいし、もじぴったん自体の音楽の魅力等も伝えられます。
しかし、「音なしバージョン」も必須、と考えてお客さまに選択してもらえるようにしています。
理由は「音が出ると困る環境で遊ぶ人が多くいるから」でした。
お仕事中のオフィスだけじゃなく、赤ちゃんが寝ている間にパソコンで遊んでくれるお母さんとか、音があるのは遊ぶお客さまの生活上の問題になる可能性があったからです。
「そんなの使う人が音を消してやればいいじゃん」と思うかもしれません。
しかし、お客さまはPCの音量が今どれくらいか、を気にして使っているとは限りません。
お試し版もじぴったんを始めたら、突然音がなって、仕事中に遊んでいる事がまわりに知れたり、赤ちゃんが起きてしまってはダメだろう、と考えた訳です。
バージョンを分けているのは同時に「音なしバージョン」だとロード時間が少なくてすむからという理由もあります。
当時、まだ回線はISDN,遅いADSL等も普通でしたから、そういう配慮も必要だと考えたのです(ですのでダウンロードサイズが書いてあります)。
実は、その「もじぴったん」のWEB体験版を制作した中野亘(ワラテルさん)が提供している毎日更新の「1日5秒のゲーム日めくり きょうのしかく」にも「音」はありません。
でも、中野さんも、その時の経験から「遊ぶお客さまの環境」に配慮して、あえて「音なし」で提供しているのだそうです。
ゲームを作る側の人は、自分達が作ったものが一番いい環境で遊んでもらえる事を前提にゲームを作ってしまう事があります。
例えば、素晴らしい音響設備、大画面…確かにそんな環境で遊べばゲームをよりよく楽しめるかもしれません。しかし、現実には携帯ゲーム機なら電車の中では音を消して遊んでいる人も多いし、大画面、素晴らしい音響環境で遊んでいる人はむしろ少数なのです。
そういう、現実的なお客さまの遊ぶ生活環境も考慮してゲームを作るという事は、「おもてなし(=Entertainment)」の第一歩目であるのです。
ちなみに、ご紹介した「きょうのしかく」ですが、毎日よくこんなに違うアイデアを考えつくな…と本当に思います。ああ、出てきた!おお。みたいな感じがなんとも、です。お勧め。
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[続きを読む]以前「小売店は『発売前』にコーナー展開を決める」という記事を書きました。
過去記事:小売店は『発売前に』コーナー展開を決める
これは言い換えれば、「小売店は発売前に既に、どのゲームソフトがどれだけ売れるかを判断している」という事です。
ゲームズマーヤで働かせて頂いていた時に、秋谷店長に「どのゲームソフトが売れる、と何故発売前にわかるのですか?」という質問をしてみたところ、
「買うお客さまの顔が思い浮かぶかどうか、ですね」
と即答されました。
秋谷店長のすごい所は、以前にもお話したと思うのですが、本当にお店に来るお客さまの事をよく覚えている事です。
過去記事:僕がゲームショップで働こうと思った訳
なので、あるタイトルが発売される、と聞いた時に「ああ、XXさんと△△さん、□□さんは確実に買うし、○○さんと●●君には次に来店された時にお知らせして予約をお勧めしよう」というのが「具体的に」思い浮かぶのだそうです。
逆に、売れない、と思うのは、誰が買うのか想像できない商品なんだともおっしゃっていました。
実は、その「買う人の顔が思い浮かぶ」言葉を聞いたのは初めてではありませんでした。
あるヒット商品を何本も生み出しているプロデューサーの方が、沢山ある企画のうち、どれを進めるかを決めるかを決める決め手になるのは、
「買うお客さまの顔が思い浮かぶかどうか」
だと話してくれた事があったのです。
その方は同時に売れていく商品は「買った後に、どんなシーンで、どんなふうに遊ぶのかも想像ができる」と言っていました。
プロデューサーとして何年も働いてきて、「お客さまの顔が思い浮かぶ」という事の意味は今ははっきり分かります。
今、(ゲームソフトに限らず)企画書を作っているのであれば、「お客さまの顔がはっきりと思い浮かぶか」を一度よく考えてみるといいと思います。もし、はっきり思い浮かばなかったら何かが間違ってると考えてよいのです。
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[続きを読む]パッケージで売られている家庭用ゲームソフトを開発している人が、果たしてこのブログでこれまで述べてきたような流通や小売店のニーズまで知る必要があるのか、という事を疑問に思う現役のゲーム開発者の方もいるかもしれません。
実際のところ、ゲーム開発で企画職、ゲームデザイナーという職で働いていつつも、このブログで取り上げるような小売店や流通の事情、背景について殆ど知らない人は多いと思います。
僕自身も、かつてはそうだった訳です。
おそらくゲーム開発を行う会社や部署で働いていても、会社が積極的にそのような事を教えてくれたり、学ばせる事を積極的にはしていない、というのが現状ではないでしょうか。もちろん、一部の組織では重要視している所もあるでしょうが、多くのゲーム開発をする人達には、それよりも時が経つにつれて高度化する技術についていく事を重視する、という事が現場の実態ではないかと思っています。
しかしながら、あえて自分の経験から言えば、「上流」であるゲーム開発者だからこそ、小売店のニーズを知る必要があるのです。
小売店のニーズの背景の殆どは「お客さま(消費者)」の事情・背景・ニーズに由来しています。
お店の方は直接「お客さま」の顔を見て商売をしているからこそ、お客様のニーズと商品との「ズレ」を感じ、「上流」であるゲーム開発に「不満」を覚える訳です。
ゲームを開発する人だって、ちゃんとお客さまに喜んで買って頂いて作ったゲームを楽しんでもらいたいのなら、そこを抑えておかないと、買ってももらえず、苦労してゲームを開発した意味がなかったという事になりかねないのです。
『それはプロデューサーとか売る人の仕事で俺らの仕事じゃない』と思う人もプロとして本当にお客様に楽しんでもらえる商品を作りたいのなら、そこも頭の片隅には入れて仕事をするべきだと中村は思っています。
ゲーム業界の流通事情について書かれた本は、知る限りあまりありませんが、「デジタルゲームの教科書」には、家庭用ゲームソフトだけでなく、広くデジタルゲーム業界の仕組みについて書かれています。
厚めの書籍なので、一人一冊、とはいいませんが、いつでも見られるように、組織で1冊位はあって、自分がいる業界の仕組み(流通、利益構造やその歴史的な背景)などはこの業界に関わるならば一通り読んで知っておいて損はないと思います。
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iPad向けの電子書籍としても発売されています。
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[続きを読む]「消費者は2度評価する」という言葉は以前にも紹介した、師匠のマーケティングコンセプトハウスの梅澤先生の言葉です。
過去記事: ヒット商品を生み出すための手法、あります。
ナムコ時代、プロデューサー制が始まった後でマーケティングの研修が始まりました。
最初は「日用品のマーケティングの手法がゲームに使えるのか」と半信半疑だったのですが、「消費者は2度評価する」という話は、考えてみれば極々当たり前の事ですが、まさに目から鱗でした。これがきっかけとなって真剣に勉強して、当時の「もじぴったん」プロジェクトでも実践を始めたのです。
2度評価するとは、すなわち「買う前」と「買った後」に評価するという事です。
お客さまは「買う前」に広告やパッケージ等で商品を「評価」して、買うかどうか判断します。買うだけの「期待」があれば購入という行動を取ります。
そして、「買った後」に実際にその商品を使って、そこで買う前の「期待」が満たされているかを「評価」するのです。買った後に使ってみて期待通りであれば「満足」ですし、「期待外れ」であれば「不満」となります。
大事な事は、「商品を買った後にしか分からない良さは、買って頂かない限りはお客さまには伝わらない」という事です。
パッケージのゲームでいえば「遊んだらものすごく面白い、楽しいゲームだったとしても、『買う前に』それが伝わらなければ購入されない」のです。
僕が「目から鱗」だったのは、まさに「もじぴったん」という商品が「遊べば面白いが、触った事もない人に「買う前に」この商品がどうよいのか、買う価値があるのか」が伝えにくい商品だという事が売れない大きな要因だと気づいたからです。
特に何千円も出さないと手に入らないパッケージゲームソフトは、「事前に商品の価値が十分理解されない限り購入されない」のです。その中身がいかによく出来ていて遊んだらものすごく面白いゲームだろうと、です。
「このゲーム、すっげー面白いのになんで売れないんだろ?」と思う事があるかもしれませんが、この「消費者は2度評価する」事を理解すればその一因がわかるかもしれません。
以前にも紹介した梅澤先生の「ヒット商品開発」中にはC/Pバランス理論としてこの事が詳しく書かれていますので、読めばより理解できるのではないかと思います。
梅澤先生の3大理論(C/Pバランス理論)の概要はマーケティングコンセプトハウスのホームページにもあります。
C/Pバランス理論をはじめ、消費者心理の話は下記の書籍のほうが図が多くより分かりやすいかもしれないです。
同文館出版
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[続きを読む]ゲームの売り文句の話は、以前に紹介した平林さんの記事にありましたので、そちらも見て頂きたいと思うのですが、「スゴイのかもしれないけど、意味がわからない」「難しい表現でカッコいいって感じてるのこれ書いてる人だけじゃない?」「で、結局このゲームは何ゲーなの?」みたいになりがちです。
過去記事:紹介:ゲームの文章術(GameBusiness.jp)
ひとまず、知らない人が読んで「理解できる」「少なくともどんなゲームか想像できる」ようにパッケージの裏面の説明などが書いてある例は、パッケージゲームでは実は珍しいのではないかと思います。
そういうコピーをつけてしまうと、せっかく新しい魅力的なゲームを作ったとしてもお客さまに伝わらず購入してもらえない事になってしまいます。
過去記事:お客様は理解できないものは買わない
これが(表現のツメが)「甘い」言葉です。
具体的に、実は僕自身も失敗した事で、これだけは言える事があります。
今までにない、新しいゲームを作ろうとして、いざ売るという段階になった時、その商品に
- 新感覚アクションゲーム!
- 新感覚RPG。
みたいなコピーをつけてしまいがちなのですが、あえて自分の経験から言うと「新感覚」という言葉はゲームなどの商品において使ってはいけない「NGワード」なのです。
実は、もじぴったんの最初の家庭用商品であるPS2版、GBA版は、まさに「新感覚パズルゲーム」と謳ってしまっていました。
ですので「新感覚!」と言いたくなる側の気持ちはよくわかります。
何故なら、面白さとか楽しさという感覚は言葉では多くの場合うまく伝えにくいからです。
今までにない楽しさとか面白さを持つ商品ができた、でもうまく表現できず、「新感覚」という言葉を使ってしまいがちなのです。
もじぴったんも、面白い、今までにない感覚の面白さがあるパズルゲームである事は間違いなかったのですが、どう伝えていいかわからず、結局「新感覚パズルゲーム」という表現を使ってしまいました。
しかし、言葉では魅力が伝わりにくいからこそ、お客様にとっては曖昧でなにがいいのか、新しいのかわかりにくい「新感覚」という言葉は使わず、「具体的にどういう気持ちいい快の感覚であるのか」「その商品の他にはない感覚的なよさを具体的に言葉にするとどういうことか」を考えてキャッチコピーを考えて、お客さまに具体的にどうよいのかをイメージしてもらう必要があるのです。
もじぴったんの場合、後の調査で商品を認知していないお客様にPS2版の最初のパッケージを見ていただいた時にこの事がハッキリわかったので、その後のベスト版発売時には「知的好奇心くすぐり系パズルゲーム」(後に「知的好奇心くすぐるパズルゲーム)という表現に改めています。
もし、ゲームショップの店頭によく行く人なら、色んなパッケージの裏面を手にとって見てください。「新感覚XXXXゲーム!」と謳ってるゲームは驚くほど沢山あるのが現状です。
もし、パッケージの売り文句やキャッチコピーを考える立場にある人なら、新感覚という言葉を使いそうになったら、ちょっと待てよ、と思って欲しいと思います。
この詳しい理由についてはまた別の記事でお伝えしようかと思います。
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[続きを読む]あるビアホールに行った時の事です。
遅れてその飲み会に参加した僕は「食べ物も何か頼みなよ」と言われました。
沢山あるメニューの中で僕は「6種のソーセージ盛り合わせ」を頼んだのです。
しばらくしてソーセージが運ばれてきて、そのうちの1本の一部を食べた訳ですが….
「辛い!」
僕が最初に食べたソーセージは、いわゆる「唐辛子系」の辛さ。辛いのは嫌いではないのですが、辛いとは思わなかったので、思わず顔がゆがんでしまいました。
最初はたまたま、かと思いましたが、その後全種類を一口づつ食べた所、「全部」こしょう系か、唐辛子系のスパイスがかなり利いているソーセージでした。
なんとなく騙された感じでしたが、同時にこうも思いました。
「もしメニューに『ビールによくあうピリ辛ソーセージ6種盛り合わせ』と書いてあったら、まったく同じソーセージを出されても多分、美味しいね、と食べたし満足しただろうな」と。
食べ物の話で、ゲームと何の関係があるんだ、と思うかもしれません。
しかし、ゲームでもまったく同じ事が言えます。
このソーセージの話をゲーム商品に置き換えてみるとどうなるのでしょうか。
つまり中身がまったく同じゲームでも、買う前の期待がどうだったかによってゲームを遊んだ後の評価が変わる、という事です。
タイトルやパッケージの説明、広告等で「買う前」に期待した事と、「買った後」にゲームを遊んで、期待とは違った場合と期待通りだった場合では、それがまったく同じゲームで、まったく同じお客さまが評価しても「不満足」と「満足」の差になるのです。
ゲーム慣れしている人がちょっと難しく感じる位のゲームを「このゲームはちょっと難しいよ」と言って売れば、買った人もそれを期待して買う訳で、期待に応えられていればお客さまも満足します。
しかし、まったく同じゲームを「誰でも遊べる」と言って売ったり、あるいは「ちょっと難しい」事をタイトルやパッケージ等からは印象としても伝えずに売れば、購入した多くのお客さまは、期待と異なるので「このゲームは難しすぎる」と不満に感じることになるでしょう。
ここで大事なのは、ゲームの中身がどうこう、面白さがどうこうと議論する時は、「どんなお客さまに、なんと言ってこのゲームの魅力、面白さを買う前に(あるいは遊ぶ前に)伝えるのか」という事と「セットで」議論しなければ意味がないという事です。
ゲームデザイナー、と呼ばれる職種の人達が陥りやすいのは、この「事前にどんなお客さまにどんな期待をして購入してもらうのか」を抜きにして、ゲームの面白さや難易度などを議論してしまう事です。
商品としての評価は、仮に中身がまったく同じものでも「買う前のお客さまの期待」によって大きく変わる、という事は、ソーセージの例を挙げるまでもなく商品サービスに言える事ですから、プロを自覚するのであれば、その事は覚えておく必要があります。
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